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聖女が始める新生活!  作者: NekoMouhu
第四章 無限軌道
41/50

第41話 ポル

ボス戦…?

特に何もなかったので、リアは45階層へ続くであろう扉の前に立った。


リアは剣の取っ手を持ちながら、ドアを開ける。

そしてリアは最下層へと向かう。


――そして、45階層。

そこには、大きな四角い部屋が一つだけあった。

何か魔物がいるわけでもないし、入り組んでいるわけでもない。

それなのに、リアには何か、強い魔力を感じた。


 「あらら、こんなに早いとは思わんかった。」

そんな声がどこからかして、リアは周りを見渡す。


 「ここよ、ここ。」


そう言って、姿を現したのは、人のような魔物だった。

「あ、あなたは…?」

 「あたし?あたしはこのダンジョンのボス。」

そう言って、リアの方へと歩いてきて、リアの前で座る。

 「ほら、ここに座んなさいな。久しぶりに人と会えて、少し私は話がしたいんだ。」

その魔物―いや、少女と言ったほうがいいかもしれない―は、パンパンと手を叩き、リアの前に机とお茶とおやつを出した。

「え、私ここに来てあなたを倒しに来たんだけど…」

 「ああ、残念だけど私は戦う気がない。ここで話だけしたらこの先通すから。」

そう言って、少女はふぅ、と息を吐いた。


 「さて、急で悪いんやけど、このダンジョンは今なんていう名前になっとるん?」


「え、えーと、確か『試練の箱』って言ってました。」


そうリアが答えると、少女は「まじか!」と言った。


 「実はな、お前さんが来る前に何人かこのダンジョンに来た人がいたんやけど、その人たちは私の誘いに乗ってくれへんくて、ダンジョンの名前がわからんかったのよ。」


そう言って少女はお茶を一口啜る。


 「んでな、そのもう少し前に来た冒険者は私の話に乗ってくれたんよ。その時聞いたダンジョンの名前は確か、『ヴェルティン峠の大空洞』っていう名前だったんよ。」


「ヴェルデン峠の大空洞って、確か20年前に閉鎖されて、今や跡も何もないって聞きますけど…」


その事実をリアは少女に伝える。


 「やっぱり、か。もう一つ聞きたいんやけど、ダンジョンの入口って外にあるん?」


「いえ、魔法都市ウィマステラっていう都市の大魔法学校の試練として使われていますが…」


そう言うと、少女は頭に手を当てて、ため息をついた。


 「だから『試練の箱』か。ちなみにこのダンジョンはどうやった?本当に正直に答えてほしい。」


「正直に言うなら、魔物が少ないのと、魔物たちが弱すぎるっていうのはあるかも…」


 「やっぱり、君もそう思うか。」


「え、やっぱり何か問題があってあんなに簡単に――」


 「そうや。単純に言えばこのダンジョンは衰退してる。」


「衰退…?」


 「そう。あんた、ポルって知ってる?」


「聞いたことない…ポルって何?」


 「ポルっていうのは『生命の力』のこと。生命の力は知ってるでしょ?」


「うん。」


 「うーんと、それでな、ダンジョンにも生命の力(ポル)っていうものがあって、それがもう衰退してるんよ。」


そう言って少女は手を鳴らすと、上から青い、結晶のようなものが下りてきた。


 「これはこのダンジョンの『生命の力(ポル)』。本当はこの二倍ぐらいの大きさはあったんやけど、もうだいぶ衰退してきてる。あと5年くらいでこのダンジョンは消え去るんや。」


そう言って、このダンジョンのポルを見つめる。


「ちなみに、このダンジョンが消え去ると、あなたは――」


 「私も塵になって消える。人間も、魔物も、すべての生物に永遠の命はない。どんなふうに生きても、どれだけ生き返っても、いつかは尽きるものなんや。」



「―――」


 「でも、一つだけ君にお願いしたいことがあるんやけど、ええ?」


そう、リアに聞く。


「私ができることならなんでも言って!」


 「それじゃ私が、ダンジョンがなくなったら、私をあんたの配下にしてくれんか?」


「え、わ、私の?」


 「そう。私は将来、あんたがどう生きていくか興味があるし、私も、もっと冒険したい。」


少女はポルを見て、指を指す。


 「このポルの役目が終われば私の魂は生まれ変わろうとする。そしたら私はあんたの配下…いや、聖霊になる!」


 「だから、私を迎え入れられるよう、そして私を使いこなせるよう、準備しといてよ!」


そう言って笑顔でリアを見た。


「わかった!私の聖霊になったら、いっぱい、いろんなところ周ろうね!」


 「ああ!」


そうして、少女は奥にある扉を開ける。


「それじゃあ、さようなら!また今度!」

 「うん!もちろん!」


手を振って扉を超えようとする。

「あ、そうだ!あなたの名前、何?私はリア!リア・カップ!」

 「あたし?あたしはレーダ・ミルコッテ!また会おうな!リア!」


そうして二人は、別れた。


          ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「剣を使う者は、魔力があれば魔剣を作ることもできる。」

学校の剣術クラスでは、剣を魔剣に変える授業をやっていた。

教師は、ヴァルディ・ロールだ。

「そして、魔剣を使っ…」

突然、ヴァルディ・ロールは口が止まった。

 「せ、先生?どうかしたんですか…?」

「み、みなさん。私達は少しここを離れます。今説明したところを覚えてください。」

そう言ってヴァルディは走り出す。

そして、一つのクラスの扉を開け、叫ぶ。

「レテリア先生!すぐに来てください!」

 「え、ヴァルディ先生、どうかしたんですか?」

「採用試験中のリアさんが、あの二週間かかるダンジョンをたった5日で攻略したわ…!」


          ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


リアが最下層の扉をくぐり抜けると、そこは『試練の箱』の入口とは違う、広い空間だった。

入る時とは違い、誰もいない。

すると、ぜぇはぁと息を立てて走ってきた二人の教師がいた。

ヴァルディ先生とレテリア先生だ。

 「あなた、この試練の箱をクリアしたのね?」

「はい。」

そうリアが言うと、ヴァルディ先生はカードのようなものを出して、振った。

すると空中に画面が表示された。


――リア・カップ――

討伐ポイント:192pt

攻略ポイント:100pt

死亡ポイント:0pt

合計ポイント:292pt


 「あなた、もしかしてすべての魔物を狩ったの…?」

「はい。一応、すべての魔物を狩りましたが…」


全ての魔物を狩り、平均クリア時間より一週間以上も早い。

これは、もう合格と言わざるを得ない。

 「――リア・カップ。第一試験、剣術試験、合格よ。」

そう、ヴァルディは、リアに告げたのであった。

第一試験 剣術『試練の箱』合格。

次回 第42話 頼ってばかり

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