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2025年12月  作者: 鍋乃結衣
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第十六話 12月18日神様編終幕

 生き残りやがった。

 ジョッキを机に置く。折角のご馳走にも関わらず、飲む気が失せた。目前の厨房では、ついさっき注文したチャーハンが作られている際中だ。今丁度卵が投入された。 

 もうキャンセルはできないだろう。食欲はないが、残したら何を言われるか分からない。こんな厨房の真ん前の席じゃなく、店員の目が届きにくい奥に行けばよかった。

 金髪をかきあげる。長いこと手入れをしてないせいで、大分傷んでいた。憂鬱の原因他でもない、俺の事務所の従業員、神崎あずまだ。

あれが呼び寄せた「神様」は、紛い物とは言えども、相当に邪悪な怪異だった。俺ですらタイマンでやり合えば、完膚なきまでに叩きのめされるだろう。いや、対面したが最後、絶対に殺されるだろう。それだけに、あずまには神様の注意を一身に引き付けて、殺されてもらうつもりだった。幸運なことに、神様はあずまに異常な執着を見せていた。目的を果たせば満足して勝手に消えるだろう、と考えてこの策をとった。確実とは言えないが、可能性はあった。上手くいくはずだった。

 だが。それがあの女、力技で「黄泉送り」にして生き残りやがった。

 黄泉送り。黄泉の国に怪異を転送することで、この世から追放する術だ。通常、悪霊や邪悪な怪異の類は封印か駆除される。が、稀に人の力ではどうしょうもないほど強い個体がいる。今回の神様がまさにそれにあたる。そういう奴には、この「黄泉送り」が使われる。黄泉の国は人も怪異も惑わす永遠の迷宮だ。出口は常に移動し、唯一頼りになるのは己の勘のみ。迷い込めば抜け出すのは困難を極める。黄泉送りは、黄泉の国のこういった性質を利用したものだ。

 が、それは普通、陣を用いて怪異だけ黄泉送りにする。どこに自分ごと怪異を黄泉送りにする奴がいる。まあ、そこは問題じゃないが。

 ……白奈出山だったか。黄泉に通ずる霊山の一つだったと記憶している。しかも、黄泉の比較的「浅い」ところに繋がっていたはずだ。

 そう、俺の憂鬱はあの女が、神様を黄泉送りにしたことにある。「抜け出すのは困難を極める」と言ったが、困難なだけで抜け出せないわけじゃない。つまり、神様はいずれこの世に戻ってくる。それが何年後か何十年後かは分からない。だが、その時まで奴はあずまを標的にしているだろうか。怪異の考えることは人間じゃ推し量れない。 

 次に狙うのは、俺かもしれない。

 ため息が出る。だからこそ、あずまには神様に殺されて貰わなければいけなかった。畜生、これからどうすればいい。

 チャーハンが目の前に置かれる。渋々スプーンを手に取った。

 

 



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