表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女が始める新生活!  作者: NekoMouhu
第三章 ヴェルデンでの再会
29/50

第29話 ■■

リアに、ミシアの剣が振り下ろされたからである。

リアは目を閉じ、死を覚悟した。しかし、なかなか剣は当たらない。

リアは目を開けて目の前を見る。

「え―――」

「あなた、私の格好で私の子供を襲うなんて。許せないわね。」

リアの目には二人の『ミシア・カップ』が映っていた。


リアを庇った母は、もう一人の母を洞窟の遥か奥までぶっ飛ばした。

 「リア、大丈夫?」

「――え、あ、うん。大丈夫。」

リアの状態を心配してから、喋れる状態になったと判断し、また喋り始めた。

「久しぶり、リア。こんな形で会うことになるとは思ってなかったけど、しっかり生きていてよかった。」

そう、リアに言った。

「あそこの魔晶石を守ってるのは偽物。私はあんなところ守るなんて仕事しないわよ。」

「え…じゃあ、本当の『お母さん』?」

「もちろん。」

そう言ってお母さんは剣を偽物の方に向ける。


「さて、随分とまぁ、私の子供を傷つけてくれたじゃないの。どうしてくれるの?」

 「はぁ…まさかご本人登場するとは思わなんだ。俺はこの魔晶石の守護をする者だ。」

「なんで魔晶石取らせてくれないの?あれぐらい取らせてあげたって、いいじゃない。」

 「ふん。俺はな、この魔晶石を守るため居るんだ。ちなみに良いことを教えてやる。戦う人が『強い』『勝てない』と思ってる人に俺は変わる。だから、お前も軽口叩いてる暇はないと思うけど?」

「そう?私の子で苦戦してたんだから、大丈夫そうだけど…」


そう言って、母はリアの方を向く。

「リアはちょっと休憩しておいて。人の戦闘を見て、学ぶのも大事なことよ。」

そう言われて、リアはコク、と頷く。

正直、本当にあの女性が自分の母なのか、半信半疑の状態であった。

さっきまで偽物の母だったと考えると、あっちも偽物かもしれない、と思ってしまう。

「…これがシイアの言ってた『人を信じれない』って気持ちなのかな。」

しかし、もし自分の母が味方なら――そう思うと心強かった。


 「俺はお前より強い者になれる。それを忘れるなよ。」

そう言って偽物の母は、ゴーレムのような形に変形してから、また変形を始める。

しかし、その変形は終わることはなかった。

 「…はぁ?お前、も、もしかして――お前より強い奴、いないの…?」

それを聞いて、リアは驚いた。

リアを守ってくれた、自分の『母』がこの世の中で『最強』ということである。


「だから言ったじゃない。私の子で苦戦してたんだから、大丈夫そうだって…」

 「それとこれは話が違うだろ!お前の強さが異常なんだよ!」


そうは言うものの、偽物の母にはまだ、策があった。

 「でも、お前が最強なら、自分自身と戦わせたらいいんだろ?」

そう言って、偽物の『ミシア・カップ』になった。

 「最強のお前と最強の俺、どちらが強いのか、見ものだな。」

「なるほど。確かにそれは軽口を叩いてる暇ぐらいしかなさそうね。」

そう言えば、こんな人だった、とリアは思い出す。

母は昔から何でも舐めてかかるタイプだった。しかし、舐めてかかっても大丈夫な人間だった。

大体舐めてかかっていく人ほど、返り討ちにされて終わるタイプなのだが、母だけは特殊だ。

そのテンプレートともいわれるパターンを覆してくるのだ。


偽物のミシアは剣を持って、母へと突っ込んでいき、母を斬った。

しかしその斬った傷は何もなかったかのように残らなかった。

逆に、リアの母を斬ったはずの偽物に斬った傷がついていた。

 「な…なぜだ?俺は確かにお前を斬った筈だ…なのに何で斬られてないんだ…!」

「あなたはリアの記憶をもとに私を演じている。でもね、リアとは何年も会っていなかったの。だから、リアには知らない技術だったのかもしれないわ。」

 「ま、まさか俺の変形の能力の仕組みがわかっていたというのか…!」

「わかってるも何も…普通に考えればそれぐらいしかないと思うんだけど…」

リアの母――ミシアには、本当に軽口を叩く暇があった。

なぜなら、既に勝敗は確定しているから。

しかし、リアの母は、とどめを刺そうとしなかった。


リアの母は、リアに近づいていき、リアの手を取った。

 「私が最後に倒しても意味がないでしょ?やるんだったら自分の手でやりなさい。あれは偽物。本当の私はここに居る。躊躇なく殺ればいいわ。あなたなら、出来る――。」

その言葉には、母の温かみがあった。

「わかった。頑張る…!」

 「ええ。頑張って。あなたは私の子なんだから、もっと強い筈よ。」

そう言われてリアは魔法の杖を取り出す。そして詠唱の準備を始める

通常、魔法の杖は使用魔力をできるだけ減らして、最大限の魔法を放つものである。

しかしながら、リアの魔法の杖は通常の物とは、違う。

リアが魔法の杖を使うということは決して、『甘え』たわけではなかった。


リアの魔法の杖は――


「万物の理を司る、深遠なる摂理よ。我が前に立つ、形あるもの、形なきもの、そのすべてを──」


――魔法を進化させるモノなのだ。


「存在を構成する微塵の原子、魂を繋ぎし根源の鎖。今、この刻、その結びつきを断ち、在るべき姿を崩壊せしめん!」


魔法の杖は通常見ることもできないほどに眩しく光り輝く。


「魂魄の塵と化し、虚空へ散れ!第8階帝魔法、魂魄原子霧散アトミック・ソウル!」


魔法の杖の先から、巨大な閃光が飛び出し、偽物の母を襲う。

逃げ場はなく、偽物の母は、その閃光に包まれるしか、道はなかった。

偽物の母――万事之石を守る者は、閃光に包まれ、ボロボロと崩壊し、やがて消え去った。


そして、ミシアは、リアの方へと向かい、リアに抱き着く。

 「討伐、お疲れ様。そして、お久しぶり――」

「お母さん―――助けてくれて、ありがとう――」


  ―――  第29話 「再会」  ―――

次回 第30話 笑う襲撃者

内容がタイトルでわかりそうな場合や、隠した方がいいな~と個人的に思ったらタイトルは■で隠します。

一応、最後に表記します。(忘れてたら教えてください…)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