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【第3章完結】白雷の聖痕者  作者: YY
第3章

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第31話 決戦前

 翌日、太陽がようやく眠りから目覚めようとし始めた頃。

 僕たちはフランムに帰って来た。

 結局、夜通し歩くことになったものの、1日くらいなら大きな問題はない。

 サーシャ姉さんだけは多少疲れが見えるが、弱音を吐くことはなかった。

 事前にガレンから譲られた変装用の服に着替えた僕たちは、なるべく人目に付かないようにフランム内に入る。

 相変わらず王国軍は不真面目な者が大半で、変装が必要だったか疑問に思うほど。

 とは言え、こちらにとっては有難い要素だ。

 まずはラギさんを探すべく【転円神域】を展開すると、すぐに反応があったが……何かがおかしい。

 少し表情が硬くなったのか、目聡く気付いた姫様が声を掛けて来た。


「どうかしましたか、シオンさん?」

「いえ……ラギさんの居場所が判明したんですけど、どうにも様子が変でして」

「変って……どう言う風にですか?」

「神力が活性化しているんだ、アリア。 同じ場所に複数人いて動きがないから、もしかしたらトラブルが起きているかもしれない」

「間が悪いわね……。 それで、どうするの?」

「取り敢えず現場に行こう、サーシャ姉さん。 その後の行動は、状況を把握しないと決められないからな」

「それもそうね。 何事もない可能性だってあるのだし」

「ホント、あのオジサンにも困ったものね」


 僕の決定に同意するルナと、ラギさんへの不満をこぼすリルム。

 どうでも良いが、彼はまだオジサンと言う年齢ではないはず……。

 それは横に置いておくとして、姫様たちからも了承を得た僕は先頭に立ち、王国軍に見付からないように移動した。

 幸いにも現場は近く、すぐに辿り着いたが――


「だから言ってんだろ! そいつらは、一旦放棄されたんだ! もう奴隷じゃねぇんだよ!」

「ふん。 この奴隷商は、放棄した覚えはないと言っているぞ? あのときははぐれただけで、ずっと探していたそうだ」

「そんな訳あるか! サンド・ワームの大群と魔族から、こいつらを置いて逃げたんだろうが! その時点で、所有権はなくなったはずだ!」

「だから、はぐれただけだと言っているだろう。 それともお前は、この奴隷商がこいつらを放棄した明確な証拠でも持っているのか?」

「……ッ! それは……」

「わかったら引き渡せ。 これ以上歯向かうようだと、ボアレロ様に報告してギルド自体に処分が命じられるぞ?」


 嘲笑を浮かべる王国軍。

 その背後には奴隷商らしき男がおり、こちらもいやらしい笑みを浮かべている。

 対するラギさんたちギルドメンバーは悔しそうにしつつ、少年と少女を庇っていた。

 こう言った展開自体は、ある程度予想通り。

 だが問題は、庇われている少年たちだ。


「あの子たち……」


 路地の角に身を潜めながら、ポツリと呟くルナ。

 そう、渦中の2人はパニックになっていたフランムで、ルナが助けた少年と少女。

 そのことを知ったルナは、無言で銃を生成した。

 気持ちはわかるが、ひとまず落ち着かせる必要がある。


「待て、どうするつもりだ?」

「……助けるわ」

「ここで王国軍と事を構えたら、作戦に支障が出るかもしれないぞ?」

「それでも……放っておけないの」


 小さな声で紡がれたルナの気持ちを知って、姫様たちも僕に強い眼差しを向ける。

 困った人たちだ……。

 もっとも、僕とて最初からそのつもりだが。


「わかった。 ただし、条件がある」

「条件?」

「絶対に殺すな。 それから、王国軍に姿を見られるな。 奴隷商には手を出すな。 この3つが守れるなら、僕も手を貸そう」

「……わかったわ」

「良し。 それから姫様、お願いがあります」

「またですか? シオンさんは、本当に甘えん坊ですね」

「……すみません」

「ふふ、冗談です。 それで、わたしは何をすれば?」


 姫様にあることを伝えると、快く引き受けてくれた。

 それを確認した僕がルナに合図を出した瞬間、彼女は建物の壁を足場に高くジャンプして――


「【眠りましょう】」


 両手の銃に薄紫の短剣を生成しつつ、兵士たちの背後に着地すると同時に繰り出した。

 短剣はほんの小さな傷しか付けておらず、ほとんど血も流れていない。

 それでも睡眠毒の効果は発揮され、兵士たちが倒れてスヤスヤと寝息を立て始める。

