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【第3章完結】白雷の聖痕者  作者: YY
第3章

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第11話 水着フェスティバルとフランムの闇

 オアシスの町に攻め込んだ王国軍を撃退した僕たちは、合流してすぐにフランムに向かう――ことなく、1日時間を空けることにした。

 理由としては、すぐに出発すると兵と鉢合わせて、僕たちが町にいたことを知られる恐れがあるからだ。

 この提案をしたのはガレンで、理に適っていると言えばその通りなんだが……別の意図には呆れざるを得ない。


「それと、水着フェスティバルは今夜だ。 どうせだから、楽しんで行けよ」


 戦いの直後、僕たちを自宅に招いてそんなことをのたまった彼を、冷ややかに見つめた。

 しかし、ガレンが堪えた素振りはなく、むしろニヤリと笑ってマーレさんが注いだ酒をあおっている。

 ちなみに、意外にもと言うべきか、彼の家はさほど豪華じゃない。

 むしろ、どちらかと言えば質素。

 ただし、酒の種類と数は多い。

 ガレンの自宅事情は置いておくとして、僕としても出発までの時間を空けることに関しては同意見だったので文句ないが、フェスティバルに参加することに対しては消極的。

 ところが――


「えぇ、是非そうしましょう」


 華やかな笑みの姫様。


「大規模なイベントなら、変わった魔道具が見れるかも!」


 ワクワクしているリルム。


「わ、わたしも賛成です」


 控えめながら主張するアリア。


「まぁ、どうせここに残るなら、それも良いのではないかしら」


 何かを企んでいそうなルナ。


「つ、次はいつ来れるか、わからないしね」


 目を泳がせているサーシャ姉さん。

 テーブルに着いて果実水をご馳走されていた女性陣から、前向きな声が上がった。

 そうなると心理的な意味でも多数決の意味でも、僕に反対する理由はない。

 結局ガレンの話に乗った僕たちは、水着フェスティバルに参加することになった。

 そのことに満足したのか、ガレンは笑みを深めて言い放つ。


「良いねぇ。 そうと決まれば行くか」


 椅子から腰を上げたガレンが、ミランダさんたちとともに家をあとにした。

 それに続いて、僕たちも外に出ると――


「お! 来たぞ!」

「きゃー! 皆、可愛い!」

「町を守ってくれて、ありがとー!」

「姐さんのお陰で傷が治りやした! あざっす!」

「サービスするから、うちの屋台に来てくれよな!」


 僕たちを待っていたようで、人だかりが出来ていた。

 特に町民を直接守ったルナと、戦士たちを回復し続けたサーシャ姉さんの人気が高い。

 もっとも、子どもたちに纏わり付かれたルナは戸惑っており、男性陣からの感謝を浴び続けたサーシャ姉さんは、目を回しそうな勢いだ。

 彼女たちの愉快な――と言ったら怒られるだろうが――姿を僕や姫様とアリアは微笑ましく眺めており、リルムはマイペースに屋台の魔道具を見て回っている。

 そんな僕らをガレンは楽しそうに眺めていたかと思うと、頃合いを見て人々に告げた。


「お前ぇら、今夜はこいつらも参加してくれるってよ! 最高に盛り上げてやろうぜ!」


 ガレンの言葉を聞いて、熱気の種類が変わる。

 それまでは純粋に僕たちに感謝していたが、今は下心全開。

 恐らく……いや、確実に姫様たちの水着姿を、楽しみにしているのだろう。

 そのことにアリアとサーシャ姉さんは恥ずかしがっていたが、姫様は余裕の笑顔でリルムは勝気な笑み、ルナは妖艶な微笑を浮かべていた。

 悪乗りしたガレンに嘆息した僕は、彼に呆れた目を向けて言い放つ。


「早く行かないか?」

「わかった、わかった。 付いて来いよ」


 突っつかれてやっと動き出したガレンに連れられて、ようやく目的地に辿り着いた。

 そこは、戦いの前に案内された水着の店。

 要するに、僕が出した最後の条件は――


「約束は約束だ。 好きなのを選べよ」


 姫様たちに、水着を譲ってもらうこと。

 水着フェスティバルに参加するつもりはなかったが、高品質の水着は貴重だと考えたからだ。

 断じて僕が見たかった訳じゃない……とは言い切れないな……。

 急に自分がいやらしく思えたが、男性なら普通の感情だと開き直ろう。

 内心で折り合いを付けた僕が姫様たちに振り向くと、彼女たちはどことなく気分が高揚した様子で物色を始めたが――


「ちょっと待った」


 ガレンがストップを掛けた。

 まさか本当に約束を反故にするのかと思った僕は目を細めたが、彼が紡いだ言葉はそれとは違う。


「どうせならよ、もっと良い水着が欲しくねぇか?」

「そのような物があるのですか?」

「あぁ、お姫さん。 普段は出してない、特別製がな」

「ふーん。 じゃあ、サッサと出しなさいよ」

「おっと、そう簡単には行かないぜ、『紅蓮の魔女』。 そいつが欲しけりゃ、俺の頼みを聞いてもらおうか」

「な、な、な、何をさせるつもりなんですか……!?」

「くく、そうビビんなよ、『救国の修道女』。 別に、取って食おうって訳じゃねぇんだ」

「勿体ぶっていないで、早く内容を言いなさい。 それを聞かないと、受ける受けないは決められないわ」

「そりゃそうだな、『月夜の守護者』。 まぁ、そんな難しい話じゃねぇぜ? 水着をやる代わりに、それを着てコンテストに出て欲しいってだけだ。 ただし、その場合は全員だぞ? じゃないと、意味はねぇからな」

「なるほど、そう言うことか……」

「ど、どう言うことですか、シオン様……?」

「つまりガレンは、皆を集客の道具にしたいんだろう。 アリアたちが参加するとなったら、見たい連中が増えるだろうからな」

「集客が目的なら、あたしだけでも充分じゃない? なんで全員参加なのよ?」


 自信満々なリルムに胸中で苦笑しつつ、僕はガレンに鋭い視線を向けて自身の考えを明かした。


「憶測に過ぎないが、優勝者が誰かを予想する賭けでも行われるんじゃないか? その場合、レベルが近い方が票が割れて盛り上がる。 尚且つキミたちほどの美少女揃いとなれば、最高だろうな」

「ははは! 流石だな、シオン。 まぁ、そう言うこった。 一応言っておくが、熱砂の大陸で賭博は合法だし、それはこの町でも同じだ」

「コ、コンテストなんて、わ、わたしには無理です……!」

「落ち着いて下さい、サーシャさん。 わたしも見世物になるのは、気乗りしませんね。 ここにある水着だけでも充分ですし、無理に引き受けなくて良いのではないでしょうか?」

