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オリキャラブログ  作者: 郵便屋
【後物語】
2/2

夜明け[代女 椛]

目を開けるとそこは、

寝るためにだけ使われている自宅だった。


閉まったカーテンからでも眩しい


久しく光を浴びてソファからゆっくりと体を起こす。


デジタル時計で日にちを確認してみれば、眠りについてから一晩しか経過していなかった。


星明かりを頼りにした旅は一区切りの終わりを迎えたのか。


そもそも、こんなにも

目覚めのいい朝を迎えたのはいつぶりだろう


俺の朝は決まって寝汗が酷く動悸も激しい、

"再体験症状"という名の悪夢からの目覚めだった。


紫色の夢の中で症状は発症せずに過ごせていたのに。


朝が来なかったから?


あの粉のついた葉のせい?


それとも………ーーー


途中で考えるのをやめる。


あの居心地の良さはもう、手の届く場所には存在しない。


「……はは」


乾いた笑いは何も無い部屋に反響する


虚しいくらいに孤独だった。


カチャ…


胸元に硬い感触、黒縁メガネがシャツに掛かっている。


「………」


目を見開いて、

その存在を確かめるように優しく触れてみる。


その後に、自分の服のポケットから違和感が

探ってみるとメモ帳の紙切れがあった。


それと同時に、彼女の存在を確かめたくて

スマホに手を伸ばしたーーーが、

その手はすぐに何も掴むことも無いまま停止する。


「(……何処かで、生きている)」


この空の下、あの歌を、

あのギターと共に弾き語りしているんだろうね。


彼女のせいで、辛い記憶しかない場所に戻って来てしまった。


本当の俺はあの子が思っているよりも、

ただの気まぐれで傲慢で、身勝手な男だ。


逃げれば捕らえるし、嫌がっても離さない。


人の話なんて聞く耳持たない。


そんな姿、無垢な女の子相手に晒せば、

あそこまで表情豊かに接してくれなかっただろうから。


それに束縛されることが1番嫌がりそうだし、


気持ちはわかるけどね、


俺も無理だし、束縛とか。





長くて短い旅をした、あの夜の関係は唯一無二で


今までに無い体験をして、

初めての感情を抱いて、

濃い非日常を共に歩んで来た事


それら全てが特別な記憶として刻まれたのなら、

俺の目的は達成したって事になるけど


最後の言葉を聞いた限りでは……。


「(…或いは、俺の方が………あはっ、なんてね。)」


俺は思ったよりも…彼女に拒絶されるのが怖いらしい。


そう感じさせられた瞬間、

縛られたような感覚に僅かな苛つきと欲望が込み上げてくる。


……さて、俺は俺でやるべき事を見つけなくてはいけない。


"絶対見つかる"なんて…、

俺にとっては呪いの言葉だよ、この悪魔が。


そもそも左右されすぎなんだよ、

あんな小娘の言葉や仕草で、

本当に眩しくて…苛つく、本当に、煩わしい。


もし見かけたとしても、

面と向かって会うつもりは無いけどね。


それこそ会ったりなんかしたら引き摺り堕としたくなるから、闇の中に。


ああでも、次に見かけた時

首に着けていなかったらお仕置きしてあげるよ。


そう考えたら、あのネックレスも

ある意味では呪いのネックレスなのかもしれない。


俺のモノには印を付けておかないと気が済まなくてさ


…なんて言ったら、どんな表情をするのかな。


でもそれがある限り彼女は魔法を使えるんだから。


あんたの方から声をかけてくるのなら、

踏み込んでくるのなら、覚悟して欲しいな。


俺といても、一時的な幸せは与えてやれるかも知れないけれど、永遠に幸せにはなれない、と思うから。


そんな選択する物好きなんていないさ。


ここは夢の中じゃ無い、現実なんだから。


魔法が消えたら、俺のことは忘れて


素敵な恋人を見つけてくれ


その境界線を越えるまでは…


まだ、見守ってあげるし、支えてあげる。



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