二百文字小説「煩悩の人」

第四百十六話

　このくらい簡単よ。

　テレビを見ながら横になって右の足首を握る。

　体は一直線のまま。

　ほら、できた。

　次は左の足首。

「うっ」

　腰が……足もつった。

「ただいま」

「おかえりなさい」

「ヨガでもやってるの？」

「腰痛にならないようにするには太ももの前の筋肉を柔らかくするんだって」

「でも、なんで泣いてるの？」

「足首持ったら腰と足がつった」

「体が硬いのにそんなことするからだよ。何のための体操やってるんだか」

「湿布貼って～」