第30話 笑う襲撃者
一方、レッド達は…
「もしかして、魔獣避けを爆破しやがったのか。それならいつ来ていてもおかしくない…!」
そう考えていると、天から笑い声が聞こえてきた。
レッド達が上を見ると、そこには知らない、一人の女性が笑っていた。
「誰だ?お前は!」
「…あ!あれは僕たちを襲った奴のリーダーみたいなやつだ――」
「…こんな最悪のタイミングで襲ってくるなんて…ついてないのよ。」
「まぁ、でも俺らも前よりかはまともに戦えるようになったんじゃないか?」
「…まぁ、そう言われればそうだと思うのよ。リアに頼ってばかりじゃいられないのよ。」
そう言って、レッド、クラ、ジェル、ロディは笑っている一人の女性を見る。
「僕はすぐに兄弟を連れてくるから、少しだけ時間を稼いで!」
そう言って、ロディはどこかへと消えていった。
「さてさて、お話は終わったぁ?それにしても魔獣避けが破壊されたって、気づくの遅すぎるでしょ!」
そう言って、三人を嘲笑う。
三人は、構えをとっていつでも攻撃できる準備をする。
すると、笑っていた襲撃者のリーダーは空に浮くのをやめて、下へと降りてきた。
「まずは自己紹介しないとね。まぁ、どうせあなた達は私が殺すから、しても意味ないけど!私は魔女復活団体『笑』の情。短い間だけど、よろしく!」
そう、『笑』の情は笑顔で言って見せる。これでも魔女復活団体だ。
「魔女復活団体…決して油断できる相手ではないのよ…!」
「ああ、わかってる。リアがいれば安心できたんだが、流石に今回は一ミリも油断できない…!」
「そんな考えても君たちが勝てる勝算はないよ~!大人しく諦めたらぁ?アハハ!」
そう言って、レッドのもとへ瞬間移動し、腹を一発殴る。
なぜか、たった一発殴られただけなのに、レッドは瀕死状態であった。
「ほぉらぁ!やっぱり弱い!大人しくそこで丸まっとけばいいのにぃ!」
「回復する…!回復!」
ジェルの回復魔法により、少しの痛みは解消されたが、やはり完治はできない。
「私の回復魔法…弱いのかな…」
確かこんなことを、戦闘後にも言ったような気がする。
――「私の回復魔法、弱いのかな」
そう言って、ジェルはリアに強化回復のやり方を教えてもらった。
しかし、回復の応用だからと言ってそう簡単にできるわけでもなく、教えてもらったは良いものの、一度も使えていない。
でも、ジェルは練習し続けた。『弱い自分の弱い回復魔法』は嫌いだから。
しかし、一度も成功したことはなかった。何がいけないんだろう、そう考える。
その問いの答えは、未だに出ていない。
だけれど、仲間が苦しんでいるなら、私は使える筈だと、そんな自信が湧いてくるのはなぜだろうか。
「…今なら、できる筈…!強化回復!」
ジェルの勘は――いや、自信は確かなものだったのかもしれない。
ジェルの強化回復によって、レッドを完全に治すことができた。
「ありがとう、ジェル!これでまだ戦える――!」
「皆さん!連れてきましたよー!!」
そう言って、向かってきたのは、ロディとその兄弟たちだった。
「少しは時間、稼げたのよ。とりあえず体制を整えるのよ。」
「ああ、ありがとう。これで少しはまともに戦えるかな…」
「あなた達は私がいなくても十分じゃない?私の可愛い魔獣さん、出ておいで~」
そう言って『笑』の情が呼び出したのは、大量の魔獣たちだった。
「うげぇ!この量をこの人数で倒すのは無理があるぞ?」
そう言ったのは、ロディの兄、テディだった。
しかし、レッド、クラ、ジェルにとって魔獣はそう大した問題ではなかった。
「みんな~お待たせ!連れてきたよ!」
そう言って、空から声がした。
そこには、リアが手なずけたドラゴンに乗って飛んでいる、ギアとグラの姿があった。
「これは挨拶変わりだ!受け取れ!」
グラはそう言って、ドラゴンに指示を出す。
すると、ドラゴンは勢いよく空気を吸い、口から炎之吐息を吐かせた。
炎之吐息は魔獣のほぼすべてを覆いつくし、炎と煙が消えたころには、魔獣の姿は跡形もなかった。
「な、なによ?アイツ…で、でも大丈夫!魔獣がやられたくらいで私はなんともならないわ!馬鹿ね!」
そう言って、『笑』の情は浮遊し、ドラゴンと同じ高度に立つ。
「飼――」
そう言うと、ドラゴンは急に暴れまわり、二人を空高くから落とす。
「アハハハハ!これであいつらは死亡、っと!弱すぎるわぁ!」
そう言って『笑』の情はまた地上に戻っていった。
「さぁ、これで二人は死んだわ!さて、君たちはどんな死に方をするのかなぁ?」
そう言って、『笑』の情は、レッド達を笑顔で見た。
そして、レッド達は一斉に『笑』の情へと飛び掛かる。
クラは魔法をため込み、隙ができた瞬間、魔法をぶつけようとしていた。
しかし、『笑」の情の体力も、速度も、衰えない。
レッド達の体力がなくなってきて、一度力を抜けば、戦えないだろう。
クラも、魔法は打ち込んでいるが、避けられたりするせいで、マナが減っている。
もう、限界が近づいていた。
「…やっぱり、リアがいないと俺らはダメなのか――」
「どうしたの?」
急に、誰かから、声をかけられる。
振り向くとそこにはシイアが立っていた。
「シ、シイア!お前は戻れ!お前は絶対守らなきゃいけないんだよ!」
『笑』の情はその言葉を聞いて、ニヤリと笑う。
「シイア、ね。その子を私が殺したら、どんなに面白いんだろう!やってみなきゃわからないよね!」
そう言って、『笑』の情はシイアに向かって一直線に突っ込んでいく。
「シイア、避けろ――!」
しかし、シイアは一切動かず、ポケットから一つの板を取り出した。
「第6階帝魔法――時空創滅超克!」
その瞬間、『笑』の情とシイア達との間の空間に、裂け目ができたような感覚がした。
『笑』の情は、シイア達から見れば、完全に停止している状態である。
「え…シイアって魔法使えたの?」
「私はこの板を使って魔法を起こしただけ。時間稼ぎに使ったらいいって、リアがくれた!」
そう言って自慢げに話す。
「やっぱり、リアは何か用意してあると思ったけど…グッドタイミングだったな、シイア。」
シイアはこの魔法が10分経つと解除されることを話して避難場所に帰っていった。
「これでとりあえず体力の回復ができるのよ。」
「助かったな。それにしてもリア、いつになったら帰ってくるんだろう――」
こうして約10分間、『笑』の情と戦うための回復を終わらせ、体制を直すことができた。
次回 第31話 聖女の救助




