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もう一度 暁の空を  作者: ことほぐ 
10/13

硝子


夕闇が迫り薄暗くなり、凪の顔が曖昧で『誰そ彼』と問いかけそうになる。辺りは人影なく、二人の周りの夜の冷たい風が吹き抜ける。


「そう警戒しないで」

震える手をしっかりと握り、彼へ返事した。

「どうしてそう思ったの」

凪は穏やかな表情で、落ち着いた口調で話し出した。

「僕と同じ感じがしたから、目を見て分かった。瞳に蔭りあるよ」

「そして、ガラスの中に自分を閉じ込めて、他人を踏み込ませない」


「家族以外は知らないの」

「うん、安心して僕からは誰にも言わない、絶対に」

知り合ったばかりの人に弱みを知られるのは・・・不安で胸が押しつぶされる。

「ごめんね、急にこんな話をして、もう遅いから寮に戻ろう」


 凪も寮で暮らしているのかと頭によぎったが、門限も近いので二人は別れて足早にその場を立ち去った。


 女子寮には門限前に着くことができた。

息が整わない私に、管理人の薫子さんが心配そうに問いかけに目をそらし

「少し頭痛するので、食事はいらないです」

 明かりのない自室でベットに横になる。体が指先まで冷たく、全身が震える。

 布団にくるまっていても暖まらない。瞼をギュッと閉じると暗闇から這い出る苦痛で目が痛い。

 母の死と性虐待を受けた傷と、周りにこのことを知られたらという恐怖で感情が混乱したままそのまま眠ってしまったらしい。


 どのくらい眠っていたのだろうか、目を開けると常夜灯の灯りがぼんやり辺りを照らす。泣いたからか、瞼が腫れぼったい。

 同室の琴葉の寝息が聞こえる。以前は暗闇にひとりぼっちだった。近くに人がいることに、私の安心を覚え、気持ちが落ち着いてきた。

 のどの渇きを感じ、音をたてないように起き上がったが、琴葉が眠そうに声をかけてきた。

「大丈夫?」

「起こしてごめんね。もう大丈夫」

「よかった、でも、無理しないで」

そのまま琴葉は眠ってしまった。


 もう眠気はない。東の空は、ほんのり明るくなり曙色に染めていた。

朝の色を見てから、少し窓を開けてみる。まだ寒い風が部屋を冷やた。慌てて窓を閉める。清々しい空気を吸い心を落ち着かせるように深呼吸をする。


 私は、朝の空が好き。漆黒な暗闇が次第に光で明るい色に変わる。悪夢にうなされた時、早く起きて朝日を浴びると、自分が清められるようで少し心が洗われる。

 一旦ベットに横になるが、二度寝は出来そうにない。試験が近いため参考書に目を通すが、頭に入らない。


(凪はなんであんなこと言ったのだろう)


 私は母の死後、心が悲鳴を上げたのだろう、話すときに言葉がうまく出ず、小学6年の1年間は不登校になり、治療とカウンセリングとリハビリを受けた。

 また、地元での進学は噂が怖く、遠方の女子中学校に入学した。電車で通学で1度痴漢の被害にあった。それからは、早く起き女性専用車に乗って我慢して通学した。通学も避けたかったので、寮があるこの学校を選んだ。

 凪も家から出たかったからここに決めたのだろうか。


 気分転換に校庭を走ろうと思いった。

スポーツウェアに着替え、寮をこっそりと出て、校庭を一周したときに、門から自転車が一台入ってくるのが見え、そのまま駐輪場に止めて校舎へ向かって歩き出していた。


 遠目でもわかる長身のスタイルがよく姿勢よく歩いているのは、長谷川雅斗であった。

(資産家のお坊ちゃんなのに自転車でくるなんて、、、)

 とても意外だったので、まじまじ歩いている姿を目で追った。

この学校は駅から徒歩20分程度かかる。駅から専用バスがあるが、いつも満員であるとクラスメイトが嘆いていた。何人かは車で送迎してもらっている。生徒会書記の高橋かおりさんは名家のお嬢様らしく、毎回通学は使用人が運転する車で登校している。

 彼の後ろ姿を見送ってから、また走りだした。


一週間、凪とは同じクラスでも、目を合わさず避けて続いた。

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