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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

極殺(エクストリームエクスキューション)  ~スーパーデンジャラスな俺様がオーバードライトスピードで宇宙を駆け抜けウルトラワルワルな超級アークエネミーを極殺に処すだけの話~

ThumperというゲームのPVを見て、インスパイアされました。

PVを見ただけなので、中身を知りません。

ひょっとしたら丸パクリになっている可能性もあるかも。

 

 俺は気が付くと土の中にいた。


 なんかモグモグしてた。つまり土を食ってたのかもしれない。

 ウマクネーぜ。もっと旨いもんモグモグしてーぜ。

 だが、味とか関係ねーぜ。もっとモグモグしてやるぜ。


 俺はとにかく何でも喰いまくったね。

 育ち盛りの食欲魔人だからね。

 土や木の根っこ、石も岩も。それどころか、同じ地中にいる生き物も食ったね。モグラみたいなのや、虫の幼虫。そして……。

 喰って食って食いまくった。

 俺の中にエネルギーをため込まないといけないしね。そして、俺の同族も同じようにエネルギーをため込みまくってた。


 だから、喰い合ったね。

 なぜなら、そういうものだから。その方が効率がいいから。一人でエネルギーを食い集めるより、皆で喰い集めて、後で合わせた方が効率いいからね。


 何とか、俺は同族を食えたね。喰われた同族は俺に「頑張れよ!」って言ってくれたぜ。

 おうよ。頑張るぜー!

 そんで、俺は同族も食いまくったね。共食いパーチーだぜ!

 俺はベリー運が良かったね。俺よりでかいやつや俺より硬いやつもいたが、なんとか俺が食ったね。でも、体はボロボロだぜ。でも、変態するから問題ねーぜ。

「あとは頼んだぜ!」「しっかりやれよ!」「あんたならやれるわ!」「イエー! やっちまえー!」

 俺に喰われた仲間たちが言ってくれたぜ。


 そして、とうとうあと1匹になった。お互いくんずほぐれつ食い合ってたね。お互いの体に食らいつき、肉をかじりつき、お互いの肉体をむさぼり合った。

 もうこんなのセックスだね。

 むしろ、それ以上だったね。

 そして、俺が生き残った。もうだめかと思ったね。

「あなたサイコーだわ! 一発かまして来てちょうだい!」

 最後の仲間がそう言ってくれたぜ。


 同族を全員喰い切った俺はそのまま眠った。そんで蛹になった。

 蛹の中で体がドロドロにとろけたぜ。ドロドロの中で仲間たちの夢を見た。この世にもう仲間はいないけど、溶けた俺の体の中にはみんながいる。

 孤独じゃねーぜ。さみしくねーぜ。






 もうどれくらい経っただろうか。

 ドロドロだった俺が徐々に新しいフォルムになってきたぜ。


 俺様リターンズ! そして、俺様ビギニング!


 そして、俺様はとうとう変態を終え、蛹の殻をぶち割って、スーパー再爆誕してしまった。

 殻から這い出て、まだフニャフニャの体を空気に晒して乾かすぜ。

 そんでそのうち体も乾ききり、ついに俺様のデンジャラスボディが完成することになるのであったのだ!


 このつぶらな複眼にきりっとした角には、メスどもも思わず産卵しちまうぐらいのデンジャラスさが漂ってるぜ。

 6本のマジヤバデンジャラス足に、時空を引っ掻くことが出来るすんげー鋭いマジヤバデンジャラス爪。

 前羽を展開し、スーパー俺様ウイングを広げた。時空振動を発生させることが出来るガチヤバデンジャラスウイングだぜ。


 体は、鈍色に輝く銀だぜ。しかも流体時空工学に元ずくマジヤバデンジャラススタイリッシュフォルムな抜群のスタイルなわけね。

 やっぱ、俺くらいの本物のオスになると、シルバーを侍らせることが出来るわけよ。わかる? シルバーを身に付けただけでイキるガキとは違うのね。モノホンはシルバーの方から傅くのよ、わかるぅ?


