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えんま様のご近所さん  作者: 粟飯原 勘一
3章:煉獄荘の悲喜交々
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9:徳の部屋 中級

 

 美沙子が待機の間に来てから、数週間がたった。

 その間、都も引きこもり状態から抜け出し、弥里や白河とも「都に天国に行くように促さない」と約束したため、二人や閻魔様とも打ち解けている様子で一安心していた。

 しかし、天国住人の閻魔様や白河はもちろん、なぜか徳をたくさん持っている弥里や都と違い、美沙子は日々の生活も含め徳の部屋に毎日通うようになっていた。

 都からは「私が養ってあげるよ?」とまで言われたが、さすがにそれは…と思いながら丁重に断った。

(なぜか断った後残念そうな顔をされた。)

 

 そんなわけで美沙子は、天国に行くのとともに、待機の間で暮らすため、初級の部屋で"1日2善"を目標に徳を積んでいた。

「…」

 その日も順調に初級の徳を2つ積み、まだいつもの時間よりも早い。

 そして美沙子の視線の先には目の前の初級の間ではなく、隣の中級の徳の部屋に向いていた。

「…よし」

 そして、意を決して、中級の徳の部屋へと美沙子は入っていった。

 

「えぇーっと…」

 美沙子が気づくと、どこかの駅の前だった。

 ここに誰か困っている人がいるはずである。

「あれぇ…えぇーっと…」

「…あ」

「あ…よくお会いしますね」

 そこにいたのは初級で最初に財布を探した女性だった。

「どうしました?」

「○○駅に行きたいのだけれど…で、旦那からスイカっての借りたんだけど、どうすればいいのかわからなくて…」

 聞いてみると、普段は電車にほとんど乗らないらしく、Suicaの使い方がわからなかったようだ。

「えっと…チャージはしてあります?」

「チャージ?」

「…わかりました、そこからですね…貸してもらっていいですか?」

「え、あ、ハイ…」

 そう言って彼女は美沙子にSuicaを渡す。

 一応スイカは使ったことがある美沙子は、どれだけチャージされているかを調べる。

 とりあえず、○○駅までの往復程度の金額は入っていそうだ。

「よし。

 とりあえず、チャージは心配ないようなので、改札に行きましょうか」

「え、あ…ハイ」

 そして改札前に来ると、タッチする部分にスイカをかざせば乗れることを教える。

「…ありがとう…あなたには世話になりっぱなしね…」

「いえいえ、好きでやってることですから」

「そう…じゃぁありがとうね。

 いつか、お礼するわ」

「ええ、またお会いしましょう」

 そう言って彼女が乗る電車の階段に消えると、美沙子も部屋の前に戻ってきた。

 

 こうして美沙子は初の中級の徳獲得ができた。

 この日以降、美沙子は中級にも挑戦するようになった。

 

  ~To Be CONTINUED~

 

短い話が続ていますが、ここから章替わりなので、そのプロローグ的な話になります。

ここから日常回がしばらく続きます。

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