「痴女姫と同意見なのは気に入らないけれど、わたしも見世物になるのはごめんよ。 わたしが見せたいのはシオンだけで、わざわざその他大勢に見せるつもりはないわ」

「はっきり言いますね、ルナ様……。 で、ですが、わたしも同じ考えです」

「ま、長時間拘束されるのもメンドクサイしね」


 水着フェスティバルには参加しても、コンテストへの参加は姫様たちも遠慮したいようだ。

 それを聞いた僕は断りを入れようとしたが、ガレンがその直前に言葉を滑り込ませる。


「ちなみに優勝者は、匿名投票で決まるんだ。 だが、もしお前らが参加してくれるってんなら、特別にシオンが誰に投票したか教えてやるぜ?」


 ニヤニヤと笑うガレン。

 それに何の意味がある?……と問いそうになった僕だが、即座にその意味を理解した。

 すぐさま姫様たちに振り向いたところ、予想通りの反応を示している。

 全くもって嬉しくないが。


「そう言うことでしたら、参加しない訳には行きませんね」

「うふふ、痴女姫がわたしに勝てるとでも思っているの?」

「ふん、ゴスロリこそ首を洗って待ってなさい! あたしは誰にも負けるつもりないから!」

「み、皆さん好戦的ですね……。 で、でも、わたしだって……!」

「アリアちゃんまで……。 こ、こうなったら、わたしも出るしかないじゃない……」


 サーシャ姉さんは仕方なくと言った様子だが、結果的に彼女たちはコンテストへの出場を決めた。

 やる気を滾らせる少女たちに反して、僕は頭痛を堪える思いだ。

 ガレンに目を向けると楽しそうに笑っており、余計に腹立たしい。

 しかし、僕に構わず手を「パン、パン」と叩いた彼は、ミランダさんとマーレさんに指示を出す。


「話が早くて助かるぜ。 ミランダ、マーレ、こいつらを連れて行ってやれ」

「は~い、こちらで~す」

「付いて来て」


 2人に先導されて、店の奥へ消える姫様たち。

 その背中からはやる気が感じられ、残された僕は恨めしそうにガレンを見る。

 ところが彼はニヤリとした笑みで、これ以上ないほど楽しそうに声を発した。


「愛されてるじゃねぇか、シオン」

「うるさい」

「はっはっは! 照れんなって。 あんな上玉がより取り見取りなんだ、幸せ者だと思えよ」

「それはそうかもしれないが……僕にとっては悩みの種だ」

「贅沢な悩みだな。 それで? 誰に入れるかは決めてるのか?」

「見てもいないのに、決められる訳がないだろう」

「既に好きな女がいるなら、そうとも限らねぇだろ? 実際どうなんだ?」


 面白がっているのを、隠そうともしないガレン。

 対する僕は溜息を堪え切れず、思わず心情を吐露した。


「僕に誰かと特別な関係になるつもりはない。 行為に関しては、要相談だが……」

「へぇ? お前が体だけの関係を持つって、なんか意外だな」

「そんなつもりはない。 ただ、気持ちに応えられないなら、せめて行動だけでも希望に沿いたいと思っているだけだ」

「気持ちに応えられないねぇ……。 そいつはなんでだ?」

「詳しいことは言えないが、僕には恋愛をするべきじゃない理由がある。 そうじゃなくても、誰かを選ぶと言うことは誰かを傷付けると言うこと。 僕にはそんな決断を下せない」


