第12話 浮遊都市フラスカイ
ついに王都を離れ、浮遊都市フラスカイへ―――
浮遊都市フラスカイの道を馬車で通り、窓から外の景色を眺めていた。
外の景色を眺めながら出来事を振り返る。
ギアが裏クエストを要求してきたことをきっかけに冒険者となり、殺しを討伐して、王都に帰ってきたらギアとグラが暴れて戦うことになって、それが終わったら天災魔獣が現れて…
「休憩する時間が冒険者になってから、中々なかったわね。」
「あー、確かにな。俺らもここまで続けて戦ったことは無いから流石に疲れた。」
「リアが来てから賑やかになったから、このパーティに入ってきてくれて良かったのよ。」
「本当?私が来てから忙しくなったみたいだけど。」
振り返ればギルドを見てもこんなに忙しそうな冒険者は見たことがない。
このパーティがやる気に満ち溢れてるのか、偶然忙しい時期になったのかわからない。
だが、リアがまいた種もあるので忙しいのはリアが悪い、としか言いようがない。
「結局、あの洞窟はギア&グラの件には関係なかったようだけど。」
「それにしてもあの魔獣強かったな。天災魔獣、初めて会った。」
「天災魔獣なんてよく会うもんなら街はすでに崩壊済みなのよ。」
それはそうだ。あんな魔獣がいたら人類が滅亡している気がする。
しかし、昔は天災級魔獣が多くいた、と記されている。
聖女ミシアがこの世の天災魔獣ほとんどを討ち、今現在、少量の天災魔獣しかいないのだとか。
そうそう。聖女は歳で死ぬか封印されるか、どちらかでないと動きを止められないのだとか。
「あ、浮遊都市、見えてきた。」
そうジェルが指を指して言う。
指さした先には、美しい浮遊都市、フラスカイが浮かんでいた。
◇ ◇ ◇
浮遊都市フラスカイ。
上から滝が垂れてきていて、途中で滝が消えている。
美しい緑がフラスカイの周りを囲み、絶空の孤島のような場所まである。
楽園という言葉が似合うほどの浮遊都市は、下からでも美しさがわかる。
「こちらが入口になります。招待状又は身分証明書をご提示ください。」
「これが身分証明書のギルドカードで、こちらが招待状です。」
その招待状を受付の女性が見ると、目をまん丸にして少し見つめ、「す、少しお待ちください!」と言って、奥の部屋に行ってしまった。
急いで女性は戻ってきて、セキュリティカードとパスポートを渡された。
「メープル陛下より、こちらを預かっております。セキュリティカードは王城への出入りに使います。兵士に刃を向けられたらこれをご提示ください。そしてパスポートは、浮遊都市全店で使えるカードです。どこに行ってもこれをご提示いただければ無料となります。」
そう言って二つのカードをもらう。
福利厚生が充実しているというか充実しすぎている気がする。
でもその分大役を任せられる可能性が十分にある。
そう考えると全店無料で使えるパスポートは適当な福利厚生なのだろうか。
いや、そんなわけがない。でも王が渡してくれたんだったら使うしか…ないよね?
「それではこちらのエレベーターにお乗りください。」
そこには景色がどの角度からでも見れるような透明エレベーターがあった。
ギルドよりセキュリティは劣っているが、景色は断然良い。
四人はエレベーターに乗り、三分ほどかけて、浮遊都市フラスカイにたどり着いた。
そして目の前には美しい楽園とも呼べるほどの街が広がっていた。
「うわぁ!すごいいい景色!楽園みたい!」
「こんな綺麗なところに来たのは初めてなのよ!」
「こんなに、きれいなの、はじめて!」
今まで住んでいた町は何だったのだろうと思うほどきれいな街だった。
自然と技術が融合した発展した都市、フラスカイ。
こんな素晴らしい街にリア達は緊急招待された。
だから、そこまで楽しむことはできない――かもしれない。
「キミたち、この街には初めて来たのかい?」
エレベーターの近くにいた兵士がリア達に声をかけた。
「はい。こんなに美しい国を見たのは初めてです!」
「そうかそうか。ちなみに観光で来たのかい?」
「いいえ。メープル国王から緊急招待されてきました。」
そういうと、兵士は「そうか…」と言って少し落ち込んだ顔をする。
「もしかしたら君たちと一緒に僕も戦うことになるかもしれない。その時は生きて会おう!」
そう、兵士がリア達に向けていった。
――もしかしたら一緒に戦うことになるかもしれない。
つまりこの国は戦争することになるということだ。
しかし、一体何が目的で?自ら行う戦争なら他の国全体と一緒に戦うはずだ。
しかし、この四人だけを呼び出した。
「メープル国王のところに行ってみないと真実はわからないみたい。」
「そうね。本人に聞いたほうが一番早いのよ。」
「俺もその意見に賛成だよ。あんまり他国の王と話したくないけど…」
「それじゃあ、戦いになった時はお互い頑張りましょう!」
そう言って笑顔で兵士に手を振る。
「ああ!俺も兵士として役目を果たすよ!」
そう言って兵士は手を振り返す。
そして、リア達は王城へと向かったのであった。
「…あの子、可愛い子だな…」
手を振られた瞬間、兵士――ハレス・グラートはリアに恋をしていた。
新たな恋の物語の始まり?恋愛小説じゃないんだけどな…
次回 第13話 無言の姫