二百文字小説「煩悩の人」

第百六十五話

　家内が帽子を買ってきた。

「ねえ、どうかしら」

「ああ、草刈りにいいね」

　つばが広くて日焼けしそうにない。

「あなた！　どうして草刈りなのよ！」

「どう見えたいんだ？」

「だって、よく女優が軽井沢の別荘あたりでかぶってるでしょう」

「そりゃ、女優はそうだろうが、うちじゃ草刈りだろう」

「フン」

　喧嘩をしてる暇はない。

　ゴルフの練習に行かなくっちゃ。

　後ろから家内が呟く。

「一度くらいは優勝商品が欲しいわね」

　ああ、嫌な感じ。