第3話
なかなか更新できず申し訳ありません、第3話参ります。
自宅のボロアパートから歩いて3分と手軽な位置にある書店「ヤナギヤ」。店長の嗜好に大きく左右されたラインナップが、店内狭しと並んでいる。この自動ドアをくぐるたび、俺は俺は肩身の狭い思いをしていた。なぜならー
「あ、地獄谷先生。恋愛小説の素晴らしさ、分かってくれた?とりあえず一般的なBLやGLものから始めようか。新しいの、入ったからさ」
-こんな店長だからである。爽やかに笑みを浮かべているこの青年こそが、「ヤナギヤ」の店長ー
柳谷祐一だった。恋愛小説を読むことにおいて、彼の右に出るものはいない。だから自然と、「ヤナギヤ」のラインナップは恋愛もの(それもBLやGLが大半を占めている)が多いのである。だから俺は今まで、肩身の狭い思いをしてきたわけだーが、それも今日までだ。
「ね、BLBL。それとも最初はGLがいい?」
「黙れこの精神異常者が。俺はお前みたいに同性間同士の恋愛本なんて読まない。俺が読むのは普通の恋愛本だ」
「おやおや小説家らしくもない発言だ、地獄谷先生。君は今BL本及びGL本読者を精神異常者と言ったのと同じ発言をしたのだよ?人権侵害、名誉毀損。お先真っ暗だね」
「黙れと言っている」
俺は柳谷を思い切り突き飛ばした。柳谷はそのままの勢いでレジへと向かう。奴はこのやり取りを楽しんでる傾向があるな、どうも。
「えーと恋愛、恋愛・・・・・・」
俺はBL、GLでない恋愛小説を探そうとした。しかしそこは店長の変態的嗜好が押し出されている「ヤナギヤ」、なかなかそれらの本は見つからない。スタンダードなBLやGLを探すだけでも一苦労だ。
「雌豚と私」
「150kgの男」
「加齢臭に恋する僕」
って、ハードにもほどがある!需要あんのかこれ・・・・・
そうしてタイトルを見ていくうちに、俺は1冊の本を見つけた。
「暗闇の探偵」。
俺ー地獄谷涼のデビュー作。どうやら俺は知らない間に、恋愛以外のコーナーに来ていたらしい。
てかこの店、俺の置いてたのか・・・・・柄にもなく嬉しく思っちゃったり。俺はその本を手に取りー
「地獄谷・・・・・先生?」
ーそして落とした。
知らない少女が、俺の名を呼んだから。