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えんま様のご近所さん  作者: 粟飯原 勘一
1章:死んだら驚いた
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4:煉獄荘の新人歓迎会


「都はこないって」

 煉獄荘に戻り、閻魔様、白河と美沙子が弥里の部屋に先に入っていると、後から入ってきた弥里がこう答えた。

「都?」

「ああ、203号室の住人だよ。いわゆる引きこもり体質でさ」

「あー…なぜ私の担当する待機の間の人は問題児…もとい、ちょっと問題がある人が多いのか…」

 閻魔様は頭を抱えた。

「いやいや、アタシと都と一緒にしないでほしいね、閻魔ちゃん」

「…」

 しれっと数に入れられた美沙子も少しジト目で閻魔様を見る。

「あ、スイマセン神原さん…あなたには今のところ問題があるわけじゃなくて、あのその、あうあう…」

「…あはは、大丈夫ですよ。問題児な自覚もありますし」

 しかし顔を真っ赤にした閻魔様もかわいいなーと思いながら、美沙子も笑った。

「それにしても、あの閻魔ちゃんがアタシと都以外を待機の間送りにするとはねぇ」

「へ?どういうことですか?」

 弥里の意外なセリフに美沙子が反応した。

「閻魔ちゃんさぁ、こう見えて結構厳粛な人なんよ」

「えぇ!?」

「…驚きすぎですよ、神原さん」

 さすがのオーバーアクションに、白河が苦笑しながら答えた。

 閻魔様はといえば「厳粛、なんですかねぇ」と恥ずかしそうにうつむいた。

「閻魔ちゃん、結構裁きがうまくてさ、徳がギリギリでも天国に行ける人は天国に、少しでも徳が足りない人は不徳を理由に地獄から現世に戻すっての結構徹底してんのさ。

 で、それに反して、待機の間に送られたのがアタシと、さっきちらっと言った都って子と、神原ちゃん…そのぐらいしかいないってワケ」

 そういえば、白河もそんなこと言っていたと美紗子は思い出す。

「閻魔様は、実は閻魔界の天才児なんですよ」

「ちょ、白河さん!?」

 お酒が入っているためか、ニヤリと偽悪的な笑みを浮かべて、白河が説明をつなげた。

 閻魔様が慌てている。

 この世界では閻魔は、地蔵菩薩の出世先とされており、あまたの地蔵菩薩のうち、経験を積んだものが閻魔に昇格する。

「天才児?」

「そう…何を隠そうこの閻魔ちゃんは、地蔵菩薩から閻魔への昇格の最年少記録を持ったエリート閻魔様なのだ!」

 弥里も嬉しそうに閻魔様を紹介した。

「…と言っても、アタシや神原ちゃんなんかよりよっぽど年上だけどね」

「…すごい人なんですね、閻魔様」

 ぎゅー。

「わっ…神原さん! …く、苦しいですよ…」

 閻魔様は、美沙子の抱擁に対し、口ではすぐ離れてほしそうなことを言っているが、抵抗はしなかった。

「まぁそんなわけで、若い閻魔様に、乾杯!」

 弥里はそう言って白河とグラスを合わせた。

「そういえば…閻魔様」

「なんですか?」

 美沙子の腕の中でなすが儘になっている閻魔様に、美沙子が声をかけた。

「閻魔様ってどこに住んでるんですか?」

「…え? 天国の中心街のはずれのアパートですけど…」

「アパートってレベルじゃないじゃない!」

 弥里が茶化した。

「そうですよ。そもそも一等地じゃないですか」

 白河も弥里を援護する。

「…そんなことないですって!」

 恥ずかしがっている閻魔様をしり目に、美沙子はガッツポーズをとる。

 

「閻魔様、私…頑張って徳をためて…、閻魔様のご近所さんになります!!」

 

「…」

 白河は一瞬固まったが、すぐにうれしそうな顔になる。

「! 言うね、神原ちゃん!」

 弥里は楽しそうに親指を上げた。

「はい!」

 美沙子は誇らしげに手に持ったビールを掲げ、一気に飲み干した。

「…ええ、がんばってください」

 一瞬言葉を失った閻魔様も、柔和に微笑み、歓迎会はささやかながら和やかに終了した。

 

 ~To Be Continued~

ようやく主人公が煉獄荘の一員になりました。

一応煉獄荘の部屋割りは以下の通りです。

 

101号室:白河天子(管理人室)

102号室:空室

103号室:空室

201号室:天野弥里

202号室:神原美紗子

203号室:"都"(今回の冒頭に名前の出ていた人物)

 

となっております。

"都"については後々出てきます。

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