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聖女が始める新生活!  作者: NekoMouhu
第四章 無限軌道
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第38話 採用試験 ―試練の箱 前編―

ウィマステラに到着し、馬車乗り場につくと、そこには大魔法学校の秘書っぽい人がいた。

 「おはようございます。リアさん。」

「おはようございます。六か月間よろしくお願いします!」

 「皆さん、お揃いですか?」

「ええ。全員揃っています。」

 「それでは早速、皆さんのシェアハウスにご案内いたします。」

秘書は特になんの説明もなく、早々とシェアハウスまで案内した。

 「ここが皆さんのシェアハウスです。」

「「え、えー?!」」

秘書が案内したシェアハウスは、リア達の住むシェアハウスよりも大きいものだった。

 「私はここを案内しなさいと校長に言われただけですので、ここで失礼します。」

そう言って、秘書は早々に帰っていった。


中はとても広く、一人一人の寝室がしっかりとあり、キッチンは広く、テレビなどもあった。

リア達はそれぞれの部屋を決め、掃除をし、荷物を運んだ。

「とりあえず、これでみんなやることは終わったかな?」

 「これでオッケーだと思うのよ。」

 「そういえば、あの上についてるよくわからない塊みたいなのは何だ?」

そう言ってレッドが指を指したのは壁の端の天井についている小さな機械だった。

「あれは、魔素警報器と言って、家に何か異常が起こったり、魔力災害の前兆が来たら、音で教えてくれる装置らしいの。」

 「確か、異常によって音が異なる筈なのよ。」

「そうそう。火事はピーッ、ピーッで、魔力災害がピピピピピピ!だったっけ?」

 「質問ばっかりで悪いけど、魔力災害ってなんだ?」

「魔力災害はね…」

――魔力災害。

魔力災害は魔素濃度が多い地域で発生する自然災害の一種。

何かしらの現象で魔素濃度が四十パーセントを超え、魔素同士が摩擦し、摩擦する力によって竜巻のようなものが発生する。

そして、その竜巻の先は、異世界につながっていると言われている。

実際、魔力災害によって吸い込まれてしまった人は今も行方不明である。

頑丈な建物の中に入れば、吸い込まれることはないのだとか。


――ピンポーン

シェアハウスのインターホンが鳴り、リアはシイアを連れて外に出る。

「はーい」

リアが扉を開けるとそこには、一人の女性が立っていた。

 「は、初めまして!私、大魔法学校の教師のレテリア・セーラと申しますぅ…!」

焦って何かを探しながら、レテリアは挨拶した。

「初めまして…あの、何をお探して…?」

 「え、あ、いや、ちょっと…名刺を失くしちゃって…すみません…」

ほぼ涙目でレテリアはリアの方を見た。

「だ、大丈夫です。とりあえず、ご案内しますね。」

 「す、すいません…」

なんだか、大人げないような気もするが、これでも大魔法学校の教師だ。


「どのようなご用件ですか?」

 「えーっと、そう!リアさんの採用試験の説明をしようと思ってきました!」

そう言って、レテリアは資料のようなものを出した。

そして、レテリアは眼鏡をかけ、先生っぽい感じを引き立てた。

 「それじゃあ、説明していきます。」

「はい。」

 「聞いているかもしれませんが、採用試験は三つに分かれています。剣術、魔法、能力(スキル)の三つです。剣術は剣を使っての試験です。魔法は魔法を使っての試験です。能力(スキル)の試験ですが、大半の人が能力(スキル)を持っていない為、一度スキルボールを渡します。スキルは知識さえあればできるものなので、全員、統一して能力(スキル)が使えるかテストを行います。」

そう言って、資料のページをめくった。

 「これからは、剣術の試験についての説明をします。剣術の試験は、『試練の箱』という大魔法学校が作成した試験施設を使って剣術の試験を行います。剣を持参していただいても、貸出の剣を使っていただいても、構いません。しかし、持参する場合は剣のランクをお確かめください。Aランク以上の剣は使えません。」

そう言って、また資料のページをめくった。

 「試練の箱は通常、攻略に一週間ほどかかります。この試験では攻略ポイント、討伐ポイント、死亡ポイントの三つポイントがあります。攻略ポイントは攻略までの時間をポイントにしたものです。通常、試練の箱は攻略に一週間程度かかります。そのため、一週間より早ければポイントは高く、一週間より遅ければ、ポイントは低くなります。そして討伐ポイントは試練の箱に潜む魔物の討伐によるポイントです。魔物のランクや種類などによってポイントが異なります。死亡ポイントは一回死ぬごとに十ポイントたまります。これは攻略後、合計ポイントから差し引かれるものです。」

資料の図を指さしながら、説明する。

「つまり、討伐せずに突っ切ってきても、討伐ポイントがないからダメって言うことですか。」

 「は、はい。あとは、試練の箱内では、水不足になることや、お腹が減ることはありません。以上ですが…何か質問はありますか…?」

レテリアは、面倒くさそうにそう聞いた。

「いえ、ありません。」

 「そ、そうですか!(良かったぁ!)それでは、試験は明日からになります!」

そう言って、レテリアは上機嫌で外に出ていった。


          ○ ○ ○


 「それでは、教員採用試験を開始いたします。」

一人の女性がそう言って、リアの前にある門を開ける。

 「それではこれより第一試験『試練の箱』を開始いたします。」

そう言って、リアの方へと歩み寄ってくる。

 「あなたが無事、第一試験を突破できることをお祈り申し上げます。」

周りの教師もリアの方を向き、一礼する。

こんなに大袈裟にやるものなのだろうか。

リアは、一瞬そう思ったのだが、気持ちを切り替え、試練の箱の門へと進む。

教師の中には昨日来た、レテリアさんもいた。


さて、試練の箱へ――


試練の箱で、一体何が待ち受けているのか――?

次回 第39話 採用試験 ―試練の箱 中編―

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