 俺は後ろ脚だけで立ち上がる。俺様、大地にいきり立つ。

 だが、いつまでも重力に魂を引かれるわけには行かねぇぜ。

 宇宙そらが俺を呼んでるんだぜ。




 スーパー俺様ウイングで飛んでもいいんだが、大気圏内、しかも地上に接地した状態で羽ばたくには流石にデンジャラスすぎるぜ。

 俺の翼はデンジャラス。

 だから、別の方法で飛び立つぜ。

 その方法とは……。


 へ、だ。


 わかんねぇか? 屁だよ。


 俺様のおならは空を飛べるぜ。

 デンジャラスぅ~↑。




 俺様の胸部のエアインテークが開口し、内部のファンが回転を初める。


 キュイーン


 高速回転を始めたファンが甲高い音を立て、内部のコンプレッサーに空気を送り込む。

 来てるぜ~! 高まってきたぜ~!

 ヤベ! 尻がムズムズしてきた。ケツのエギゾーストノズルがキュンキュンしてる!

 コンプレッサーで十分に圧縮された空気に俺のお腹のグルグルし始めた。

 酸化剤と混ざった混合気が燃焼室に到達する。


 あ、あ、あ、あ~。

 臨界突破じゃぁ~。


 屁、点火!!


 どごぉぉ!

 デンジャラスな轟音とともにケツのエギゾーストノズルから高温の排気炎を吹き出す。強烈な推力にケツを叩かれ、俺の体が地面を離れ、浮かび上がった。

 ファンをさらに回転させ、出力を上げる。

 俺は腹を力ませた。

 行くぜぇー!


 屁、出力最大っ!!


 ドギュイィィィン!!


 俺様の体がウルトラ凄まじい勢いで垂直に加速していくぜ!

 グングンと地面が離れていき、高度をガンガン上げていく。

 俺の体は大空を突き破らんばかりにかっとんでるぜ!

 さらに、エギゾーストノズルを絞り込み、屁の圧力を上げていく。


 ドゴォン!


 音速の壁をあっさりと突き破り、マジヤバソニックブームを発生させる。

 俺様のデンジャラス角が大気を切り裂き、雲に大穴を開けて、はるか上空を駆け抜ける。

 音速を超えたところで、ターボファンとコンプレッサー、タービンのブレードを引っ込め、まずラムジェットへと移行する。そこから、さらにエアインテークとインレットボディを変形させて、スクラムジェットへ。

 スーパーデンジャラスな領域に到達した屁は、俺様を音速の彼方のさらなる向こう側へと導いていくのだったぜ。


 ゲキヤバスピードで高度を上げ、対流圏を抜けて、成層圏へ。

 宇宙が、見えてきたぜ。


 じゃあの、重力に魂を縛られた哀れな生き物たちよ。


 俺は逝くぜ!




 *******************




 甲高い金切り声のような轟音を立てて、その甲虫は飛び立った。

 飛行速度の凄まじさに空気は裂け、摩擦のあまり甲虫が飛び立った軌跡を描くように火が走り、ソニックブームにより、曇天の空にはポッカリと穴を開き、そこから陽光が差し込んでいた。

 推力のみを追求したターボスクラムジェットの轟音は、音速をはるかに超えていたことにより、周囲には遅れて、激しい波紋のように響き渡る。


 地上にいるモノ達は、その音を聞きつけ、ようやっと空を見上げた。

 そこには、雲を突き破り、大穴を開けて、さらに上へと伸びてく、炎の軌跡と壮絶なヴェイパートレイルが描かれた異様な光景であった。

 それを見たモノは一様に恐れを抱く。

 しかし、何が起こったか理解できるものはいなかった。



 今まさに、たった一発だけの、神殺しの弾丸が発射されたことを。




 *******************




 といーわけで、宇宙そらだぜ!

 虫が宇宙を飛ぶ訳ねえだと。

 ふっ、俺様をそんこらの虫と一緒にするなよ。

 俺様ぐらいのスーパーウルトラ虫になると、宇宙くらい飛ぶぜ、マジで。


 なーんてな。ジェットとかロケットっぽいエンジンで使用した俺様の屁は使い切ってるからね。今は慣性航行だね。

 つまり、飛んでるわけじゃないぜ。じっとしてるだけで、すぃーっと体が前に進んでるだけなんだな。


 俺様の複眼には広大な星辰の世界が映ってるぜ。やっぱ宇宙はいいね。身も心も解き放たれて、開放感満点だぜ。

 星々が いっぱい光り デンジャラス。

 ヤッベ。名句キタコレ。俺様ってば感受性豊かなもんですから、すまんね。



 ほんじゃ、そろそろ本気出しますかね。

 俺様の本気はマジパネだぜ!


