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第7話『生徒会と少女』

魔導学園三棟、誰もいないのか静寂に包まれた廊下を歩く四人の影があった。


一人は先頭に立ち、歩いている赤髪の青年。

一人はその後ろに立ち、左手には紙を挟んでいる用箋挟を持った青髪のメガネの青年。

一人は同年代の平均より少し高い身長に、山吹色の髪、そして凛々しい顔立ちをした女性。

一人は薄水色の髪を後ろで団子結びし、眼帯をした背の低い華奢な顔立ちの少女。


彼らはしばらく歩くとその廊下の一番奥にある、他とは大きめで高貴な感じの扉が特徴的な部屋に着いた。


すると一番前を歩いていた青年が扉を開いた後、招き入れるように手を扉の先に伸ばす。

「どうぞ入って」

その言葉に続いて三人は部屋の中に入り、女性と少女は扉のすぐ横にあるソファに腰掛けた。


「少し待っててね」

赤髪の青年はソワソワしている少女にそう優しく言った後、隣の部屋に入っていく。


「すまないな、マカ=アルバートン公爵令嬢。だが…」

青い髪の青年、ユウがメガネをクイッ、と上げながら山吹色の髪の女性、マカに軽く謝る。


「…まぁ、生徒会の考えはわかってるつもりですので」

マカがそう返すとユウはお心遣い感謝する、と軽く会釈した。


その後しばらくの間三人で座って待っていると

「よし、早速だが本題に入ろう」

と赤髪の青年、セスタが何かいい香りのするコーヒーを入れたカップを乗せたトレーをソファの中央にあるテーブルに置き、ユウの隣に座る。


「本…題?」

少女は少し不思議そうに傾げながら赤髪の青年を見た。

そんなミネルヴァを見て青年、セスタが少女に対して微笑むとユウの用箋挟からある一枚の紙を取り出す。


「これ、は…?」

ミネルヴァはセスタの出した紙に目をやる。

その紙には『生徒会所属用紙』と書かれていた。


「ボク、セスタ・アルバートンは…君、ミネルヴァ・アーカイブスを学園生徒会に迎え入れたいと思っている」


⬛︎


生徒会。


生徒の中でも特に地位の高い人間が所属し、学園の全てを取り仕切る学園長、教員に次ぐ権限の持ち主である。

彼ら生徒会は公爵家や伯爵家の人間が多く所属しており、その圧倒的なカリスマ性からファンクラブも設立される程だ。


「あの…なんで、私…なので、しょ…うか?」

ミネルヴァはそんな生徒会に平民出身である自分自身が所属するという意味を何となくは分かっている。

だからこそ、彼…セスタの考えを理解できずにいた。


「ボクはね、生徒会はエリートより君みたいな優しい心を持った人こそが所属すべきだと思っている。それに、生徒会に所属していれば虐めは減ると思うよ」

セスタは真剣な顔でその少女の問いに嘘偽りなく答える。


「でも、私が優し…なんて」

少女はその言葉を否定しようとするが青年はその否定を否定する。

「君は優しいよ」


「な…んで?しょう、か?」

少女は不思議そうに彼の顔を見る。

「そう思ったからだよ」

その青年はあまりにも曖昧な表現で返答した。


「え?それ、じゃ」

少女はそこまで言うと隣に座っていた女性、マカが呆れた顔で言った。

「兄様は昔からこうやって適当な表現をしますが、人を見る目は本物なんですの」


少女はその言葉を聞いた後セスタの顔をチラリと見る。

青年はそれに対してどうだい?と返す。


今はこの人を信じてみよう、と思い

「あの、私…で、よければ」

力を振り絞ってそのか細い声でそう発する。


その後、ミネルヴァは紙にサインをしセスタに渡した。


「よし、これで成立だね」

青年が紙をユウに渡す時に少女が発言する。

「あの…兼部など、は…」


その問いにセスタはできるよ、と答えると少女はありがとうございます!と感謝を述べた。


⬛︎


「あの、マカ…さんも生徒会、に入るんですね」

生徒会を後にし廊下を歩いている時、ミネルヴァは隣でついてきている女性、マカにそう言った。


「まぁ…、ミネルヴァ嬢一人じゃ危ないと思いますしね。それより、寄りたい場所とはどこでしょう?」

マカが少し不思議そうに尋ねる。


「えっとね、図書室に…」

ミネルヴァは少し恥ずかしそうに答えた。

その返答に納得したのかマカは少女の手を取り歩き出す。


「あ、マカさ」

少女がそこまで言うとマカが遮るように言う。

「マカでいいですわ!それと、図書室はこちらですの!」


その言葉と行動に温かさを感じたのか少女は少し顔を赤くする。

「私!も好きなよう、に!呼んで、欲しい…!」


精一杯振り絞ったその声にマカが反応する。

「ええ!ではミネと呼ばせていただきますわね!」


「…!うん!よろしく、ね…!マカっ」

少女はマカにそう言うと彼女も返すように

「ええ!こちらこそよろしくお願いしますわね!ミネ!」

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