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聖女が始める新生活!  作者: NekoMouhu
第三章 ヴェルデンでの再会
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第26話 猫耳都市ヴェルデン

――猫耳族

猫耳族とは、この世界ではとても珍しい種族で、あまりにも数が少ないために世界種族保護機関(WSPO)は、種族保護対象に設定し、すべての国において、猫耳族の殺害や、奴隷化を禁止した。

その結果、猫耳族の減少は停滞し、現在貿易などによって発展してきている。

もし、猫耳族を襲った者がどこかの国の者であれば、それ相応の罰が国に与えられる筈だ。

どの国も、猫耳族に手を出すなと命令しているはずだから、他国から来たわけではなさそうだ。

そうなると、冒険者か、あるいは謎の組織か。

冒険者が全員、しっかりしているかと聞かれれば、答えはNOだ。

冒険者の中には、クエスト掲示中の受付嬢のスカートの中を見る奴のような、まともじゃない奴もいる。

そう考えると、冒険者という可能性も否定はできない。

だが、ロディは人の姿をした魔獣を連れていたと話した。

能力持ちの、しかも魔族支配の能力なんて持っている人は数少ない。

冒険者一覧表みたいなものを以前見たが、魔獣支配を持っているのは、ギアしかいなかった。

謎の組織…例えば最近会った奴で言えば、「苦」の情が所属していた『魔女復活団体』だ。

魔女を復活させようとしているのだから、復活させるために手段は選ばないだろう。


「今回の事件…魔女復活団体、あるいはそれ以外の怪しい団体に絞られそう…」

 「私も同じ考えなのよ。どこかの国が出動することは到底あり得ないのよ。」

 「僕以外にも『魔獣操作』の能力を持っている人がいるなんて…」

「冒険者で『魔獣操作』を持つ人はギア一人しか見たことないわ。」

 「それなら、魔女復活団体、あるいはその他の謎の組織の可能性があるな。」

「もしかしたら、また魔女復活団体と戦いになるかもしれないわ。」

そんなことを話している間に馬車は猫耳都市への入口、ヴェルデンゲートについていた。


ヴェルデンの森にある、猫耳都市ヴェルデン。

ヴェルデンの森への入口にあるゲートの向こう側を見る。

道路には血の跡があり、戦争をしたすぐ後なのだと分かる。

「特にこの森に魔獣が潜んでいる感じは無いけれど…あっちの方向にある湖にいる竜は何?」

 「ああ、あの竜は水竜だよ。戦争の時も一緒に戦ってくれるんだ。」

 「僕たちには何にも見えないけど…もしかして能力持ち…?」

そうグラがリアに問う。

「私?私は魔力感知と能力感知と、強化変身と能力付与…の四つだった気がする。」

 「ちょ、そんなに能力持ってんの?てかそんな奴に僕たち喧嘩売ってたの?」

リアはそう聞かれて、うん、と頷く。


 「もうすぐ、猫耳都市ヴェルデンに到着します。」

そうして、都市へのゲートをくぐった。


しかし、その先に待っていたのは、決して良いものではなかった。

地面に置かれ、治療されている、または治療待ちの人たちが、いたのである。

 「おぉ、戻ったか。ロディよ。」

「うん。それより、みんなの調子はどう?」

 「なかなか治療が進まん。ところでそちらの方々は?」

「私達は、冒険者。ロディに頼まれて、応援に来たのだけれど…」

 「それは失礼いたしました。私はこの村の村長、フィナ・キャトリアじゃ。フィナ爺と呼んでおくれ。」

「あまり触れてほしくないかもしれないけれど、聞かせて。今の現状を…」

 「いいじゃろう。客室へ案内しよう。」


客室でフィナ爺から今の状況を教えてもらった。

まず、回復魔法でも治らないケガがあり、戦力が不足していること。

後日にまた襲撃が来るということ。医療環境が悪いということ。

建物が崩壊しかけ、危険な状態になっているということ。

 「襲ってきたやつはどんな奴だったんだ?」

 「襲ってきたのは一人の女性率いる魔獣軍団じゃ。その女は…確かマナを感じる宝石のようなものを首からかけていたのう。」


――宝石…確か、「苦」の情も首から宝石のようなものをぶら下げていた。

魔力感知をフルパワーで使っていたため、思い出せば確かに宝石にマナがあった。

一瞬、気になったが、戦闘には関係ないと思い、放っておいたのだ。

もしその宝石が、『魔女復活団体』共通の物だとしたら、今回襲ってきたのも、魔女復活団体で間違いない。

そうすると、また手ごわい相手が来る可能性がある。


「襲ってきた奴は多分、魔女復活団体だと思うの。そう考えれば厄介なケガも説明がつきそうでしょ?」

 「確かに、魔女復活団体の可能性は十分あるな。そう考えると、準備が色々必要だ。」

「そう考えるととりあえず、ケガをしてる人たちの治療が優先だね。ジェル、一度回復魔法をかけてみて。」

 「わかった。回復(キュア)――」

ジェルの回復魔法は通常の魔法より強化されているはずだ。

しかし、それでも傷は治らない。

「私も一回、やってみる…強化回復(エンチャンス・キュア)!」

回復の応用だが、これでも傷は治らない。


「あ、そういえばあっちの洞窟に魔法では治せない傷を治す治療薬の材料がある、と旧記に書かれていたような気がする…!」

 「もしかして、万事之石か。あそこは…危険すぎる!」

 「そういうものこそ、俺らの出番じゃない?」

そう言ったのはレッドだった。

確かに、リア達は猫耳族を助けるために、ここに来ているのである。

それならこういう時こそ、出番なんじゃないかとレッドが言う。

「それならレッド、一人で行ってくる?多分大丈夫だと思うけど。」

レッドはリアにそう言われ、少し戸惑う。

 「え、いや…やっぱりそんな危険ならリアが行ったほうがいいんじゃない…?」

 「逃げたのよ。元々最初からリアに任せる気満々だったのよ。」

「しょうがないわ。私が行ってくる。その代わり、みんなはしっかり外を見張っておいてね。」

 「わかったのよ。私たちに任せるのよ。」

そうして、猫耳都市での一日が終わった。

その日の夜の一室でリアとシイアは話をしていた。

 「ねぇ、回復薬の調達、大丈夫?」

「うん、大丈夫。一緒に調達しに行きたい?」

 「行きたい…けど、私、足手まといになっちゃいそうだからやめとく。」

「そう?別に足でまといになんかなってないよ、シイア。でも今回は行かない方がいいかもしれないの。」

 「なんで?」

「魔法で治せないケガを治すことのできる薬の材料があるなら、それを守る何かは居るはず。そう考えるとシイアが危険な目に会っちゃう。」

 「わかった。良い子で待ってるから、早く帰ってきてね?」

「うん。」

そう言ってリアとシイアは約束する。

こうして、リアとシイアは眠りについたのであった。

WSPOはWorld Species protection Organizationの略です。

次回 第27話 石の門番

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