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聖女が始める新生活!  作者: NekoMouhu
第四章 無限軌道
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第42話 頼ってばかり

第一試験が終わり――

シェアハウスにはレッドと、リアを除くベテルギウス一行が待機していた。

リアが心配、というのもそうだが、どちらかと言えば、一人でどこかへ出かけてしまったレッドのことの方が心配であった。

レッドの危機のペンダントが部屋から無くなっているので、持っているには違いない。

そのため、シェアハウスにいる全員が、無事に帰ってくるのを願っていた。


「リアはあれだけ強いから良いけど、レッド兄ぃは結構心配だぞ?」

 「同感なのよ。」


          ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「リアさん、今日は疲れたでしょうから、家に帰ってゆっくり休んでください。後日、またお伺いしますね。」


 「わかりました。ありがとうございます!」


リアはレテリア先生から第一試験の合格証書を貰い、シェアハウスへと歩いた。


リアが歩き始めてから5分、ようやくシェアハウスが見えてきた。

「みんな待ってるかな…魔力感知…!」


魔力感知では魔力だけでなく、位置まで正確にわかるスキル。


「いち、にー、さん、しー…」


リアは部屋にいる人数を数える。

しかし、一人、足りない。


「うーん…魔力量的にレッドがいない、かな。」


そうして、リアはシェアハウスの扉を開ける。

「ただい――」

 「「――ッ!リア!」」

クラがリアに飛びつき、ジェルはリアの体に掴まった。

「ちょ、みんなどうしたの?!」

 「れ、レッドが昨日からいないのよ…!」

「そ、そうなの?でもレッドはもうすぐ帰ってくると思うけど…」

レッドを除くベテルギウス一行はそれから5分待った。

そして――


 「た、ただいま…」


レッドはボロボロの状態で帰宅した。


          ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「レッドは一体、何をしていたの?」


 「ああ、リア戻ったのか。いや、少し自分を鍛え直そうと思ってな…」


そう言ってレッドは報酬金を机の上に置く。


 「俺はCランクのクエストを一人で受けに行っただけだ。」


 「それがみんなを心配させるのよ。」


クラは続けてそう言った。


 「そう、だな。ごめん。でも、どうしてもそうしたかったんだ。」


「「―――」」


 「リアが来てからベテルギウスの風向きは変わり、旅は順調なものになった。その中でいろんな戦いがあって、危険な体験をした。でも、よく考えてみればリアと比べて俺は戦っていない、そう思ったんだ。」


それを言われて、リア以外のみんなは、心当たりがあったのかもしれない。


シェアハウスで待っているときも、リアなら大丈夫だと確信していた。

そして、戦闘でも別にリアが先頭に自分から出ているわけじゃない。

周りのみんながリアに任せたいと、そう思うから結局はリアが先頭になる。


 「だから俺は少しでも強くなろうと思って、クエストを一人で受けに行ったんだ。」


そう、レッドは告げた。

そのレッドの気持ちはリア以外にはよくわかる。

なぜなら、リア以外全員が、レッドと同じような立ち位置なのだから。


「レッド、私から何個か、言ってもいい?」


 「…うん。」


「レッドが強くなりたいって思うのはすっごくわかる。確かにレッドは剣を使うからそういう一人で戦いを経験するのも良いことだと思う。でも次からはしっかりみんなに伝えてあげて。みんなレッドの気持ちを理解してくれると思う。」


 「わかった。」


「それで、皆が私に頼ってばかりじゃダメって考えてるのもわかった。そこで一つ提案。」


 「―――」


「このみんなの中でチームを決めましょ。」


 「チーム?」


「ええ。そのチームでそれぞれ冒険に参加するの。ギルドには臨時チームというものが作れるんだけど、意外と知られていないのよ。」


リアがギルドで働いているころ、5年間で約3つの臨時チームが作られた。

しかしその3チームはどれも同じチーム出身―リア達で言えばベテルギウスのこと―。

それだけ知られていない、隠し制度なのである。


「今からこのメンバーを二つのチームに分ける。そして各それぞれのチームで、臨時チーム名を考えて、そのチームでこれからクエストを受けに行く。そこに私は参加しない。だから、とりあえずCランクのクエストから順番に初めて、順調になってきたらランクを上げたり、チームのメンバーを自由に変更したりしてね。」


結局、チームは決まった。


Aチーム    Bチーム

レッド     ロディ

クラ      ペディ

ジェル     ギア

テディ     グラ


キャトリア三兄弟は分断される形となったが、テディとロディ、ペディについては得意分野が異なるので、ひとまずこのようなチームを組んだ。


そして、このチームでクエストを受けることになった。


こうしてリアが介入しないことで、リアに頼ることは勿論できる筈もない。

ただ一つ、リアが介入する時は危機のペンダントが光った時のみ。

そんな約束のもとでチーム制は行われた。

リアが教師を続ける間は。


          ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


あれから3日ほどたった日、お昼過ぎにシェアハウスのインターホンがなる。

「はーい」

リアがドアを開けると、レテリア先生がいた。

 「第二試験の説明に来ました!」


リアはレテリア先生を応接間へと案内し、お茶とお菓子を用意した。

あの『試練の箱』でレーダが出してくれたお菓子があまりにもおいしかったので、別れの時、少しだけわけてもらったものを、ここで出した。


 「なんですか?!このクッキー、めちゃくちゃおいしいじゃないですか!」


「そうなんですよ。最近知り合った友達から頂いた物なんです。」


おいしい、おいしいとクッキーを食べるレテリア先生をじーっと見ていると、はっ!と何かを思い出したように手を止め、手を口に当てて、ごほん、と言った。


 「え、えーっとそれでですね…第二試験は魔法になります。試験名は『魔石の輝』です。教師は生徒を守るのも役目。なので万が一不審者が来た時などに対応できる力が必要となります。そして、もう一つは実戦授業の際、稀に魔力を暴発させて、大きな魔力弾が手に滞在する場合があります。本人が集中している間は手に留めることができますが、集中力が切れると、それと同時に魔力弾が発射される時があります。それの対処法も必要になります。」


そう長々と説明をしたのち、ポケットから紙のようなものを見てまじまじと見つめる。

リアは何をしているのか気になったが、気に留めないでおいた。


 「そのため、最初はどこまで強い魔法を使えるか、次に魔力暴発の対処、そして最後に魔力の計測をします。どちらかと言えば、魔力の計測が本題ですかね。」


「ちなみにその試験はいつ行うのですか?」


 「あ、今日です。」


「え?」


  第二次試験 『魔石の輝』 開始――

次回 第43話 採用試験 ―魔石の輝―

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