 お見事。

 非殺傷弾を使う方法もあっただろうが、その場合は攻撃された事実を記憶されてしまいかねない。

 しかしこれなら、あくまでも寝てしまっただけ。

 無力化の結果としては上々。

 とは言え、このままだと目立ってしまう。

 それゆえに僕は、驚いているラギさんたちに呼び掛けた。


「ラギさん、その王国軍たちと奴隷商を路地裏に連れて来て下さい。 ルナは少年たちを頼む」

「その声……お前、シオンか?」

「今は話している場合じゃありません。 人が来る前に早く」

「お、おう! テメェら、手伝え!」


 そうして路地裏に兵士たちを放り込み、奴隷商もお招きした。

 圧倒的アウェイな状況に怯えていたが、大事なのはここから。


「確認するが、貴方はこの子たちを放棄した。 違うか?」

「だ、だから、わたしは……」

「ここからの発言には、気を付けた方が良い」


 敢えて多くは語らず、強い殺気をぶつける。


「ひ!? わ、わかった、認める! わたしはそいつらを放棄して逃げた! これで良いだろう!?」

「あぁ、充分だ。 もう帰って良いぞ」

「く、くそッ!」


 解放された奴隷商は転びそうになりながら路地裏を出たが、完全に諦めた様子じゃない。

 そこで僕は、釘を刺しておくことにした。


「言っておくが、後日王国軍に泣き付いても無駄だぞ。 今の会話は録画しているからな」

「な!?」

「シオンさんの言う通り、これが証拠です」


 驚き振り返る奴隷商に、姫様が鏡の魔道具で映像を見せる。

 選別審査大会でミゲルの悪事を暴いた物だが、持っていてくれて助かった。

 絶望した顔になった奴隷商に、追加の一撃を加えておく。


「脅されたと証言しても良いが、それを立証するのは難しいだろう。 僕は何も強要していないからな」

「ぐ……!」

「わかったなら、去れ。 そして、奴隷商などと言う非人道的行為からは、足を洗うことを勧める」

「ちくしょうッ!」


 半泣きで走り去る奴隷商を見送った僕たちは、フードとマスクを外して改めてラギさんたちに振り向いた。

 彼らは苦笑を浮かべており、少年たちは未だに状況に付いて来れていないのか、困惑した様子。

 それを見たルナは歩み寄り、淡々と告げた。


「貴方たちは奴隷じゃなくなったそうよ、感謝しなさい」

「……有難う」

「……元気がないわね、嬉しくないの?」

「う、嬉しいけど、どうせ金はないし……。 それに、俺はまたリリーを守れなかったから……」

「そんなことない! カイルはずっと、わたしを守ってくれた! だから、そんな顔しないで!」

「リリー……」


 俯いた少年カイルと涙目の少女リリーを、ルナは真っ直ぐに見据えていた。

 彼女が何を思っているのかわからないが、ここは任せて良いだろう。

 姫様たちを視線で制すると、彼女たちも心得た様子で頷いた。

 それから暫くは無言の時間が続き、やがて溜息をついたルナが重い口を開く。


「ラギ」

「な、何だ?」

「この子たちにも出来る仕事ってあるかしら?」

「ん? あぁ……そう言うことか。 まぁ、大した報酬は出せねぇが、あると言えばあるぜ」

「だそうよ。 貴方たちにやる気があるなら、なんとかなるのではないかしら?」

「ほ、本当に俺たちを雇ってくれるの……?」

「おう。 その代わり、しっかり働いてもらうからな」

「う、うん! 俺、頑張るよ!」

「わ、わたしも! よろしくお願いします!」


 ぴょこんと頭を下げたリリーに倣って、カイルも勢い良く頭を下げた。

 それを受けたギルドメンバーは顔を見合わせ、快活に笑っている。

 なんとか丸く収まったことに僕たちも喜んでいたが、何やらルナが革袋を取り出した。

 この時点でおおよその事情を悟った僕は密かに苦笑を浮かべ、思った通り彼女は無言でカイルたちに革袋を差し出す。

 いきなりのことに2人は戸惑っていたが、ルナは強引に受け取らせて告げた。


「無駄遣いは駄目よ」

「これって……お金……。 良いの、姉ちゃん……?」

「えぇ。 その代わり、その子にちゃんとした服を買ってあげなさい。 見ていられないわ」

「あ、有難う! リリー、良かったな!」

「う、うん! お姉ちゃん、有難う!」


 興奮した様子のカイルと、涙ながらに感謝を伝えるリリー。

 それを受けたルナは、恥ずかしそうにそっぽを向いている。

 いつまで経っても素直じゃないな……。

 呆れ混じりにそんなことを思った僕だが、もしかしたらルナはリリーに、過去の自分を重ねているのかもしれない。

 彼女も辛い奴隷時代を経験していることで、感じることもあるのだろう。

