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六話

夜が明けた。


眠っていたようだ。


朝の空気を吸い込む。


動こうとすると、白く肉付きの丁度いい太腿と、ふくよかな乳房を寄せて眠るボタンが傍らにいた。


豊満な乳房の先端は薄い桃色に染まり尖っていた。まったく興味は湧かない。


太腿が、赤い鱗が所々覆われている。

長い尻尾は先端までワインレッドの鱗で包まれていた。

先端のヒレはルビー色だ。


「起きろ」


オレは寒そうだと思ったので、ボタンを起こすことにした。

丸くなっていたボタンが可愛らしい声を上げる。


「うみゅー……ひゃああああん♡」


顔を真っ赤に染め、大きな目をうるうるさせて慌てて胸元を隠している。

捲れたワンピースも下へとおろす。


オレは全く興味がないので、一部始終を見届けて話を続けた。


「寒くないか」

「ふぇえ、はじゅかしいものを見せてしゅみましぇん……」

「寒くないならいい。ところでおまえ、ヒト属じゃないな」

「!!あ、しゅみましぇ……ふみぃ……ひめあ……なんれふ……」

「キメラの奴隷か。苦労してきただろう」

「はいぃ……ずっとぉ、ひとりれぇがんばったんれしゅけろぉ……ふぇえ……」


尻尾を隠しながら悲しそうにうつむくボタンは、大粒の涙をこぼした。


潤んだ目を閉じる彼女を、放っておくことは出来ない。

オレも追放されてまもないから、心に傷を負っている。

こいつの心もわかってやれるかも知れない。


「オレは調教師だ。専属契約を結ばないか?」

「ふぇえ〜!?」


びっくりしたとでも言うように、ボタンは袖の長い手で口元を押さえる。

いちいち大袈裟なやつだ。

小動物のようだな。


「はにゃあ、でもぉ……専属契約すゆとぉ、簡易契約の制限が出来ちゃいまふよ?」

「構わない。オレは無能だとパーティを追い出されたばかりだ……お前の孤独もわかってやれるかも知れない。一緒にくるんだろ?」

「ふぁあ♡ご主人様にあえてえ、ぼあんはしああへれふぅ……♡」


顔を真っ赤に染めて、ボタンは嬉しそうに目を潤ませた。

心なしか恍惚としている。

やれやれ、キメラはどいつもこいつも純粋過ぎるぜ。


「噛め」

「ふぁあ……♡ご主人様のにおいがしまふぅ♡」


オレは首を差し出した。


ガリィ!


肉に牙がめり込む。

皮膚を食い破る痛みは耐えるしかない。


これが専属契約だ。

「私は貴方を殺しません」。

「私は貴方を信じます」。

実に簡単に済む。


この契約は同意の下行われるのが法だ。

首を食い破り殺す被契約者は、直ちに処刑される。


こうしてオレたちの契約は完了し、ボタンはオレの専属契約したキメラとなった。

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