 まずは、このデンジャラス俺様爪だ。キラーンと光る鋭い爪は時空を引っ掻いたり、切り裂いたり出来るのだ。見ただけでメスが産卵しちまいそうなリアルガチヤバにカッコイイだけじゃないんだぜ。

 ウルトラぁ↑。


 爪をこう、時空に引っ掛けるだろ。そんで、引っ張るわけ。すると、時空が撓むのね。撓んだ時空は元に戻ろうとするから、爪を引っ掛けたままにしておくと、時空がもとに戻る勢いで、体がスイッと前に進むのね。

 そして、俺様にはそんな爪を持つデンジャラス足がなんと6本もあるんだぜ。

 惚れてまいそーやろ!

 惚れてもいいが、俺様はデンジャラスだぜぇ。


 俺様は6本のデンジャラス足をカサカサ動かして、宇宙空間を加速していくぜ。


 カサカサ。


 カサカサカサカサ。


 カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ。






 おっと、無心でカサカサしちまったぜ。


 なに? カサカサしてると、Gっぽいって。


 オイオイ。なかなかいい煽りしてくれちゃってんじゃねーかよ。確かにGパイセンはすげーよ。だがな、進化をやめちまったヤカラと一緒にしちゃ、寛容な俺様がキレちまっても文句は言えねーぜぇ。


 こうやって加速していけば、光の速さまで行けるぜ。

 でも、こんなんじゃ足りねえ。

 全然足りねぇ。

 もっと速さが欲しい。

 光の速さじゃ、遅すぎて、全然たりねぇんだわ。


 といーわけで、いつまでもカサカサしてては埒が明かねーからな。そろそろさらなるネクストステージへ行っちゃう時がきたようだぜ。

 俺様のスーパーデンジャラスウイングが火を吹くぜ。


 前羽をシャキーンと広げ、後羽を展開する。

 透明感が溢れまくりの美しいさ満点の羽だぜ。遮るもののないギラギラの太陽光を受けて、虹色に輝いてるね。


 後羽をブィーンと羽ばたかせる。

 空気がないのに羽ばたいてどうすんだって思ってるか?

 オイオイ、そんなショボ羽とスーパー俺様ウイングを一緒にしてもらっちゃ困るな。

 スーパー俺様ウイングは時空を振動させるんだぜ。

 ショボ羽とは、次元が違うんだよ、次元が。


 後羽の振動に合わせて、時空が振幅してきたぜ。

 ちなみに重力ってのは時空の歪みなのね。質量が大きい物体は時空を歪ませるわけ。

 時空の波を作って、そのビッグウェーブに乗って、宇宙をかっとんで行こうってわけさ。


 でも、ずっと羽を動かし続けてしょぼい時空振動を起こして進むなんて、非効率的じゃね? 俺様のデンジャラスさが全然だぜ。

 じゃあ、どうすんのかって?


 捻るんだよ。


 俺は体の中心を軸にゆっくりと回転を初める。すると時空振動が捻じれ、螺旋を描き始める。その上、俺は飛ぶ軌道を変え円を描くようにグルグルと回った。

 こうすることで、円の軌道が時空振動の螺旋チューブを形成するのだ。何度も何度も同じ場所を体を回転させながらグルグル回ることで、螺旋状の振動をさらに干渉させて、増幅していくのね。そうすることで、時空の振動はより強固な歪時空チューブとなるわけ。

 これがデンジャラスハイパーレーン航法だぜ。

 時空の歪みは重力だって教えただろ。

 これで、俺様の体はほっといても重力に引っ張られて加速していくわけよ。


 十分にレーンが出来たら、今度は体の回転を反対に切り替え、さらに体の重心を中心点にして左右に振り子のように体を揺するのね。

 そうすると、レーンとは別の時空振動が俺の周りを球体状に覆うのだ。

 レーンの上を球体が転がっていくような感じよ。

 時空泡つーのかな

 レーンとは螺旋が逆回転なので、互いに反発し合い、さらに振幅を増幅していくわけね。

 もうここまで来ると、放っておいても勝手にレーンも時空がギャンギャン回転していって、俺様は加速しっぱなしのフィーバータイム突入ってわけよ。


 お次で、最後の仕上げだぜ。

 もう俺様はとっくに定点に対しての相対速度は光速を超えてるぜ。何しろ、時間も空間も歪んだ時空泡の中にいるわけだからね。

 今度は、円の周回軌道をどんどん変形させて、楕円にしていくぜ。

 もう分かるよな。楕円をどんどん潰していくとどうなるか。


 もう限界近いぜ!

