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えんま様のご近所さん  作者: 粟飯原 勘一
3章:煉獄荘の悲喜交々
13/27

11:煉獄荘夏のレジャー(後編)

 

 昼過ぎからまた海を満喫し、今度は夜。

「久しぶりに見ましたねぇ…」

「本当…」

 夏の夜、海辺でやるといえば花火である。

「奇麗ですねぇ…」

 夏、夜の海岸に、短時間のみ咲く、化学反応の徒花。

「…」

 一瞬咲いて、すぐに終わってしまうその花に、美沙子は人のはかなさを見た気がした。

「神原ちゃん、なんか神妙だね」

「…あ、いえ…」

「ダメだよ美沙子!

 こんな時は楽しまなきゃ!!」

「…都さん…そう、そうですよね…ごめんなさい」

「…美沙子?」

「神原さん?

「美沙子さん?」

「神原ちゃん…?」

「…あ」

 メンバーから視線が集まっていることに気づき、そして気づいた。

「…な、なんで私泣いてるんだろう…?」

 無理に笑顔を作ろうとしたが、涙は収まらなかった。

「…」

「…あ」

 その時、座っていた美沙子は何かに包まれた。

「…閻魔様…?」

「美沙子さん、私、あなたがここにきてよかったと思ってます」

「…閻魔ちゃん?」

「ここはあなたが来るまで閉塞感に包まれていました。

 しかし、あなたが来てから煉獄荘は明るくなりました…あなたのおかげですよ」

「…っ」

 そんなこと、と言おうとしたが、涙が邪魔してうまく言葉にならなかった。

「…いつまでも、とは言いません。

 あなたが天国に住むまで、ここで過ごしてください…」

「…はい…」

「神原ちゃん…そうね」

 弥里が嬉しそうに答えた。

 しかし…。

「私は永遠に住みたいわ!」

「…さん…」

「ははっ、都さんらしい!

 けど、閻魔様、ありがとうございます、私、いつか閻魔様のご近所さんになります!」

「…ええ、お待ちしています」

 

 そして花火が終わり、車でメンバーが引き上げ始めた。

 後部シートで都、閻魔様が寝息を立てる中、美沙子は少し目を覚ました。

 運転席の白河、助手席の弥里が何やら話しているのが聞こえた。

「…そろそろ、よさそうですね」

「もちろんさぁ、アタシだって考えてるわけよ。

 天子ちゃんの後釜決まってないとさぁ」

 弥里が普段、白河と呼ぶところで「天子」と呼んだのが少し気にかかった。

「けど、それは…」

「ええ、神原さんは素質十分です。

 閻魔様との相性、閻魔様へのリスペクト。

 後は本人のやる気と徳の問題ですね…」

 美沙子はどうやら何かの素質があるようだが、徳が足りないのが難点のようだ。

「…少なくとも後者は問題ないでしょうね。

 徳の部屋に通って順調に増やしていますよ」

「…あの試験、難しすぎるのよね…」

 いったい何のことかわからないが、美沙子はまたまどろみの中に紛れていった。

 

  ~To Be Continued~

夏のレジャーは海水浴と花火でした。

美紗子をなぜ泣かせようと思ったのかは私にもわかりません。

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