不条理
ガチャリと金属音が聞こえる。
「貴方の手足に手錠、足錠を掛けさせてもらいますね。肉体を拘束するのも快楽を増幅させるのです。」
「あぁ。」
コレから何をされるのであろう。淡い期待が上杉の胸を昂らせる。鼓動が速度を上げていく。視覚を失っている現在、想像だけが膨張していく。その最中、ふとした疑問が浮かんだ。
金属の冷たい感触が手首、足首を覆う。その後、上杉の腕は後ろへと回されて手錠が嵌められた。
「単なる好奇心なのですけど…。何で貴方は、こういった事を?厭なら答えなくても良いのですが…。」
上杉にとって、ソレは本当に純粋な好奇心だった。何故、彼女はこの様な事をしているのか…。
「ソレは…。」
若い女性の声が響く。
少し沈黙があった。
「ある噂を聞いたのです。」
「噂ですか?どのような?」
「死んだ人を生き返らせる方法です。」
「死んだ人を生き返らせる…?」
上杉は考えている。先程の質問に対しての答えにしては接点が無い様に感じたからだった。
「私には愛する人がいました。」
若い女性の声は言葉を産み堕とていく。
「私には五十歳程、年が離れた伴侶がいました…。ですが…。」
【五十歳?】想定していなかった言葉に、上杉の想像は書き換えられていく。
「一年程前の事です。伴侶が突然、失踪したのです。行方知れずとなりました…。」
途端にその声は、気味悪く感じた。