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聖女が始める新生活!  作者: NekoMouhu
第二章 浮遊都市の騒動
23/50

第23話 死に戻り

「苦」の情との決着を終えて――

「さようなら。第8階帝魔法、改・心核真破殲滅リ・エクスティンクション!」

二つの魔法が同時に発動し、「苦」の情を襲う。

「苦」の情は、だんだんと体が崩壊していき、空へと飛んでいく。

そして、「苦」の情は跡形もなく、魂ごと、崩壊して消え去った。


「はぁ、ようやく終わった!」

 「お疲れ様なのよ、リア。」

 「お疲れ、リア。」

こうしてリアの活躍により、マグナ王国とフラスカイとの対決は終わった。

「あのマグナ王が正気に戻っているか確認しに行こう、シイア。」

 「私も気になってた。「苦」の情は消えたから、大丈夫だと思う。」

そうして二人は、マグナ王を一時的に封印した場所まで行き、封印を解いた。

 「はぁ、はぁ、はぁ、助けてくれて感謝する…」

「もうあなたは私たちに敵意はありませんね?」

リアは一応、マグナ王に聞いてみる。

 「敵意は一切ない。操られた身ながらも無礼を詫びる。本当に申し訳なかった。」

そう言ってマグナ王はリアに頭を下げる。

「大丈夫だよ。あ、そうそう。解放されて聞くのも悪いと思うけど、一つ、聞かせて。操られているときの記憶はある?」

 「…一応、記憶はある。」

記憶があるなら、今回の事件の真相がわかるかもしれない、そう思った。

「それじゃあ、王城に行きましょう。今回の戦争の片づけをしないとね。」

そして、リア達は、王城へと歩き出した。


          ◆ ◆ ◆


 「なるほど。敵意はなく、「苦」の情に操られていただけだ…と。」

「ええ、そうみたい。何があったか話してくれる?」

 「ああ。」

返事をしてから少しだけだまり、そして話し出した。

 「マグナ王国は、通常通り幸せな暮らしを築いていた。しかし、ある日、一通の手紙が王城に届いたのだ。黒い、不気味な手紙がな。そこには『招待してください』としか書かれていなかった。名前は…なぜか思い出せない。それで、国民に被害が出るかもしれないと思ってその手紙を燃やした。そうしたら、火の中から、あの女が現れたのだ。そして、女は『招待願いを燃やすなんて、酷い。こんな最悪な王国なんて潰してやる。』と、言って私に触れ、そこから私は支配されたのだ。そこからどうなったかは、詳しくは知らない…マグナ国の生きている者に問うてみるといいだろう。」

「ありがとう。だから、マグナ王には最初から敵意があったわけじゃないのよね?」

 「ああ、本当にな。」

 「うん。嘘ついてる感じは伝わらない。信じてもいいと思う。」

結局、マグナ王の始末については、賠償金の支払いのみとなった。

そして、リアが気づいていた真実を、ミラフスは話すことになる。

 「ミラフス、もう隠さなくても大丈夫。」

「わかった。ベテルギウス四人を招待し、護衛をさせ、最終的に戦争まで参加させた。元々、護衛だけだったのに、申し訳ない。護衛をするとき、何か違和感に気づかなかったか?」

 「違和感…俺は何も感じなかったけどな…」

 「席が最初から四つ空いていたのと、その席がシイアを囲むような場所になっていたところかな?」

「そう。そして、私は7日後、つまり今日に戦争が行われることを知っていた。」

 「ということは、未来予知能力でもあるのか?」

「少し違う。私は…私は、死に戻りをしてようやくここまでたどり着いたのだ。」

ミラフスは、そう語る。

ミラフス王は最初、シイア姫を奪われ、誰かに殺され死亡。

二回目は、腕の良い冒険者を護衛につかせたが、冒険者は全滅し、シイア姫を奪われ、誰かに殺され死亡。

三回目は、他国から腕の良い冒険者を護衛につかせ、冒険者は生き残ったものの、シイアは奪われ、誰かに殺されて死亡。

四回目は、ベテルギウス四人を呼び、護衛を成功させたものの、戦争前に帰国させてしまい、戦争で死亡。

そして今回、帰国前に呼び止め、戦争に参加してもらい、生き残った。というわけらしい。


 「そ、そんなこと聞いたことないのよ…!死に戻りなんて…」

「私もこんな能力が自分にあるとは思っていなかった。死んだ直後、戻っていることに気が付いたのだ。」

そう言って、ミラフスは立ち上がり、ベテルギウス四人に向きなおす。

「本当に、感謝する。」

こうして、浮遊都市フラスカイの大騒動は幕を閉じた。


          ◇ ◇ ◇


リアはリア達の国王―セフィア王―から頼まれた友好条約を結び、帰りの支度をした。

「そういえば、シイアの家具とかも買ってあげないとね。」

 「一年間、こっちで預かるんだろ?それなら俺らの拠点も必要じゃないか?」

「そうね。それじゃ、私たちの拠点を作ろうよ!」

…とは言ったものの、家を建てるお金もないし、方法もない。

 「それなら、私が今回の報酬として君たちの拠点を作ってやろう。セフィア王とも話がしたいしな。」

そう言ったのはミラフス王だった。

 「この国に統制者がいなくなると、国民が困るのよ。そこはどうなのよ?」

「それについては、大丈夫だと思う。この国は民主制だからね。」

 「そうだな。私はこの国ではフラスカイの象徴みたいなものだからな。」

結局、ミラフス王は一緒に、リア達の故郷「セフィア王国」へと向かったのであった。


          ◇ ◇ ◇


リア達は、セフィア城の会談室で、ミラフスと話をしていた。

 「今回の報酬はパーティ銀行に国際通貨を入れてある。金額は5万クオだ。」

「ご、5万クオ?そんなにもらっていいんですか?!」

5万クオは、セフィア通貨(100円=5フィア)で換算すると、1億フィアとなる。

1クオがおよそ2000フィアになるので、大金である。

それに加え、ベテルギウスの拠点まで作ってもらえるらしい。

ミラフス王が言うには、今後メンバーが増えるかもしれないから、10人で使用可能なシェアハウスにするらしい。

 「それぐらいの働きはしてくれた。姫の護衛、犯罪者の始末、戦争の鎮圧。これぐらいの報酬は出て当然だ。なんなら少ないくらいかもしれないがな!」


リア達はその後、口座を見ると、国際通貨がしっかり5万クオ入っていた。

ミラフス王の優しさなのかもしれないが、国際通貨はフィア通貨とは違い、どの国でも使うことができる世界共通の通貨、単位である。だから、ベテルギウスが他の国を援助したりする際、使えるようにわざわざ国際通貨で入れておいてくれたのだろう。

リアはミラフス王に感謝する。

さて、聖女―リアにはどんな新生活が待っているのだろうか。

そんなワクワクした気持ちがリアにはある。

新しいシェアハウス、初めての大量収入。リアの生活をまた新しく変えるものばかりだ。


リアはまた新しい生活を始める一歩を踏み出していった。

「聖女が始める新生活!」第二章はこれにて終了です。

第三章もご期待ください!

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