 そう考えた僕は、いつの間にか無意識にルナの頭を撫でていた。

 彼女は驚いて振り向いたが、念の為に断っておく。


「子ども扱いしているんじゃないぞ?」

「……そう」


 頬を朱に染めて顔を背けたルナ。

 このときばかりは姫様たちも苦笑を浮かべ、止めようとはしなかった。

 穏やかな空気がこの場に満ちていたが、いつまでも浸る訳には行かない。

 暫くして手を止めた僕は、ラギさんたちと相対して声を発した。


「この子たちを、出来るだけ安全な場所に連れて行って下さい。 それと、住人の避難誘導もお願いしたいです」

「避難誘導って……どう言うことだ?」

「詳しくは、これに書いてあります」


 そう言ってヴェルフからの手紙を取り出した僕は、ラギさんに手渡した。

 それを見たラギさんは真剣な顔付きになり、中身を取り出して読む。

 沈黙が辺りを支配し、やがて全文を読み終えたラギさんが他のメンバーにも手紙を読ませた。

 ギルドメンバーたちは揃って驚きながら、すぐに決意に満ちた面持ちになっている。

 良い気迫だ。

 ラギさんも満足そうに笑みを浮かべ、感慨深そうに言葉を連ねる。


「とうとう、このときが来たか……」

「はい。 改めて言いますが、作戦決行の深夜までに住人の避難誘導を頼みます。 ただし、こちらのことを気取られないように、慎重にして下さい」

「あぁ、わかってる。 ポンコツの王国軍どもに気付かれることはねぇと思うが、細心の注意を払うぜ。 おい、この小僧たちを案内してやれ」

「わかりました!」


 ラギさんに指示されたギルドメンバーが、カイルたちを連れて行く。

 2人は不安そうにしていたが、ルナに頷かれて素直に従っていた。

 すると、頃合いを見計らっていたのか、ラギさんが続いての行動に出る。


「じゃあ、俺たちは早速打ち合わせをして来るぜ。 深夜まで時間はあるが、やることは山ほどあるからな」

「頼んだわよ、オジサン。 この作戦の半分くらいは、あんたたちに懸かってるんだからね?」

「誰がオジサンだ!? 俺はまだ27だ!」

「え? 嘘? 全然見えないんだけど」

「喧嘩売ってんのか!?」

「お、落ち着いて下さい。 リルム様も、あまり失礼なことを言わないで下さい」

「そうは言うけどメイドちゃん、実際老けて見えない?」

「それは……その……」

「アリアちゃん、そこは言い淀んじゃ駄目でしょ……」

「ご、ごめんなさい、サーシャ様!」

「もう、わたしに謝ったって仕方ないじゃない」

「あぅ……」


 にわかに騒がしくなる路地裏。

 何だこの流れは。

 思わず溜息をつきたくなったが、緊張を和らげてくれたと思っておこう。

 そうして無理やりに前向きになっていると、微妙に挙動不審なルナが言い難そうに口を開いた。


「ラギ」

「何だ!?」

「……悪かったわね」

「あん……?」

「だから……前に、王国軍と大差ないと言ったことよ。 貴方たちはフランムの為に、出来ることをしていたとわかったわ」


 目を泳がせつつ、はっきりと謝罪を口にするルナ。

 意外な事態にラギさんは面食らい、それは僕たちも例外じゃなかった。

 その場が何とも言い難い雰囲気に包まれたが、苦笑を浮かべたラギさんが口火を切る。


「気にすんなよ、ルナ。 実際、俺たちは今まで具体的な行動は起こせてなかったしな。 だが、それも今日までだ。 今夜は思い切り暴れてやるぜッ!」

「えぇ。 わたしも、今回ばかりは本気を出すわ」

「こいつは頼もしいな。 良し、お前らは時間まで休んでてくれ。 ギルドの息が掛かった宿なら安心だろ? 俺の紹介って証を兼ねた地図があるから、持って行け」

「有難うございます、ラギさん。 では、お言葉に甘えてわたしたちは、力を蓄えておきます」

「おう、頼んだぜ『輝光』。 行くぞテメェら!」

『はいッ!』


 ラギさんの呼び掛けに、ギルドメンバーが勢い良く返事した。

 彼らの様子を見る限り、士気はかなり高い。

 それだけでも1つ安心出来た僕はフードとマスクで顔を隠し、率先して足を踏み出しながら言い放つ。


「僕たちも行きましょう。 宿は……こっちですね」


 なるべく人目を避けて宿に向かうと、一見しただけではそうとわからない建物が見えて来た。

 確かにここなら、よほどのことがない限り、嗅ぎ付けられることはないだろう。

 背後を振り返って姫様たちに確認を取り、中に入る。

 入口には強面の男が1人陣取っていたが、ラギさんからもらった地図を見せると、何も言わずに数字の書かれた鍵を人数分渡された。

 どうやら、この番号の部屋を使えと言うことらしい。

 無言で頭を下げて2階に上がり、奥に進むと目当ての部屋が並んでいた。