 逝くぜよ~!


 限界を迎えた楕円形のレーンの一番狭まった部分を俺様デンジャラス爪で通り抜けざまちょんとつつく。

 するとぷつんとレーンが切れた。切れた端から一直線にレーンが伸びて、真っ直ぐなハイパーレーンの軌道が出来上がるぜ。時空のレーンは通常空間をぶち破り、光速の制限のある位階から光速が通常速度単位になる上位の光速度位階の空間へつながる穴を形成する。

 そして、ハイパーレーンはその先へと伸びて行く。


 ハイパースペース航法&ハイパーレーン加速だぜ~!


 俺様は最後の楕円周回を終え、直線部分に差し掛かる。


 ヒャッハ~! じゃあな、太陽系!


 俺様は上位速度空間へ突入し、超光速で太陽系をあとにするのだったぜ!




 ◆◆◆




 キュピーン!

 レーダーに感あり!


 太陽系を脱したあと、放って置いても加速し続けるので、寝てたのよね。

 寝てたけど、俺様のエクセレント触覚センサーが敵を感知したぜ。

 敵のくせぇ匂いに触覚が曲がりそうだぜ。


 匂い立つなぁ……。


 触覚をビンビンにして敵の様子を探るぜ。俺様のスーパーセンシティブ触覚ソナーからは逃れられないと思うんだな。


 探ってみると、いるわいるわ、ウジャウジャいるわ。


 全長15キロ以上のタイタン級が6隻。護衛艦隊として、全長4キロのスーパーキャリアが10隻にドレッドノート級戦艦と重巡が150隻以上、駆逐艦がもう数え切れんぐらい。ロジ艦も多数完備してるようだな。

 敵さんも本気モードのようだぜ。


 俺様はレーンの先端まで時空泡を移動させて、体勢を整えた。


 しかし、ヤツらの始動も早かった。船体を時空波のバブルで覆い、超大型の超弦波動ジェットノズルから輻射波動を吹き出しつつ加速を開始する。


 このハイパースペースでは光速以上の速度が出せる代わりに質量とストラクチャ半径がとんでもなく増大する。いかにヤツらがスーパークソデカエンジンを積んでいようと、1000メートルを越えた巨体の動きは鈍すぎるぜ。いわんやタイタンをや、だ。


 敵陣を突破できれば、あとは加速勝負だ。余裕でヤツらを振り切ることが出来るぜ。なにしろ俺様のスピードはデンジャラスだからな。


 ただ、問題があるとすれば。

 俺様が攻撃力防御力ともにゼロってことだ。

 そんな能力あるわきゃねえだろ。俺様は飛び専よ?

 スピードタンクのデンジャラススゴ技を見せるっきゃねぇぜ!


 前羽をシャキーンと広げ、後羽を展開する。

 後羽をスーパー高速で羽ばたかせ、加速していくぜ。


 敵さんも全速で加速しつつ、艦隊両翼が左右に展開し、戦闘態勢を整えて行く。ロジとエネルギーリレイとトラクターの量子ビームが艦船の間を繋いでいき、敵艦隊が光の網のように見えるぜ。綺麗だなー。


 あの規模の艦隊が全力機動をしたことによって、色んなものの反動で発生する重力波がハイパースペース内で干渉しまくって、えらいヤバイことになってるぜ。

 俺みたいな小さい虫には巨大な壁となって重力波が立ちふさがってくる。

 艦隊に近づくまでは逆波となり、俺様のデンジャラス機動を邪魔する存在でしかないが、艦隊を突破し裏を取れれば、逆にこの重力波が俺様を加速させるビッグウェーブとなるぜ。

 こいつは乗るっきゃねぇ!


 俺様は全力で加速し、光と波が乱舞する敵の巨大艦隊との距離を詰めていく。


 敵との距離が縮まって行くと、敵さんの主砲から一斉に量子バーストが発生した。俺様のセンシティブ触覚はすぐに気づいたぜ。アイツら撃ちやがった!

