第17話 7日後の戦い
シイアを狙う誘拐犯との戦いは終わり、シイアは―――
誘拐犯が学校に潜入してから王城へ行き、後の対応はミラフス王に任せた。
リアを信じることができたからなのか、シイアはお父さんともしっかり喋るようになった。
あれから約3日。ここ数日は平和な暮らしが続いている。
「あれから、シイアの様子はどうですか?」
「だいぶ喋ってくれるようになって、だいぶ人間不信が治ったみたいだ。感謝するよ。」
「そうですか。それはよかったです。」
リアはまだ浮遊都市フラスカイに滞在している。勿論、他の三人も、だ。
それにはしっかりとしたわけがある。
「少し重要な案件があります。シイアに関してのことですが。」
「聞こう。なんだ?」
リアの表情が険しくなり、ミラフスはごくり、と息をのんだ。
「シイアは、このままだと死んでしまいます。」
リアが口に出したのは、シイアの、余命宣告だった。
◆ ◆ ◆
「なん、だと…」
「簡潔に話します。シイアのマナ排出を行う場所が壊れていて、このまま行けばマナが破裂して、シイアは死んでしまいます。」
リアは冷静に、簡潔に話した。ミラフスはもちろん、冷静には居られなかった。
「どうすれば、シイアは生きることができる?」
「私に提案があります。これを了承していただければ、大丈夫かと。」
「提案…とは?」
「シイアを一年間、私が引き取らせていただければ必ず、命は救いましょう。」
少しばかり沈黙が続いた。少し経った後、ようやくミラフスは口を開いた。
「わかった。その提案、呑もうではないか。」
そんな提案を呑んだ時だった。ミラフスは少しばかりぼーっとして、やがて頭を抱えた。
「ああ、あああああああ!苦しい!頭がぁ!首がぁ!」
リアはミラフスに駆け寄り、すぐに回復魔法をかける。そしてすぐ、ミラフスは意識を失った。
◇ ◇ ◇
「―様―――ミラフス様―――ミラフス様!」
ミラフスが目を覚ますと、ベッドの上だった。
リアが手当と、搬送をしてくれたらしい。
「ああ――今は…何日だ?」
「ミラフス様。今日は5日でございます。」
そうミラフスのメイド、セナ・ポーラが答えた。
「――やっぱり、か。」
ミラフスは意味不明なことを言い出し、立ち上がる。
「ミラフス様、無理をなさらないでください!」
「もう大丈夫だ。それより、ベテルギウス四人を早急に呼んでくれ。」
「…わかりました!」
そう言ってセナはベテルギウス四人を呼びに行った。
◆ ◆ ◆
「ミラフス、体調は、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。少し君たちにお願いしたい、いや依頼したいんだ。」
「俺たちにできることなら、何でも言ってください。」
そうレッドがミラフスに言う。
「実は、一週間後に激しい戦争が起きる。それに参加してもらいたい。」
「私達、本来なら明日出発する予定だけど―」
「戦争が終わるまで居てもらえないか?」
これは、国の間の関係をよくするためにも、必要なことだろう。
しかし、自分が勝手に決断してしまえば、国王も黙ってはいないだろう。
流石にベテルギウスに信頼があると言えども、個人の判断で国を動かすのは許されないだろう。
「それなら私達の国王とギルドマスターに参加要請を送っていただけませんか?」
「わかった。戦争参加要請を送り、四人が安心して戦えるようにしよう。」
「レッド達も、参加する?」
「俺はもちろん、参戦するよ。」
「私もなのよ。当然のことなのよ。」
「回復は、任せて。」
それを聞いて、リアはミラフス王のほうへ向きなおす。
「それでは、戦争が終わるまで、この国に残ります。」
「ありがとう!リア、レッド、クラ、ジェル!」
「きっちり報酬はいただくのよ。」
「今その話しなくて良くない?」
「報酬忘れられたら、たまったもんじゃないのよ。」
レッドとクラが言い合うが、リアとジェルは気にせず喋りつづけた。
「もちろん、報酬は出させてもらう。だから、よろしく頼む。」
「ええ。それで7日の間、何をしていればいいんですか?」
「シイアの護衛の続きと、訓練だ。剣聖を用意するから、強くなれ!」
「剣聖、ですか。俺は剣聖なんて見たこともないな。」
「剣聖の強さは十分わかるのよ。だけどリアと比べると、劣ってるのよ。」
「そんなことないよ。剣聖は剣を使う人から選抜された一番強い人だから。」
リアは自覚していないが、異常存在と言えるほど、リアは強い。
天災とも呼ばれる魔獣を一人で始末できるのは、異常なのだ。
確かに、剣聖も異常存在ではある。しかし、リアからは何か違うものを感じた。
「それじゃ、明日からよろしくな。」
そう言われて、四人は元気よく返事をし、三人は部屋を去っていった。
しかし、リアは部屋に残っていた。
「ミラフスさん。あなた、もしかして―――」
リアはミラフス王に問う。
答えはいたって簡単だった。
「ああ。そうだ―――」
たった一言、リアの言葉を肯定するたった一言が、ミラフスの口からこぼれた。
そして、次の日、剣聖との訓練が始まった。
「僕はカトス・トレア・レグミシア。よろしく。」
「今日からよろしくお願いします。あなたが剣聖カトス・トレアさんですね。」
「うん。でも僕にあんまり期待しないでほしいな…」
「よろしくなのよ。」
「私、回復役だけど…」
「回復術については私と一緒に新しく覚えようよ!」
「そうだな。じゃあ俺とクラとリアは剣の訓練、ジェルは回復術の勉強だな。」
「たまに、参戦、する。」
「そうね。魔法は使わないと何にもならないから、実践訓練も必要ね。」
こうしてベテルギウス四人の訓練が始まるのであった。
次回 第18話 剣聖の訓練
戦争開始まであと7日――