第19話 戦争の始まり
戦いの始まりが、訪れる―――
7日間はすぐに終わり、戦争の時がやってくる。
「時刻は13時50分。あと10分でこのフラスカイに攻撃を仕掛けてくるはずだ。」
「みんな!攻撃準備!」
リアが兵全体に指示を出す。
「「イエッサ!」」
やがて時は流れ、鐘が鳴る。
鐘の音がゴーン、ゴーンと鳴り響く。
「西側、マグナ王国の兵とみられる集団が約一万ほど!」
「わかった。リア、君はシイアを連れて守ってやってくれ。」
「わかった。最悪の場合は、シイアを連れて戦うわ。それでも大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。だが、自分たちの命を最優先に考えてくれ。」
「はい!」
返事をして、リアはシイアを連れてレッド達のもとへ行く。
フラスカイの兵の中には剣聖の姿も見えた。そして一番初めに出会った兵士も。
そして、リアが合流した時、丁度、フラスカイの守門が破壊された。
そしてその兵の上には、椅子が飛んでいた。
その椅子に座っていた者こそ、マグナ王国の王だった。
「フラスカイの者共!我こそ、マグナ王国の国王、ケディ・マグナである。これからこの国を力づくで支配して見せようぞ。そして、メープル家の姫、シイア姫はもらっていく。」
マグナ国王の狙いはフラスカイの土地とシイア姫。
「ま、まさか…あの誘拐犯もマグナ国王の引き金…?」
「ほう。私の手配した手下をボコボコにしてくれた女か。その通りだ。私が仕向けた。」
「なぜ、この土地とシイア姫を狙うの?」
「簡単だ。私が欲しいから、ただそれだけだ。」
そう言ってケディ・マグナは、にやりと笑う。
「さぁ!我が兵たちよ!フラスカイを支配しろ!」
「「了解しました。我が主。」」
そう言って、マグナ兵が飛び掛かってくる。
「ちょ!いきなり多すぎない?」
「このままじゃ、人手が足りないよ!」
そんな声が兵の中から聞こえてくる。
「無慈悲だけど、兵は一度全滅させるしかないわね。」
「お前そんなことできるのか?強すぎるだろ。」
「まぁ、見てて。」
そう言ってリアは思いっきり飛ぶ。
「この剣、あんまり使いたくないけど、仕方ないよね。」
そう言って剣を抜き、すぐに剣をしまった。
その瞬間、フラスカイに血の雨が降った。
兵士がすべてリアによって斬られたのである。
「な、なにが起こったんだ?」
「俺はさっきまで兵と戦っていたはずなのに…」
「シイア、大丈夫?怖くない?」
「大丈夫。というか今のたった一瞬で斬ったの?」
一瞬で斬った、そういえば確かにそうなのだが、リアの感覚では違う。
「じゃあタネを見せてあげよう。」
そう言ってリアは能力を発動する。
「――時間遅延」
唱え終わると、世界が止まっているように見えた。
「時間停止の能力…?」
「違うよ。ちゃんと動いてるんだけど、1秒の動きが1分の動きに見えるんだ。」
原理は簡単。
時間を操っているように見えるが、そうではない。
自分の動きが早すぎるだけである。
自分の動きが早すぎて、周りが遅く見えてしまう。ただそれだけだ。
他人に能力の効果を付与するリアの能力によって、シイアもそれを体験している。
「シイア、ちょっとだけマナ、借りてもいい?」
「いいよ。私はうまく魔法、使えないから…」
シイアから了承を得ると、別の方向から向かってきている兵に手を向けた。
「――第5階帝魔法、絶界滅神黎明」
手の先に魔法陣が幾つも重なり、強力な光を放った。
手にどんどん光のエネルギーがたまり、漏れ出た光が、兵を突き刺す。
避けられない、無数の光の針が、マグナ兵を突き刺す。
「――第6階帝魔法、心核真破殲滅」
手にたまっていたエネルギーが一本の光となって兵に向かう。
その光は、兵の心臓を貫き、別方向からの兵は光によって消し去られた。
「リア、すごい!今の、私もやれるようになりたい!」
「シイアの体が治ったら、教えてあげるよ。シイアの魔力量なら使えると思う。」
「やったー!ありがとう!リア!」
二人は地面に降り、全員に兵士の全滅報告を行う。
「なぜだ!なぜだ、なぜだなぜだ、なぜだ!」
マグナ国王は頭を抱えて叫び始める。
「我にはあの力強いお方が付いているというのに、支配できぬとは!」
そう言って椅子の背中に頭を打ち付ける。
――「何をそんなにグダグダしているんだい?」
「こ、この声は…」
その声が聞こえた瞬間、誰もが息をのんだであろう。
気配もなく、ただ一人の女が王の後ろに現れていたからだ。
「兵士は全滅―。そこの少女が一人でよくやるものだ。それに比べて此方は…」
「す、すいません!」
「まぁよい。もうすぐ、復活するだろうからな。」
「ふ、復活?この兵士たちが?」
「ああ、そうだ。その兵は死なない。絶対に、だ。」
そう言って笑いながら、ふわりと浮遊する。
「私は魔女復活団体「苦」の情。君たちを今から存分に苦しませてあげる!」
「ま、魔女復活団体!魔女を復活させてこの世を崩壊に導こうとする団体なのよ!」
「それやべぇじゃん!すぐにあいつを止めなきゃ!」
こうしてフラスカイと「苦」の情との戦いが始まったのである。
次回 第20話 「苦」の情