 艦隊からスバババババッと砲撃が開始され、こちらに向かって様々な種類の砲弾が飛来する。ハイパースペース内にきらびやかな重力震と量子光が舞い散るぜ。綺麗だなー。

 タイタンやドレッドノートの超大口径の砲撃は、さすがの俺様でもかすっただけでも木っ端微塵に爆発四散すること不可避だぜ。


 俺様はウイングをフル稼働させ、ハイパーレーンを捻じ曲げ舵を切る。

 巨大な重力波の壁の隙間に滑り込むようにレーンを通し、急旋回で砲撃を回避する。

 敵の砲弾が俺様のいた場所を突き抜けていく。

 だが、敵の砲撃は一息つく暇もなく続く。面での制圧射撃を意識した艦隊連続砲撃は俺様が描くハイパーレーンの軌道を寸分の狂いもなくトラッキングしてくるぜ。


 こいつはやべぇな……。ヤツらバカじゃねえ。


 ヤツらがたてた重力波の壁の隙間に差し掛かる頃、その隙間を狙って、ヤツらは全艦一斉砲撃を繰り出してきたぜ。

 俺様みたいな小さいやつは重力波を避けるしかないことを知ってて、この隙間に俺様を追い込んだんだ。

 俺様の進路には視界を埋め尽くさんばかりの弾幕が張られていた。

 へへっ、楽しくなってきやがったぜ!

 俺様は荒れ狂う弾幕の嵐の中に飛び込んでいく。この先にしか活路はねぇ!


 レッツ! パァァァァァリィィィィィィィーッ!!




 ぬぅおおおおおぉぉぉぉっ!!


 全力で旋回した俺様のすぐそばを、超重質量砲弾の雨が凄まじい勢いで突き抜けていく。砲弾により発生した重力波と量子バーストが俺様の体を大きく揺さぶっていった。


 どっせぇぇぇぇい!!


 今度は反対側に全力で舵を切り、鋭角に曲がってる。数十本のハイブリッドブラスターの火線で出来た膜の隙間をすり抜けた。

 ぬあぁぁぁっ! 重力波で火線がネジ曲がってくるから避けずれぇー!

 ブラスターの火線のせいで周辺温度がとんでもねぇことになってるぅー! あちぃー!

 ヒャッハー! 地獄だぜぇ~!


 右! 左! 右右左! 前! 後! 右斜め前! 後前前! 右ィ!!


 ハイブリッドブラスターを避けると、後ろにファイタードローンが付いてきて機関銃を掃射してくる。それをバレルロールで躱しつつ、ミサイルの爆発半径から離脱する。

 駆逐艦からの精密砲撃をかいくぐり、魚雷から逃げ、トラクタービームを避け、砲弾を躱し、体当たりしてくるドローンを振り切る。


 敵艦隊の真っ只中で、乱戦の上の乱戦、大混乱戦だ!

 もはや、俺様でも訳わかんなくなってきたぜ。

 とにかく無心だ。無心で避け続けるのだ。ヤバかろうがなんだろうが、どうにかするしかねぇ。最後はやっぱ理屈じゃねぇ、センスと勘と気合と根性だぜぇ!


 と思ったら、どわあああぁぁぁぁぁぁっ!!!


 目の前にタイタンの巨体が壁となって迫ってきた。危うく衝突するとこだったぜ。ふいぃ~。


 タイタンの船端をなぞるように飛行する。


 あれ? 砲撃がめちゃ薄くなったぞ?


 あっ!! コイツ、旗艦か!!

 旗艦の識別信号のせいで砲撃出来ねーんだ!

 旗艦に砲弾ぶちこむ味方なんざいねーからな。


 旗艦がここにあるってことは、敵陣突破までもう少しじゃねーか!


 よっしゅあっ! いくぜぇ!


