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第五百十七話

 古い毛皮のコートをなでる妻。

「このコート汚れてきたわ」

「そんなの洗えるの?」

「調べたら買うくらいかかるの」

「それって結婚前だったな」

「初めてのボーナスで買ったの。まだ二十三歳だったわ」

「そうか」

「あれから、毛皮のコートなんて買ったことないわ」

 ん?

 話が変な方向に行きそうだぞ。

「もっといいものが買えるようになると思っていたわ、あの頃は。バッグもコートも」

 やばい。


 ピンポーン。

 

 こんな日は宅配便がうれしい。

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