家族と訓練
私はこの日から一人称を私から俺に改めることにした
(心の中でもなるべく使おうっと)
時は経ち、男の子の体になったわたし・・・じゃなくて俺は
兄から筋肉トレーニングを受けていた
確かに私の体は男性の体に改造され、胸部や尻部は女性の筋肉の付き方から男性の物に代わり
悪の組織の改造人間を生み出す怪人製造の力で筋肉量も一般男性程度にまで増えた
逆に言えば、天才科学者の科学を持ってしても
瀕死の人間を治し性別を変えるのに加えプラスで戦闘能力まで与えることはできなかったのだ
それを補うために、あえて敵であるヒーロー変身ができるように体をいじくった
それでも今の俺でもある程度戦うための力が必要だ、だからこうして
俺の兄、生真生に筋肉トレーニングと戦闘技術の訓練をつけてもらっていった
兄も兄で俺と同じ様にパパが作った悪の組織にメンバーらしく、俺と同じように天邪鬼の人体改造を受けているらしい
・・・同じ様に、しては戦闘力に随分差がある
今やってる模擬戦闘がその証拠だ
俺はお兄ちゃんの拳と蹴りの連撃を木刀で防いでいく、だけど次第に攻撃の速さに防御が間に合わない
防ぎ切れなくなったとこで斜め回転を回し蹴りが自分の腹の真ん中に直撃する
体は吹っ飛ぶように大きく後退し、地面にへたり込む
蹴られた衝撃と痛みが全身に襲ってくる、お腹を片手で押さえてうずくまる
兄は怪人化していなくても素の力でそこそこ戦える
まぁ・・・戦闘力の差は仕方ないか
兄は子供の頃から武術を習っていたからだし
「いたた・・」
「大丈夫か」
「全然平気」
立ち上がれない俺をお兄ちゃんは手を引っ張って立ち上がらせてくれた
立ち上がった時、まだ足元がふらついたので
肩を両手で支えられていた
「しかしいききなり驚いたぞ、朝起きたらお前が一回死にそうになって妹じゃなくて弟になりましたたなんて言ったからな!」
「あはは、ごめんお兄ちゃん」
お兄ちゃんはちょっ呆れたような怒ったような顔で言った
そのことに関しては苦笑して謝るしかできない
「まぁ、お前がそれで良いっていうなら何も言わん」
そう言うとお兄ちゃんは、肩の両手を突き飛ばし気味に離す
それで腕を組んで、笑顔を作りながら
「それに・・・前より明るくなったしな」
「・・・お兄ちゃん」
そう行ってくれた
なんか、そう言われると嬉しくなってしまう自分がいた
前までは本当に暗かったから・・・
私がちょっとでも変われた・・・ってことを思うことができるだ
「でも翼・・・いきなり男の体になってこれから大変だぞ」
「え?」
俺はお兄ちゃんに言われた意味が分からず、頭に?マークをうかべる
そんな俺の姿に、お兄ちゃんは溜息をついて説明を始める
「え?じゃねぇよ、お前分かってんのか?」
「これからヒーロー養成学園で同じ男と寮生活だぞ」
「小便の仕方とか分かってるのかって聞いてるんだ」
そう言われて、俺は朝の出来事を思い出した
「・・・あ!あああ!・・・そういえば朝したら飛び散った!」
そうだ、私・・・俺は改造されたその翌朝
男の子の体でおしっこの仕方が分からなかったから
ズボンを脱いで手ぶらりんで小便器に放尿したら・・・
思い切り飛び散ったのだった
とりあえずそれ以降は洋式便器に座って用を足すとでなんとか事なきを得たけど
「・・・おいおい先が思いやられるな、今からやり方教えてやるよ」
そうお兄ちゃんから言われるがまま、男子便所に向かう
その後、教えてもらった
・・・男の人って手でおちんちん持ってコントロールするんだ
知らなかった
翼の聞こえない様に生はぽつりと呟く
「エロ本とか見た時のアレとか・・・大丈夫か翼」
(こいつは俺が守ってやらねーといけないんだ)
「寮生活するなら、ちゃんと男の子っぽい服装も選ばないとね」
またある日、私・・・俺のお姉ちゃんである生真愛が
俺の服選びを手伝ってくれていた
ショッピングモールの売り場で二人であれやこれや選んでいた
「制服があるならそれが一番手っ取り早いけど、休みの日とかね」
「これとか良いわね、あの娘と揃えていきましょう」
選んだのは、黄色のフード付きのパーカーだ
確かにこれならある程度男性っぽく、もし表情とかで心は女ってバレそうになる時とか
いざって時顔も隠せそうだ
「お姉ちゃん付き合ってくれてありがとう」
「別に良いよ・・・妹だろうが弟だろうが手のかかる末っ子なのは変わらないし」
(お父さんも生も私も翼が大好きだから・・・がんば)
「まずはヒーロー養成学園もとい学園に入学おめでとう翼・・・」
時に場所は代わり、ここは悪の組織の本拠地が置かれてる地下空間
その大広間
玉座に座ってるのは私・・・俺のパパである生真真
黒いコートを羽織り、顔を鳥の意匠がついたマスクで隠してる
「いや、幹部コードネーム:ダブルウィングよ」
コードネーム:ダブルウィングこれは俺が裏の世界で活動するための名前
「いいか、心して聞けこれは潜入捜査である・・・とても大事なことだ」
パパは真剣に神妙な面持ち(多分眉間に皴がよってる)で俺に言うけど
俺は、心配症のパパを安心させるために
「分かってるって、戦い方はお兄ちゃんに、ハッキング関係も天邪鬼さんにバッチリだよ」
今日までの成果を報告書に纏めて話していた
天邪鬼さんに電子機器の使い方や情報の抜き取り方も習った
ヒーロー側に潜り込む為のスパイ訓練は十二分に身についたと自分で思える
「ああ、ではさっそく学園に溶け込みヒーローに関する機密情報を盗んでくるがいい」
「あ・・・む、掛け声はそうだな・・・」
「アルケミスト(錬金術)だ」
アルケミストかぁ・・・なんかかっこいいし悪くないかも
俺は、手を胸に当て宣言する
「アルケミスト!」
(まだ幼い翼に危険な事はさせられない、政府の手が及びにくい独立行政法人のヒーロー学園ならばいざという時に逆に娘を保護してもらうことも可能だ)
(悪の組織の頭領なのに甘いな俺は・・・所詮一人の親だという存在だいうことは否定できんか)