 俺様は旗艦の影から飛び出すと、全速力で突き進む。

 前にも言ったが、今度は重力波が進む方に行けばいいので、波に乗ることが出来るぜ。乗ったるぜ、ビッグウェイブによぉ。


 だが、ここで調子に乗るのは素人だぜ。離脱するとき、艦隊から距離を取るときが一番砲台のトラッキングが合いやすいんだ。距離を離す方向に速度をとると、一気に角速度が遅くなるからだ。玄人にはわかっている。

 だから波に乗りつつ、体を左右に振るぜ。


 敵艦隊の旗艦から反対側に抜けると、一気に陣容が薄くなる。やっぱりこっちには艦船の配置が少なかったか。


 重力波のエネルギーを俺様の加速度に変化させたので、この波はだいぶ弱くなってきたな。ということで、次の波に飛び移る。


 敵の砲撃を掻い潜りながら、重力波を飛び移っていく。2つ目から3つ目に飛び移ろうとしたとき、タイタンの1隻が3つ目の波に軸合わせしていた。


 主砲か? と思ったとき、タイタンが中央部から爆発しやがった。タイタン級のジェネレーターを限界超えて回しまくったのだろう。爆発はあっという間に、船体に広がっていく。そして、船首が大爆発を起こした。その大爆発の中から、とんでもなく巨大な質量弾が飛び出してきたのだ。


 全長15キロ以上のタイタン級をまるごと大砲にして直径キロ単位の質量弾を発射するとか!

 イカしたことしてくれんじゃねぇか!!


 こいつはヤバさデンジャラス級だぜ。しかも、後部を切り離しながら、アフターバーナーよろしくロケットエンジン更かしながらさらに加速してきやがる。


 ぬおぁぁぁっ!! 全速力で逃げるぜぇぇ!! けど、向こうのほうが速えっ!!


 トラッキングがあってやがる上に、砲弾の直径がデカすぎる。さらに速度が高すぎるので、質量とストラクチャ半径が増大しすぎだぜ!


 砲弾は第二弾の噴射を行い、再度加速しやがった。グングンと俺様に近づいてきやがる。


 ぬぅ! 横に体をずらして、砲弾を避けようとするが、そうすると横方向に速度を取られるため、相対的に砲弾の速度が上がっていく。


 俺様は、頭の中で最適解を計算しつつ、砲弾の直撃コースから外れるような軌道を描いて出しうる限りの速度で飛翔する。


 だが、ギリギリ、ダメだ!

 どう計算しても、ほんの僅かに足りねぇ!


 砲弾が迫ってくる。俺様はすでに砲弾の端まで到達していたが、体の左端のほんの一部が接触しちまう。それだけで俺様の体は木っ端微塵に吹き飛んでしまうだろう。


 砲弾との距離が縮まり、もう、すぐ、そこまで!


 俺様は左後ろ足を展開。


 一か八か、後ろ足を砲弾の端に掛ける。


 だが、一瞬で俺様の足はひび割れ、内部の腱と神経は吹っ飛んだ。ひび割れた甲殻がバシンバシンと弾け飛んでいく。




 だが、なぜだ……。俺様の足はあの一瞬で爆砕してもおかしくねぇ。なぜ、こんなに粘る!


 俺様の左後ろ足はまだ脱落することなく、つっかえ棒のように俺様と砲弾の間に挟まり、砲弾の力を利用して、まるで梃子のように俺様の体を砲弾の外に弾いた。


『いけ!』


 仲間たちの声が聞こえたような気がした。


 左後ろ足が弾け飛んで、跡形もなく砕け散った。

 俺様の僅かすぐ横を砲弾が通り過ぎていく。砲弾がハイパースペースに発生させる重力波に煽られるが、なんとか体勢を整える。


 この重力波と砲弾に接触した際に発生した加速度が俺様の体を加速させていく。


 この速度は、艦隊に突っ込むときよりも、遥かに高くなっている。まさか、この一戦でここまでの加速をするとは思わなかったぜ。


 さすが俺様! いや俺様たちだぜ!


 もう敵艦隊になすすべはない。そのまま振り切って、さきに進ませてもらうぜ。

 あ~ばよ~、とっつあーん。




 ◆◆◆




 敵艦隊をやり過ごしてから、どれぐらいたったか。


 あれから、俺様は自動加速航行に移行した。

 寝たり、たまにさらなる加速を求めたり、そしてまた寝たり。

 ハイパースペース内をスーパーデンジャラススピードでかっ飛んでいくぜ。




 そうやってハイパースペースを航行していると、敵さん発見。

 どうやら懲りてないご様子だぜ。


 タイタン級のキャピタル艦が6隻だけ、6角形で対角線上の艦がお互いに船首を向き合わせている。

 どういう配置だ? 何してんだ?

