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人は一人もおらず、姿も無ければ音もない。
街を構成する家々は全てがダメージを受けている。中にはぺっちゃんこに潰れる。地面ごと無くなっている場所もある。
道には瓦礫が沢山あり、復興には長い年月を要するだろう。
天災が起きたのか?
では人がいる筈だ。
戦争に巻き込まれたか?
血は一切流れていない。
竜が襲ったのか?
それにしては被害は大きい。
答えは、この都市の中央。円上に広がるように被害は大きくなっている。
中央に一人の魔女が舞い降りた。
その魔女は金の刺繍がされた黒ローブ。中にはダボダボの余裕のある服。片手には金色の宝珠がはめられた黒い杖。杖に乗っている。
顔は青と金色のオッドアイ。金髪のゆるふわとした長髪。数本の白髪が目立つ。目の下の泣きぼくろ。丸い輪郭と顔のパーツの小ささから童顔だ。
魔女は都市中央に一本だけ立っている柱に向かう。
その柱には一人の子供が体を預け、力を失っている。
「この子が……」
特徴的な紫髪で目を隠す長さの、前髪パッツン。閉じられているが大きい目。病的に白い肌。首には黒文字で「九」と数字が刻まれている。
服は薄汚れた、大きめの白ロング上下。まるで囚人のような服装。その下の体は、病的に痩せている。
しかし血や怪我などは無い。ただ気を失っているかのようだ。
魔女はその子供に首、口と手を当てる。
「息がある。温かい。生きているわね」
魔女の目の前に魔法陣が浮かび、辺りを見渡した。
「このままでは魔法協会に見つかるか、研究所行きね。…………であれば」
魔女は目を細くした。
そして手を伸ばす。
「あ、いや、う〜ん」
魔女は自身と少年の身長差を見て止まる。
彼女自身は一六六センチ。
少年は同じ程度。
拳を顎に当て、首を傾げ「どうしようか?」と悩む。
こんなときではあったが、可愛らしさがあった。
そして少年を地面に寝かせる。持っている杖を軽く地面に突く。
すると少年の体の下に魔法陣が現れる。
そのまま浮き上がる。
魔女は少年の前髪を流し、顔を見る。
「行こうか館へ」
二人は都市から姿を消した。