 何故、こんなことを話しているんだろう。

 内心で戸惑った僕は、今の発言をなかったことにしようかと思ったが――


「お前って馬鹿なんだな」


 思い切り罵られた。

 嘲笑を浮かべており、こちらを完全に見下している。

 不愉快に思うとは言え、これに関しては反論し辛い。

 それゆえに僕が黙っていると、ガレンは大きく息を吐き出してから言葉を連ねた。


「どんな理由があったってな、恋愛しちゃいけないなんてことはねぇんだよ。 たとえ1分でも1秒でも、そいつのことを本気に好きになったら、それはもう恋愛だ」

「1秒でも……」

「それに、お前はあいつらを傷付けたくないのかもしれねぇけどな、誰も選ばないのもあいつらからしたら辛いってわかってんのか?」

「そうなのか……?」

「そりゃそうだろ。 つまり、選んでも選ばなくても、誰かは傷付くんだよ」

「それなら、どうすれば良いんだ?」

「そんなもん、自分で決めろよ。 どんな結末になるにしろ、これはお前らの問題なんだからな」

「……その通りだ」


 ガレンに正論をぶつけられて、沈黙せざるを得ない。

 そんな僕に苦笑を浮かべた彼は、やれやれとばかりに口を開いた。


「まぁ、誰も傷付かない方法がない訳じゃないぜ」

「本当か? 是非教えて欲しい」

「教えて欲しかったら対価を……と言いたいところだが、今回は特別だ。 見てられねぇからな」

「……すまない」

「気にすんなよ。 言っておくが、こいつは諸刃の剣だ。 お前次第で、成功するか失敗するかは決まる」

「……どんな方法だ?」


 固唾を飲んで耳を傾ける僕に、ガレンはニヤリと笑い――


「全員を愛せ」

「全員を……?」

「そうだ。 拒否するんじゃなく、受け入れろ。 全員を等しく愛せたら、誰も泣かなくて済むだろ?」

「待て、それは不誠実過ぎないか? それに、基本的には恋人や結婚相手は1人のはず……」

「そんな常識とあいつらの幸せ、どっちが大事だってんだ? 俺を見てみろ。 ミランダとマーレは奴隷だが、2人を同時に愛してる。 周りが何と言おうと、これが俺たちの愛の形なんだよ。 良いか、シオン。 愛には無数の形があるって覚えておけ」

