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えんま様のご近所さん  作者: 粟飯原 勘一
3章:煉獄荘の悲喜交々
14/27

12:都の特技と将来

 

「都さーん…」

「あ、マイスイート美沙子」

「誰がマイスイートですか!」

 海水浴から帰って数日。

 徳の間から帰ってくるついでに茶菓子を買ってきた美沙子は、弥里がいないのを確認し、都のところに来た。

「だってマイスイートだしぃ」

「…まぁいいです。

 お茶菓子買ってきたんですけど弥里さんどうしたんですか?」

「知らないよ?

 弥里、時々いなくなっちゃうけど、すぐ帰ってくるじゃん」

「それもそうですね…まぁいいです。

 お茶にしましょ」

「しようしよう!」

 都が子供のようにはしゃぐ。

「ところで都さん何やってたんですか?」

「あー…いや、何しろ暇でさぁ。

 疑似証券取引してた」

「…はい?」

 美沙子が来るまで部屋でパソコンに向かっていた都からは、意外なセリフが出た。

「徳さえ溜ってればここ、外に出ることもないでしょ?

 せっかくネットつながってて、株価も判るからさぁ、『あれ買った、これは買わない、それが上がった、あれが下がった』って遊んでた」

「…なんでそんな不毛なことを…」

「暇だから」

 あっけらかんと答えるが美沙子に一つ疑問。

「…って、都さん、結構頭いい?」

「そんなオバカな娘を見るような目はやめなさい。

 これでも生前は一流企業のOLよ?

 出身大学は…」

 そこで都は、知らない人はいないであろう大学の名前を挙げた。

「ここの経済学部」

「ギャース!!」

 そこは美沙子が『憧れるけど、入れないなぁ…』と思ってあきらめた大学だった。

「はっはっは! やればできるのよ私は!」

「…ソノヨウデスネ」

「何よその棒読みは!

 さっきの株取引ごっこにしたって、実際買ってれば儲けられたんだからね!!」

 と、パソコン中に作られている表を見せられ、説明を受ける。

「…すごい、プラスだ」

「でしょ?」

 ドヤァ。

「ふぅむ。素晴らしいですね」

「素晴らしいですよ」

「…あれ?美沙子、素晴らしいですよってなんで二回言うの?」

「私一回しか…」

「あぁ、私が一度言いましたから」

「そうですか…っていつからいたんですか、白河さん!!」

「そうですねぇ、都さんが疑似証券取引をやっていたと言っていたあたりから」

「結構最初!!」

 美沙子が突っ込んではいるものの、都はそこまで驚かなかった。

「というかなんで都さんそんな落ち着いてるんですか?」

「…まぁ、白河さんだし」

「ですよねぇ…」

 わからない、絶対わからない。

 美沙子がセルフツッコミを入れる。

「けど…都さん、これは才能ですよ。

 数字を扱うのは得意なようですね」

「まぁ、生前は経理でしたし」

「…なんか都さんがいきなりすごい人みたいに思えてきた…」

「みたいって何さ!」

「…都さん」

「…はい?」

 美沙子と都のボケとツッコミのような掛け合いがないかのように冷静な声を白河があげる。

「実は私、勉強したいことがあるんです。

 でも、閻魔様の秘書と、煉獄荘の管理人、二つの仕事があり、なかなか勉強ができないんですよ」

「はぁ…」

 何を言い出すんだろうと都も美沙子も思わず言葉を呑み込んだ。

「そこで」

 白河が都にずいと近づく。

「!?」

「煉獄荘の管理人代理になってもらえませんかね…後々、管理人を任せる前提で」

「…煉獄荘の、管理人?」

 意外な言葉に、二人が白河の言葉を待つ。

「ええ、煉獄荘の管理人としての仕事、都さんの情報まとめの能力を見て任せられると思いました。

 それに…」

 そして白河は美沙子に聞こえないように都にだけつぶやく。

「…美沙子さんにかっこいい姿を見てもらえるかもしれませんよ。

 仕事してる姿を見てもらえば」

「…やる、私やるわ!」

「…?」

 最後、なぜ都がやる気を出したのか、美沙子には最後までわからないままだった。

 

 こうして都は、煉獄荘の管理人代理、将来的な管理人になるため、実践を積むこととなった。

 

  ~To Be Continued~

都も性格が固まってきました。

そして実はこの話から、「煉獄荘の将来」が少し垣間見えるようになります。


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