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第5話『学園と少女』

「転入日、無事に決まったね」

先程学園内の視察と転入日の調整を終わらせ、ローグとミネルヴァは彼らの護衛役であるズイの運転する車で屋敷へと戻っていた。


「はい…でも、なんかこ、怖かった…です」

ミネルヴァは学園内を見学している時周りにいた女子の目線から殺意を感じていたのを思い出し、顔を真っ青にしながらその細身の身体を震わせた。


「はは…僕ら大魔道士は良くも悪くも有名人だからね」

とローグは苦笑いを浮かべる。


彼自身、平民出身を弟子に取ったことは他の大魔道士にも色々聞かれており、一人を除いて全員を納得させることには成功した。


「…ミネルヴァ、何か買って帰ろうか」

とローグは行きの車での出来事を思い出しながら少女に聞いた。


「ドーナツ…!」

少女はよほど食べたかったのか聞かれた瞬間に目をキラキラさせながら即答した。


「うん。わかった」

ローグは微笑みながらそう返し、少女の頭を撫でズイにドーナツを買うと言い、購入した後屋敷へと戻った。


⬛︎


「おおぉ…っ!」

現在、ミネルヴァは屋敷に届いた魔導学園の制服に身を包んでいた。


純白のセーラー服に青色がワンポイントカラーとして袖の部分などに入った服に紺色のネクタイ、白の線が端に入っている藍色のスカートが特徴的な魔導学園の制服はその独特な色使いから一目でその学園の生徒だとわかるようになっている。


「これっ…!すご、い…!」

気に入ったのか少女は着替えを手伝っていたリィアの目の前で見せびらかす様に振り向く。


「はい。とても可愛いですよ、ご主人様」

リィアはその少女の姿を見て少し微笑みながら答える。


そんな風に少女とリィアがやっていると部屋の扉をコンコンと二回ノックする音がし、

「僕だ」

と男性の扉越しでも聞こえる程に美しい声が聞こえた。


「はい、どうぞ。ローグ様」

リィアがそう返すとローグは扉を開き少女の方を見る。


「あ、お師匠様っ!見て見て!」

少女はローグの顔を見ると一目散に駆け出し、彼の前にくると見せびらかすように動いた。


「うん、よく似合ってるよ」

そんな少女の姿を見てローグは優しい声でそう返す。


その後仕事があるから、と部屋を後にする時

「学園生活は明日からだからね、今日はちゃんと寝るんだよ」

と少女に言い、扉を閉めた。


⬛︎


「行ってらっしゃいませ、ご主人様」

リィアは魔導学園の学園門前に車を止めるとそう言い後ろのドアを開ける。

すると白と藍色の学園の制服に身を包んだ薄水色の長い髪を団子に束ねた少女が降りてくる。


「ありがとうっ、リィア」

その少女、ミネルヴァはメイド服に身を包み口元のホクロが特徴的な黒い髪をした彼女の顔を見てそう言った。


「いえいえ、これもご主人様のためですので」

とリィアは返す。


「じゃあ、行って…きます!」

と少女は彼女に言い、門の中に入っていった。


⬛︎


「ごきげんよう、マカ様」

魔導学園の二棟、銅色の壁と天井が特徴的な教室の連なる廊下にある一人の女性へ向かって挨拶が飛び交う。


「ごきげんよう」

マカ、と呼ばれた山吹色の髪に右目の下にあるホクロが存在感を放ち、同じ歳の平均より少し身長の高い女性はその凛々しい顔に笑みを浮かべ周りに軽く挨拶をしながら廊下の奥にある教室『1-A』に入っていった。


「今日もお美しいですわね、マカ様は」

「ええ、あれぞ『完璧なる令嬢(パーフェクト・レディ)』ですわね」

とマカが教室に入ったあと彼女ら『マカ様ファンクラブ』と呼ばれる女性たちが廊下の隅に集まり感想や意見を述べ始めた。

他の人からは少し冷ややかな目で見られているが彼女たちは気にすることはなかった。


⬛︎


「はぁ…」

教室の己の席に座ったあと、マカはため息を吐いた。

そして彼女はその山吹色の髪をいじりながらそう呟く。


「『魔導恋物語・8』の余韻に浸りたいというのに…」

彼女は昨日やっと読み終わった『魔導恋物語』の最新刊である八巻のラスト、遂に主人公にアズがキスをするシーン。

彼女はその展開の余韻に昨日からずっと浸っているのだ。


と彼女が八巻のラストを思い出していると授業開始前のチャイムが鳴る。

そしてその二分後に開始のチャイムがなると教室に1時限目『魔術』の先生と、ある少女が入ってきた。


「コホン。えーっと、今日からこのクラスに編入する者を紹介する。名を」

と『魔術』の先生・コートがそう言うと隣の少女が喋り始めた。


「あ…えと、その…ミネルヴァ、アーカイブ…スです」

少女はおどおどとか細い声でそう言い、続ける。


「好きな…のは、『魔導恋物語』…です。その、よろしくお願い…しま、す」

その言葉を聞いたマカが少し反応した。


そして少女が自己紹介を言い終わるとコートは

「好きなものまで言わなくていいんだぞ」

と少女、ミネルヴァに返す。


「えっあ、そうなん…です、ね。…ごめん、なさい」

少女はその言葉に少し恥ずかしいのか顔を赤くして下を向く。


「あ、ミネルヴァの席は…マカ。空いてるからお前の隣でいいか?」

とポカンとしていたマカの顔を見てコートは聞く。


その言葉に反応してすぐにマカは

「はい。よろしくてよ、コート先生」

と高貴に凛々しい声で返した。

その少女がコートに連れられてマカの隣に座る。


「あ、その…よろしくお願い、します」

と少女がマカにそう挨拶する。

「えぇ。こちらこそよろしくお願いしますわね、ミネルヴァ嬢」

その挨拶にマカはご令嬢らしい挨拶で返した。

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