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第四百九十七話

 妻が夜中にこっそり起きている。

 この頃は毎日。

 別に気にしていない。

 ただ、ちょっとだけ気になる。

 電話でもしてるのか。

 小さな声が聞こえてくる。

 相手は誰だ。

 今日も起きて階下へ。

 階段からそっと聞き耳を立てる。

「わ、それはないでしょ」

 どうした、相手が何か無理難題を言ってるのか。

「やだ、そこはダメって」

 一体どこだ。

「あと一回だけよ」

 何が一回だ。

「あああああ、もうダメ」

 相手は誰なんだ。


 妻は錦織のテニスを見ていた。

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