風薫る
雪華の悲しい過去です。
学校の花壇にパンジーやチューリップなどの花が咲ている。すでに入学してから一か月半ば過ぎていた。
この有名私立学校の学科は3つある。
普通科うち6クラスあるうち進学クラスは1つ。音楽科と総合学科が各1クラスずつある。
総合学科は、最近新設されて、普通科目と情報や化学などの特化した単位あり。自分で単位を選んで授業に受ける。なおかつ飛び級すれば、飛び級した期間留学できる。なんと現在生徒会長の春野と副会長の長谷川は1年生の9月から1年間留学したそうだ。
学校は前期・後期で、生徒会役員交代は、学年の後期から1年間になる。
2年の9月に帰国して、その後生徒会役員に選出された。
会計の高橋佳緒理は、幼少期からピアノを弾いており、コンテストの上位者の実力の持ち主である。音楽科の在籍している。1年後期より生徒会役員である。生徒会運営円滑する任期は最大2年になっている。2年の白石淳一も1年から役員に選出された。この4人は地域の資産家で昔からの幼馴染である。
休日の寮の一室で、昼食中に、またしても、琴子のつぶやきがおおきい。
「うちの生徒会、ほんと出来すぎ君か! みんなキャパが凄すぎる。私が住んでいる隣の県でも噂が届いていたもの」
私もクスクスと笑いで「そうだね」と答えた。
「うちの雪華も負けてないですよ。頭はいいし、美人さんだし、料理はおいしいし、言うことなし! うちに嫁に来てーー」
休日は食堂が休みなので、自炊して2人で食事している。すっかり私の料理に胃袋をつかまえられた食べながら、満面の笑顔で褒めてきた。
「何言っているの。でも、私なんか誰も娶ってくれないよ」
「私と言いたいが、相手は愚兄で勘弁ね、顔やそれなり、性格はまあまだから」
「冗談やめて、結婚願望ないから」
「勿体ない、じゃあさ、働き出したら住むところシェアしようよ」
気の早いことを言い出した琴葉に違う話題を振った。
「次の茶道部は、金曜日の放課後でいいのよね」
「そうそう、茶道部と華道部は人数が減少した為、混合になり、好きな日に出席すればよく、隔週に開催している。ゆるい。琴葉曰く、これを花嫁修業とするそうだ。私も琴葉の共に入部した。2人もまじめにどちらも出席している。
「でも、雪華は陸上部は大丈夫? 疲れない、そんなの部活掛け持ちして」
進学校でも、吹奏楽部やテニス部、バスケットボール部は全国大会に出場しているので、しっかりと平日の放課後に練習が組まれている。ほかの部活は申し訳ない程度の活動である。陸上部は伝統的に存在してるが、弱小チームなので放課後2~3回程度のため、文化部と兼任した。忙しいといろいろ考えこむことがなくよい。
それに走るのは嫌いではない。走っていると生命の鼓動が感じられ少し安心する。疲れて寝れば悪夢を見ないですむ。
「あと、クラスの園芸係もやっているでしょ、相手は うーん・・あっ 細身で肌が異様に白い人、中世的で・・・・・・うーん?成田だっけ?」
クラスメイトの名前を何とか思い出した琴葉 ダメだろう。
4月初めに係ぎめで、地味で実働がある園芸係は不評だった。活動は、毎週一回にある。みんな面倒くさいという雰囲気の中、私と成田が同時に立候補した。本当にぴったりに手を挙げたのには、びっくりした。成田にあとで聞いたら、他のよりはましかなと思ったと言っていた。私は元々実家に居た時、祖母と一緒に庭いじりをしていたのを思い出してやろうと決めた。
数日たった放課後、スコップを肥料片手に持ち花壇の手入れをしている。何度か成田凪と一緒に作業したからか雑談できるまでなった。
成田凪は、容姿は琴葉が言ったように、身長170㎝程度やせ型できめ細かい肌をしている。立ち振る舞いが穏やかで、成長期の男子に見られる粗々しさがなく、とても話しやすい。
成田凪の瞳の中になぜか男性の性を感じない。私は小さい頃から、性の対象とみられることが多い。そのため本能なのか、経験なのか、悪意のある人は敏感に読み取れる。その人たちは必死に隠しているようだが、見る目の色が変わり、仄暗い劣情で舐るように見てくる。その視線を感じるたび、心が凍り付く。
も一度しっかり凪に顔を向け、瞳を覗き込んだ。やはり、成田凪は名のように感情に波がない。高校生ならば異性に興味があると思う。しかし、私は彼に感じるイメージは木のように、ただそこに静かに居るのが当然だというように。
作業が終わったが、凪は何か私に話しかけたい挙動をみせた。今日は、いつもと様子が違う。一重の目が真剣であることに気づいた。
「望月さん モテるでしょう 誰かと付き合わないの?」
凪の言葉が意外だった。人のことに関心がないと思っていたからだ。
「どうして」
そんなに付き合いのない人に警戒してしまう。
「うーん 興味があるからかな」
警戒度が上がった。
「男性が苦手、いや、拒否しているでしょ」
何を聞かれているの。
「あんまり警戒しないで、俺は大丈夫」
何のことか分からない。
幼いときに父親の弟からいたずらされた。叔父はたまに会う私たち母子に優しく話しかけてくれた数少ない親族であった。
父親に優しくしてもらえない私は、優しくしてくれる叔父に警戒せず、二人っきりになった。頭を撫でられたが、次第に叔父の手が下に移動した。何が起こっているのかわからなかったが、これは悪いことと感じ、大声で泣き出した。それで叔父も怯み「このことは誰にも言ってはいけないよ」呪いの言葉を残し去った。
幼い私は叔父に言われてように、他の人に行ってはいけないと思い込んだ。また、悪い子・汚いと思われなく、この事を誰にも言えなかった。
凪はこう言った。
「俺も性虐待を実の母親から受けたから」
淡々と、まるで簡単な宿題の答えを述べるように、深刻さも無くつぶやく彼を、私は瞬きもせず瞠目した。
次も雪華につらい思い出です