「無数の形が……」

「ま、俺の言う通りにしろとは言わねぇよ。 だがな、今のままじゃ全員が不幸になるぜ? それが嫌なら、お前らなりの愛の形を探すんだな」

「……有難う、ガレン。 肝に銘じておく」

「礼はいらねぇよ。 お前らがどうなるか、楽しみにしておくぜ」


 ふざけているのも確かだが、言っていることは自然と腑に落ちた。

 すぐに解決策は思い付かないものの、また新しい視野を持てた気がする。

 そのことに感謝した僕だが、目下の問題を忘れていた。


「で? 誰に投票するんだよ?」

「……匿名じゃ駄目なのか?」

「悪いが教えるって条件だからな、そうは行かねぇ。 腹を括るんだな」


 意地悪な笑みを湛えるガレンの一方、僕は打つ手なし。

 こうなったからには覚悟を決めて、誰かに恨まれてもなるべく公平に判断するしかない――と諦めかけていたが――


「……ガレン、1つ聞きたいことがある」

「あん? 何だよ?」


 その後、僕から告げられた苦肉の策を聞いて、ガレンは今までで最高の笑みを浮かべた。

 非常に遺憾ではあるが、もうあとには退けない。

 こうして僕は決死の思いで、水着フェスティバルに臨むのだった。











 下品なほど煌びやかな装飾で飾られた、炎王国フランムの王宮。

 その最奥にある国王の間も、かなり贅沢に造られている。

 目が痛くなるほど輝かしい、金銀財宝の山。

 それらを見下ろせる高さにある王座に腰掛けた男に対して、階段の下で跪いた兵士が震えながら言葉を連ねた。


「ご、ご報告は以上となります……」


 体だけではなく声も震えており、怯えていることが如実に表れている。

 それを受けた男は暫く黙っていたかと思えば、唐突に口を開いた。


「なぁ、グレビー」

「はい、ボアレロ様」

「このゴミ、今何つった?」

「いろいろと言い訳を並び立てていましたが、要約するとオアシスの町を落とせなかったらしいです」

「やっぱそうか。 俺の聞き間違いじゃなかったんだな。 どう思う、レイヌ?」

「そうですねぇ。 倍の兵力があるから大丈夫って言っておいてこの有様なのでぇ、取り敢えず全員の首を刎ねたらどうでしょう?」

「ひ……!?」


 炎王国フランムの国王、ボアレロ。

 そして、その側近であるグレビーとレイヌ。

 ボアレロは30歳前後で、上半身裸の上からフード付きの服を羽織っており、隙間から見えるのは暗い赤の髪。

 瞳は血のように紅く、不気味な光を宿していた。

 体付きは引き締まっているが線は細く、身長は170セルチ台半ば程度。

 彼の右側に立っているのがグレビーと言う男性で、こちらは更に痩せ型だが身長は高い。

 年齢は20代後半くらいで、肩口で揃えた茶色の髪と鋭い光を放つメガネが特徴的。

 軍服を僅かな隙もなく着こなしており、その厳格な表情も込みで、まさに軍人と言った風貌。

 反対の左側に控えているレイヌは、艶やかな雰囲気を感じさせる妙齢の女性。

 体付きはかなりセクシーで、緑の長い髪が波打っている。

 背中が大きく開いたタイトな黒いドレスが、彼女の妖艶さを引き立てていた。

 そんな3人が奏でた世間話のような死刑宣告を聞いて、報告した兵士は青ざめている。

 しかしボアレロの眼中には入っておらず、あくびをしながら言い放った。