 何もないと知りつつ、一応【神域】で確認してから借りた部屋の1つに入る。

 思ったよりも広く、この人数でも充分。

 全員が揃ったのを確認した僕は入口の鍵を閉め、フードとマスクを取って告げた。


「取り敢えず、僕たちが為すべきことは終わった。 あとは、決行時間まで待つだけだ。 それまではそれぞれ、ゆっくり休むとしよう」

「そうですね、シオンさん。 ひとまず仮眠は取った方が良いと思います」

「わたしもソフィア姫に賛成だけど、寝過ごさないようにしなきゃね」

「早めに起きて、準備しておく方が良いですね、サーシャ様。 でもその前に、ご飯を食べませんか? 軽食を作っておいたので」

「ナイスよ、メイドちゃん! あたしもう、お腹ペコペコなのよ!」

「痴女レッド、もう少し緊張感を持てないの?」

「まぁまぁ。 ルナちゃんも、お腹は空いてるんじゃない? 昨日の夜から何も食べてないし」

「淫乱シスター……。 まぁ、補給は大事ね」

「優しくなっても素直ではありませんね。 アリア、お願いするわ」

「はい、ソフィア様。 少々お待ち下さい」


 テーブルを壁際に寄せて、レジャーシートを広げるアリア。

 流石に7脚も椅子はないので、床に座ることになった。

 それでも味に影響はなく、今回もアリアの料理は最高の一言。

 姫様とリルム、サーシャ姉さんは惜しみなく賛辞を贈っており、ルナは無言ながら手を止めずに食べ続けている。

 少女たちの和気藹々とした姿を見ていると、今夜に待ち受けている決戦を前にしてピリピリしていた気持ちが、少し収まった気がした。

 勿論それは気が緩んだ訳じゃなく、無駄な力が抜けたと言うこと。

 彼女たちもそれは同じで、良いブレイクタイムになっている。

 心中でアリアに礼を述べつつ食事を進め、やがて完食した。

 その後は各部屋で思い思いに過ごすことになり、僕も一眠りするべくベッドに横になる。

 ただし、考えておくことはあった。

 今、僕の思考を占有しているのはボアレロ国王……いや、ボアレロと側近2人。

 彼らの実力が高いのは間違いないが、それ以上に気になるのは……初めて会ったときに感じた気持ち悪さ。

 意識し過ぎなのかもしれない。

 しかし僕は、どうしても忘れられなかった。

 そうして僕が懊悩していた、そのとき――


「シオン、ちょっと良い?」


 ドアがノックされた。

 相手はリルムで、若干の緊張を感じる。

 不思議に思いつつ体を起こした僕は、ベッドから下りて鍵を開けた。


「どうしたんだ?」」

「その……ちょっと話があって」

「……わかった、中に入ってくれ」

「ん……。 ありがと」


 どうにも様子がおかしい。

 先ほどまでの元気な様子も鳴りを潜め、まるで怯えているかのようだ。

 怪訝に思った僕が黙っていると、リルムは1度深呼吸してから水晶を取り出す。

 魔道具なんだろうが、効果はわからない。

 それゆえに沈黙を続けていると、彼女は意を決したように効果を説明し――僕は驚いた。

 硬い面持ちでこちらを見ているリルムと視線を絡め、僅かに逡巡しながら問い掛ける。


「どうして、これが作れたんだ?」

「……」

「言いたくないのか?」

「……うん」

「そうか」


 一言だけ言って、水晶を受け取った。

 それっきり、室内に静寂が落ちたが――


「……ッ!」

「心配するな。 何があっても僕は、リルムの味方だ」

「シオン……」

「だからキミには、今まで通り笑顔でいて欲しい」


 リルムを優しく抱き締め、頭をゆっくり撫でた。

 彼女の身体は強張っていたが、少しずつ緊張が解けるのを感じる。

 それから暫くして落ち着きを取り戻したようで、微かに不安そうに次のようなことをのたまった。


「じゃあ、キスしてくれる?」

「……わかった」


 一瞬だけ躊躇ってから、要望を受け入れる。

 体を離してリルムと向かい合い、どちらからともなく顔を近付けた。

 唇を重ねると彼女はピクリと震えたが、構わず続ける。

 今日も彼女からは甘酸っぱい良い匂いがして、安らかな気分になった。

 やがてキスを終えたリルムは僕の胸に顔を埋め、甘えるように声をこぼす。


「ちょっとだけ、このままでも良い……?」

「あぁ」

「ありがと……」


 脱力して僕に体を預けるリルム。

 彼女の苦悩を僕は、少しでも和らげることが出来たんだろうか。

 そうあって欲しいと願いながら背中を撫で続け、徐々に決戦のときは近付いて行く。

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