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第三百五十話

 家内が静かに近づいて来る。

「あなた、結婚記念日だしどこかで食事でもしない」

 忘れていた。

 そういえばそうだった。

 昔は寒い日には一枚のマフラーを二人で巻いたのに。

「何を着ていくの?」

「別に普通の格好だよ」

「え、そうなの?」

「あれ、どこへ行くつもり?」

「ホテルのディナーでも行きたいわ~」


 そこへ娘一家が来た。

「おばあちゃんたちどこへ行くの」

「どこへも」

「でも、おめかししてる」

 鋭い観察力だな。


 ファミレスだな。

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