「それでも良いんだが、穴埋めがメンドクセェんだよな。 こんなゴミどもでも、クソの役くらいには立つからよ」

「確かに、これ以上労働力を減らすのは得策ではないかと」

「でもグレビー、お咎めなしって訳には行かないんじゃなぁい?」

「当然だ。 そこでボアレロ様、このような案はいかがでしょうか?」


 グレビーから耳打ちされたボアレロは、怠そうだった顔を邪悪な笑みに変えた。

 それを見た兵士は、ビクビクしながら判決を待つ罪人の気分。

 そのことに気付きながらボアレロは笑みを浮かべ、敢えて明るい口調で告げる。


「まぁ、失敗しちまったもんは仕方ねぇな。 今回は殺さないでおいてやるよ」

「あ、有難うございますッ!」

「その代わり、罰を与えるぜ」

「ば、罰ですか……?」

「あぁ。 お前を含めて今回の侵攻に関わった奴ら全員、奴隷行きだ。 ただし、仕事は続けてもらう。 つまり、無償で命を懸けてもらうぜ。 まぁ、すぐには死なねぇように、ギリギリ生きてられる程度の食料は恵んでやるよ。 精々、最後は肉壁にでもなるんだな」

「そ、そんな!?」

「お? 文句でもあんのか? だったら、今すぐ死ぬか?」

「……ッ! い、いいえ、滅相もありません……」

「そうかそうか。 そんじゃまぁ、今日からお前らは奴隷軍とでも名乗れよ。 俺が許す」

「か……かしこまりました……」

「良し。 じゃあ、失せろ」

「し、失礼致します……」


 絶望的な扱いではあるが、命が助かったことを兵士は喜んだ。

 いや、そう思うしか希望がなかった。

 ところが――


「あ、ちょっと待て」


 ボアレロに呼び止められた兵士は、ビクリと肩を震わせながら振り返り――


「やっぱ、お前だけ殺しとくわ」


 焼き尽くされた。

 一瞬にして炭化した兵士は、恐らく痛みを感じる間もなかっただろう。

 それが唯一、彼にとって救いだったかもしれない。

 心変わりした主に嘆息したグレビーは、兵士のなれの果てを適当に処分して、淡々と声を発した。


「それでは、奴隷軍の通達はわたしが代わりにして来ます」

「悪いな」

「そう思うなら、殺すのはあとにして欲しかったですね」

「殺したくなったんだから、しょうがねぇだろ?」

「そうですね。 では、行って来ます。 レイヌ、あとのことは任せたぞ」

「はぁい」


 傲岸不遜なボアレロと呑気に手を振るレイヌに見送られ、グレビーが国王の間から姿を消す。

 それからは静寂が続いていたが、思い出したかのようにボアレロが口を開いた。


「そう言や、ゴミが妙なことをほざいてたな」

「えぇとぉ、正体不明の強力な使い手に邪魔された……でしたっけぇ?」

「そうだ、そうだ。 ゴミどもの言うことなんざ、一々気にしてられねぇけどよ、なんか引っ掛かるんだよな」

「ボアレロ様がそんなことを言うなんてぇ、珍しいですねぇ」

「そうかもな。 まぁ、そいつらが何者か知らねぇが、そのうち会えるだろ」

「どうしてそう思うんですかぁ?」

「勘だ」

「あはは。 じゃあ、確実ですねぇ。 ボアレロ様の勘は当たりますからぁ」


 ニヤリと笑うボアレロと楽し気なレイヌ。

 こうしてフランムで凄惨な事件が起きていることを、シオンたちが知ることはなかった。

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