表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
えんま様のご近所さん  作者: 粟飯原 勘一
2章:煉獄荘の引きこもり
7/27

6:煉獄荘の引きこもり(前編)

なんとなく存在がほのめかされてきたキャラがついにベールを脱ぎます。

 

 草葉の部屋のあと、スーパーで買い物を済ませた二人は、煉獄荘へと戻ってきた。

 弥里は部屋に入りながら「じゃぁ、暇なときはおいで」と言い残していった。

 明日は徳の部屋で徳でも貯めようかと美沙子が自室に入ろうとした、その時。

 どこからか視線を感じた。

「…ん?」

 ガチャン。

 203号室の少しだけ空いていた扉が閉まった。

「…?」

 今、例の『都さん』に見られたのかな。

 美沙子はそんなことを思いながら、部屋に戻った。

 

 夕食を終えると、美沙子は弥里の部屋に向かう。

「弥里さーん!」

「はいよー、開いてるから入ってー」

 ガチャリ。

「お邪魔します~」

 美沙子は弥里の部屋に入り、先ほどの203号室の話をした。

「なるほどねぇ…都、ほとんど私もあってないのに、新入りは気になるのかな」

「ほとんどってどのくらいですか?」

 相当長い間だろうなと思いながら、美紗子が聞く。

「ん? 都がここに来て歓迎会をやった翌日からだよ?

 ご飯に関しては、天国共用領域にコンビニあるから、アタシとか天子ちゃんが寝静待った後、何か買いに行くみたいだけど」

「え、えぇ!?」

 ほとんど新入りのやってこないこの世界で、歓迎会をやった翌日から人と会っていない。

 かなりこじらせた引きこもりじゃないだろうか。

「…なんで都さんはそんな引き籠ってるんですか?」

「私もよく知らないんだ。

 知ってるのは本人だけ…あ、閻魔ちゃんは少し知ってるのかな」

「…」

 美沙子は昔引きこもりになった友人を思い出した。

 その人物は、何かの原因で引きこもって、そのあとも過保護な両親に養ってもらってしまったため、抜け出せなくなっていた。

 しかし、"都"に関してはどうだろう。

 親がいるわけでもない、どうやら弥里や白河が世話を焼いているわけでもなさそうだ。

 何しろ、深夜になればコンビニに出かけて生活していることから、徳がないわけでもなさそうだ。

「まぁ、アイツは徳はあるんだよなぁ…それなら生活には困らないしな」

「…」

 どうやら現世では徳をためていたのに、ここにいるらしい。

 徳をためているのに、ここにいるというのは、ますますもって不可解だ。

 しかし、それを確かめるすべもなく、その日は自室へと戻るしかなかった。

 

 それから数日、美沙子は徳の部屋に行っては徳をため、スーパーで買い物をし、部屋でくつろぐ、という日々がだんだん日常になるのを感じた。

 その間の徳の部屋で、以前、最初に徳をためるときに財布を一緒に探した女性が、車の下に落としてしまった鍵をとれずに困っているところに遭遇してまた徳を貯めることに成功したのだが、その際彼女から「また、会えそうな気がするわね」と因縁めいたセリフを言われたりもしたが。

 

 そうこうするうち数日が経過した。

 いつものように徳をため、証明書を白河に渡した後、美沙子は自分の部屋に戻った。

 すると、やはり都の部屋のドアが少し空いている。

「…あの」

 意を決して呼び掛けてみるが、今日はドアは閉まらなかった。

「…都さん、ですよね。

 初めまして、新入りの美紗子です。

 お夕飯、一緒に食べません?」

「…」

 すると、ドアがスーっと開く。

 そこには誰もいなかったが、どうやら、入れ、ということらしい。

「…失礼しまーす」

 今まで、弥里も白河も入ったことのないらしい、203号室。

「…どうも」

 一瞬、幽霊でも立っているのかと思った。

 考えてみれば、お互い死者なのだから幽霊に近いことは近いのだが。

 その幽霊氏が、弥里曰くの"都"であるのだろう。

 長めの黒髪はカットこそされているものの、前髪が非常に長く、顔を隠そうとしているようでもあった。

 机の上にはパソコンらしきものが置かれており、どうやら情報系には明るいようである。

「…」

「…」

 数分の気まずい沈黙の後、都は笑いもせずに応えた。

「…夕飯、一緒に食べるんでしょ?

 コンビニ、行く?」

「…あぁ、いえ、作りますよ。

 少し多めにお野菜買ってきましたし」

「…おにく」

「え?」

「お肉食べたい。野菜よりお肉食べたい」

 煉獄荘の先輩ではあるものの、見た目は美沙子より少し幼いような外見をしている。

 そして、言っていることも少し幼いようだ。

 しかし、会話が成立したことが美沙子は少しうれしかった。

「じゃぁ…スーパー、行ってきますので少し待ってくださいね」

「…いく…私も行く」

「…はい、一緒に行きましょう」

 そう言って二人は煉獄荘を出て、スーパーへと向かった。

 

  ~To Be Continued~

というわけで引きこもりが登場です。

彼女もかなりの重要キャラになってきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