表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

8

ーーー8

「昔は魔女との関係は良好だったのよ。

 今だと教会の騎士たちが『魔女狩り』なんかして大変な目にあってるのよ。そのために『魔女協会』なんて立派なものが結成されて」

「ハァハァ、入ってる?」

「そうよ〜。

 魔女は強制的に協会に所属させられるから。いつかナインも行かないとね」


 二人は長い長い螺旋状の階段を上っている。

 レイアは慣れたもので疲れた様子はない。

 しかしナインは体力も脚の筋肉も限界がきていた。


「もう少しよ。頑張って」



 しばらくして扉が現れた。

 ドアノブを掴み、手の甲に魔法陣が浮かぶ。そしてレイアは扉を開けた。


 その瞬間、ナインは熱風を感じる。

 レイアはナインの手を引っ張り、テントを出る。

 そのまま高い建物が囲う、路地裏を進んだ。


「うわぁぁぁ」


 ナインはあまりの情報量に、驚きの声を漏らす。


「フフフ。さあ、行きましょう?」


 そして二人は街へと繰り出した。


「あれは?」


 ナインは指を指す。


「噴水よ。

 水を噴出してるの」


 人々が行き交う大広間。その中心にある噴水。丸型で三層の段がある。


「あれは?」

「大道芸ね。

 路上で人を楽しませるためにパフォーマンスをするの。剣を飲み込んだり、火を吹いたり、たくさんの玉を投げたりとかね」


 箱の上に立った赤と黄色の奇抜なファッション。通りかかる人々を前に様々なパフォーマンスをしている。


「あれは?」

「感謝祭の準備ね。

 台車を引っ張って果物や野菜を配るのよ。今日は祭りの前日だから、その準備をしてるわ」


 ナインは街の様々なものに興味を示し、楽しんでいる。ただあまりの情報量に驚いて、ハイになっているようだ。

 レイアは、それを理解し、ある場所へと向かった。


「ナイン。屋台で食事でもしましょう」


 コクコク。


 するとレイアは牛串と書かれた屋台へと向かう。

 ナインは様々な屋台から香る匂いに、鼻を奪われている。


「おじさん。牛串一本」

「あいよ! 嬢ちゃん、祭りの準備か?」


 屋台のおじさんは、きさくに話しかけてきた。


「いえ、実はこの子と一緒に祭りを見に来たの」

「弟さんかい? だいぶ見た目が派手だが」


 ナインの紫色で長い前髪ぱっつんを指しているのだろう。

 この地方では見ない見た目と、姉弟にしては似ていない顔つき。


「ええ、腹違いの弟で。この間、初めて会ったものだから」


 レイアは声音を暗く、憂い顔の演技をする。

 一方、ナインは屋台の牛串に、目を光らせているが。

 するとおじさんは、腕で顔を隠す。


「うう! そうか、そうか! 悲しかったろうな。

 よし! 大サービスだ。三本焼いてやる。持ってけ、持ってけ!」


 おじさんは涙を浮かべ、三本の牛串を渡してきた。

 レイアは「ありがとう」と、一本分の牛串代を払い、受け取った。

 そして感謝祭観賞用に置かれたベンチへと腰掛ける。


「それじゃあ、食べましょうか」


 レイアはナインにニ本の牛串を渡す。

 子犬が餌を貰うように、目を輝かせる。そして食らいつこうとする。


「ナイン、いただきます」


 その言葉に「ハッ」とし、合掌する。


「いただきます」


 レイアが頷くのを確認して、ナインは思いっきり食らいついた。


「美味い、美味い」と呟きながら、目には涙を浮かべている。

 レイアは、そんな様子を見て笑いながら、牛串を口にした。


「あ、あれ」


 するとナインが、串を持った手で、指を指す。

 そこには「卵カップケーキ」と書かれた看板。


「そうよ。あれが言ってた、卵カップケーー。早っ!」


 ナインは一瞬で卵カップケーキの屋台へと走っていた。




ーーー8

「ふぅー。やっと終わったぜ。協会め、面倒くさいことを押しつけやがって」


 男のように大雑把な言葉遣い。

 彼女を一言で表すなら『狩人』がふさわしい。


 右手には銃口がラッパのようなラッパ銃。背中には銃身が長い、マスケット銃。

 格好は茶色の革鎧をして装備。

 長い金髪を一つに束ね、顔には頬から首にかけての、大きな傷。そして大きなゴーグルをして、焼けた褐色肌。


 彼女は魔女の一人。『銃の魔女』と呼ばれている。


 そんな『銃の魔女』は、とある山に座っている。

 その山は大量の死骸からなる。死骸は白い毛の大猿だ。全てが自然や人を害する害獣。

 凄まじい力と念力のような特殊な能力を操る猿。それの駆除は魔女たちに与えられる任務の一つ。


「ギオン。下りろ、私の仕事ができん」

「おらよっと!」


 キツめの言葉遣いと声音で声がかかる。

『銃の魔女』ことギオンは山から飛び降り、地面へと着地する。


「そうは思わねぇか? アリス」


 アリスと呼ばれたのは、今回の任務の相棒。

『科学の魔女』と呼ばれている。


「チッ。アリスと呼ぶなと、何度言えば分かる。私のことはノクティクスと呼べ」


 ノクティクスは銀色の鱗で覆われたローブを来ている。一つ一つの鱗が太陽の光で輝いている。

 また彼女の髪も銀髪であり、これもまた絹のように光輝いている。顔は小顔で色白、パーツも小さく、幼さはあるが美人である。


「んああ〜? だって名前長えじゃん。

 ノクティクスよりアリスのほうが可愛らしいだろ? な、アリスちゃん」


 ギオンはノクティクスの頭を撫でる。


「撫でるな!」


 手を払い、作業に集中している。

 ノクティクスは死骸の山の下で、ある準備をしている。

 死骸の周り、円上に液体を撒いている。一周すると「パチンッ」と指を鳴らし、火を液体につける。


 ボッ!


 すると液体が燃え上がり、円内の死骸が燃え上がる。


「よし。任務完了だ」

「よーし。良くやったぞアリスちゃん」

「だから! 頭を撫でるな!」


 二人は任務を終え、館へと帰っていく。

 館は更に、騒がしくなるだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