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聖女が始める新生活!  作者: NekoMouhu
第一章 ベテルギウス
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第8話 危機のペンダント

『氷の戦士』が殺され、作られていた壁は徐々に消えていった。

もしかしたらこの氷の壁も、炎の壁で、触れば火傷を負うのかもしれない。

 「リアー!大丈夫だったか?」

「大丈夫!そうそう、この人、『氷の戦士』だった!」

その言葉を聞いたレッドは一瞬、思考が停止する。

『氷の戦士』は死ぬ確率が格段と低いとされていた冒険者の一人だ。

それを冒険者になったばかりの、たった一人の見習い冒険者に討たれたのである。

どう戦ったかまではわからないけれど、十分『異質存在』とも言えるだろう。


 「そこの四人の方たち!少しお願いがあるのですが…」


急に声をかけられて振り向くと、そこには王都では有名な冒険者のクルセウス一行だった。


 「どうしたんですか?」

 「戦闘が終わったところで申し訳ないのだが、援助を頼めないだろうか?」

「何があったんですか?そんなに慌てて?」


リアが聞いたところ、クルセウス一行のリーダー、スルズ・ピータはギアとグラが暴れている途中、なかった筈の洞窟が王都内で見つかり、調査をしに中に入ると高ランクの魔物ばかりで、少々苦戦しているという。

 「だったら、任せてください!」

「そうね。私もい―」

そうリアが言うと、レッドは「いや、行かなくていい」と言って止めた。

 「俺たちは魔物狩りぐらいできる。リアは今の戦いで疲れたと思うから、休んでいてほしい。」

言葉だけ聞けば、いいことを言ってくれている。しかし、何か別の目的がありそうだ。

「わかったわ。それじゃ私はギルドに報告とかしてくるから、頑張ってね!」

そう応援すると、レッドが何やら黙って、少し経った後、

 「ただ、一つだけお願いがあるんだが―」

と言った。

休んでいてほしいなんて言った割にはお願いしてくるのかい。

そうツッコミたくなったが、我慢して、用件だけを聞いてやろうとした。

「何?」

 「このペンダントを持っていてほしいんだ。」

「ペンダント?」

このペンダントは『危機の灯』という特殊アイテムらしい。

『命の灯』は死ぬと光るペンダントだ。

しかし『危機の灯』は仲間が危険な目にあったときに光るペンダントらしい。

つまりは、自分が危険な目に遭った時、助けに来てくれと遠回しに言っているのだ。

「あんた、自信満々に言っておいてよくサラッと渡すわね…というかいざという時は助けてほしい、なんていう思考が丸見えよ。まぁ、その時は助けに行ってあげるけど。」

 「うっ…」

本当のことを言われてレッドは言い返す言葉がない。

 「一応、どの冒険者も持っているアイテムなのよ。だからこの事態に関係なく、『ベテルギウス』の一員として渡しておくのよ。」

「うん、わかった。ありがとう。」

そう言ってリアはすんなりとペンダントを受け取った。

 「リアの優しさに感謝するのよ。レッド。」

クラにプチ説教をされ、何も言えず、結局リアの優しさに感謝するしかなかった。


          ◇ ◇ ◇


リアはこの被害状況と、鎮圧の完了を伝えにギルドへと向かった。

ここに来るのは二度目だ。受付の女性に用件を話、セキュリティの高いエレベーターを使ってギルドマスターの元へ向かった。そして、エレベーターの扉が開く―


 「おお、お疲れさん。調子はどうだい?」

ギルドマスターがソファに座りながら言った。

「元気です…けど冒険者として調子はどう?と聞いているのであれば絶不調です。」

リアは躊躇くなく本当の調子をきっぱりと言った。

 「そうか、そうか。ハッハッハ!元気ならよかったよ!それで、何の用だい?」

「王都の全体を見渡せるここならわかるでしょう。街がほぼ全壊です。」

 「その話について詳しく聞かせてもらおうか。」


ギルドマスターに、リアに殴りかかったギアが暴れていたこと、ギアの兄、グラが脱獄させたこと、二人を討ったことを話した。


 「ちなみにだが、ギアが操作していたドラゴンはどうしたんだい?」

「ドラゴンについては心配しないでください。ギアの操作を解いたから懐いたのか、私の言うことを聞いてくれます。なので、今は王都の周りの警戒をさせています。」


リアは『氷の戦士』ことギアを討ち、ここに進もうとしたとき、ドラゴンをどうしたものか、と考えた。

リアは魔獣の中でも一番凶暴と言われるドラゴンを見るが、敵意はなかった。

近づいても、敵意は感じない。いや、敵意どころか、好意を持っていた。

ドラゴンは魔力の操作で会話をする為、自分の魔力を操作し、コミュニケーションをとった。

ドラゴンの魔力の数値は、9872だった。

ドラゴンの会話の中で9872が意味するのは『新しき主を認め、従う』。

リアは6820にして、『なぜ私に従うの?』と聞いてみる。

ドラゴンの魔力の数値は、13869に変わる。『あなたが私にかけられていた支配を解いてくれたから。』

リアは、51に変え、『わかった。』と答える。

続けてリアは5810に変え、『この周りの警戒をしておいてくれる?』と聞く。

ドラゴンから帰ってきた値は51に変え、『わかりました。』と答えた。


 「その話を聞くと、人間離れしてると思うよ。」

「そうですか?小さいころ、ドラゴンとの話し方を教えてもらいましたよ?」

 「お母さんも、人間離れしてるんだね…」

「ですが、そんな人間離れしている母でも、死ぬことはあります。」

リアは小さいころ、母を亡くした。なぜ死んだのか、その理由はわからない。

それから母の知り合いに預けられ、そこで育った記憶はある。


 「とにかく、王都の状況は分かった。ところで君のペンダントが光ってるけど、大丈夫?」

「え?」

急にギルドマスターに言われ、ペンダントを見ると、強く、光を放っていた。

 「す、すいません!ちょっと行ってきます!」

「ハハハ。いってらっしゃい!」


リアは大急ぎでエレベーターに乗って100階から1階まで降りた。

「本っ当に、何が『魔物狩りぐらいできる』なの!」

そう言って、リアはレッドたちの元へと向かった。

これは単なる余談ですが、ドラゴンの出す会話の値にはしっかりと、意味があります。

すべて話すと長くなるので、この話にでてきた会話の最後の一桁の意味のみ、紹介します。

0は質問、1は承諾、2は意思、9は理由になります。69と最後に続く場合、なぜ?の答えを意味します。

この整数値だけで会話をするの?と思いませんか?たった四桁五桁で、たくさんの会話ができるわけがない!と思いませんか?簡単に言えば会話には小数点が含まれています。小数点まで書くと、無駄に長い文章になってしまうため、整数のみとしています。


次回 第9話 灯の導き

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