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第百六十四話

 「ミーンミーン」

 孫が私の周りで蝉のまねして鳴いている。

「今日は忙しいんだよ。蝉を捕りには行けないよ」

「おじいちゃん、明日は地面に落ちちゃってるかもしれないよ」

 それを取ればいいじゃないかと言いたいが。

「おじいちゃんの勉強があるの」

「塾なの?」

「まあ、そんなものだが」

 万葉集の講座があるんだよ。

「プリント何枚やれば終わる? 僕待っててあげる」

「ママはどうした?」

「美容院だって」

 親の顔が見てみたい!


 虚しい。

 

 

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