最高のスパイス
夫は中小企業で働いているサラリーマンです。
妻は時々喫茶のパートです。
そんな二人のゆるりな朝をどうぞ。
「…起きて」
私は目が覚めて早朝、隣の人を起こす。
さわさわと布団の音がする。
眠気が晴れない様子が目立つ彼を見て笑みを溢した。
「おはよう」
おはよう、の返事をもらうと二人の温もりから離れた私は、窓に向かい光の侵入を許した。
朝食にはトーストを二人分焼いた。
味付けはバターだけのプレーンなトースト。
飲み物にはコーヒー。
質素なものに見えても私には充実感が溢れている。
食器のふれ合う音が静かに聞こえた。
「今日も9時頃になると思う」
スーツに着替えながら彼は言う。
私は食器の洗浄中にそれを聞いた。
「うん、わかった」
一旦水道を止め、静けさを材料に返事をした。
緩やかな語調になってしまうのは彼の雰囲気に酔わされてしまうから。
少し経ってビジネスマンに変わった彼を見送りに彼の荷物を持ち、玄関へ行く。
二人の好奇心で始めたこのドラマチックな演出はもう日課になり、演出ではなくなった。
「じゃ、行ってきます」
今ではもう数えきれないぐらいの光景でもいつも必ず目を見て言ってくれる。
まるで、初めてかのように、私を見てくれる。
「行ってらっしゃい」
一瞬だけの開閉。
少しして笑顔を洩らす変態な自分がいる。
初々しさは未だに捨てきれない。
変わり映えのない毎日でも、質素な朝食でも、全てがとても綺麗で新鮮な毎日になる。
いつかは子どもが出来て、段々歳もとっていき、時間が減っていく。
私には、その全てを幸せに味わえる自信がある。
彼がいてくれるおかげで、私の世界はどこまでも色づくから。
彼は、私にとっての
最高のスパイス。
記念すべき一作目となりました。
どちらかというと詩ような調子になってしまいましたが、平和なものをテーマに、こういうの憧れる、とアバウトな気持ちで書きました。
関係性が大人っぽくて素敵だと思います。
それがうまく伝えることが出来ていたらうれしいです。
にしても、新婚さんでこれだけ落ち着いているならなかなか良い将来を送ってくださるんじゃないでしょうか。
微笑ましいです。
私ならきっと声だけで起こすなんて出来ません((
構ってちゃんは豪快にアタックかまします、すいません。
読んでくださって、ありがとうございました。