 護衛艦隊も付けずに、俺様を止めることなんて無理だぜぇ。


 と思ったら、いきなり全速前進し始めた。あのままじゃ6隻同時に正面衝突だぞ。アイツラ、何考えてんだ?

 とりあえずアイツラを回避するよう進路をとることにする。


 タイタン6隻はそのまま前進し続け、まさにアスタリスクの形で正面衝突した。

 さらに、艦首砲のドゥームズデイバスターをゼロ距離で一斉に発射する。その上、超弦波動エンジンを暴発させた。タイタン6隻を使って盛大な自爆をしやがったのだ。


 とんでもない大爆発が起こるかと思いきや、中心に黒い球体が現れ、爆発のエネルギーもタイタン6隻も飲み込んでしまった。

 それらを飲み込んで、黒い球体は一回り大きくなる。


 アイツら、自爆することで超弦ブラックホールを作り出しやがった!


 真っ黒なその球体から凄まじい重力が発生し、俺様を捉え、引っ張り込む。

 まさか、こう来るとは思わなかったぜぇ!


 とにかく超弦ブラックホールのシュバルツシルト半径に入ったら終わりだ。超重力で体をグシャグシャにされた挙げ句に、事象の彼方へ飛ばされちまう。

 元々回避するよう進路を取っていたとはいえ、スーパースピードでかっ飛んでいたせいで、なかなか舵が取れねぇ。

 更には超弦ブラックホールの重力が俺の体を引っ張って加速させるため、ますます舵がききやがらねえぜ。


 ふんぬりゃぁぁぁぁぁっ!!


 脳の血管がキレそうなぐらい踏ん張ってブラックホールから逃れようとする。その甲斐あってかブラックホールの中心から、俺様の軌道がズレ、徐々に横へ移動していく。

 しかし、ブラックホールに近づくほど重力が強まり、軌道をズラす速度も鈍くなっていく。


 おんどりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!


 黒い穴がドンドン近くなっていく。

 俺様の軌道のズレはじれったいほどゆっくりだ。

 もう、体が引っ張られるとかいう話ではなく、穴に向かって落下していくような感覚になってきた。


 俺様のちょー明晰な頭脳が予測進路をはじき出し、視覚情報として目に映るようにした。

 それによると、進路は指数関数的な曲線の形で超弦ブラックホールのシュバルツシルト半径の端に突っ込んでいた。こりゃあアカンぜよ!

 羽を展開し、時空振動を起こして、重力を緩和させつつ、予測進路を黒い穴から外れるよう全力で横方向へ飛び続けた。


 おかげで軌道が膨らんだがそれでも進路はシュバルツシルト半径の縁に引っかかる。

 パイパースペース内にポッカリと空いた黒い穴が大きくなって迫ってくるようだ。

 甲殻がギシギシと軋むほどの超重力に縛られ、体の自由がきかないぜ。それでも、羽を動かして重力に抵抗していた。


 しかし、あまりの重力に羽がもげそうになり、畳まざるを得なくなった。

 途端に落下速度が劇的に上がる。

 ブラックホールに背を向け、足をチョコチョコ動かす。爪を時空に引っ掛けて撓ませ、そこで発生した重力で移動するのだ。

 だが、ブラックホールの重力が強すぎて、上手く足が動かせねえ。その上、足が一本もげてるのが、でかいハンデとなってるぜ。


 ブラックホールに向かって、グングンと落下していく。

 落下予測進路はどうしてもブラックホールのシュバルツシルト半径をわずかに掠めてしまう。


 しょうがねぇ。もう1本、足を捨てるしかねぇか。


 左後ろ足を大きく動かして、時空を大きく弛めて移動する。ブラックホールの超重力と干渉してほんの少ししか移動できないが、それでもやるしかない。

 何度か足を動かすと、足の付根の関節がビシビシと音を立てて捻られていく。

 最後にもう一度大きく足を動かすと、足は付根からもげて、ブラックホールに吸い込まれてしまった。


 俺様の視界をブラックホールの闇が埋め尽くさんばかりに間近に迫ってきた。

 超重力でもう体が動かせねぇ。

 道中で吸収したわずかばかりの星間物質を推進剤にして、お尻のノズルからロケットの要領で推力を得ているが、雀の涙ほどの距離しか稼げない。


 ブラックホールの縁に向かって猛スピードで墜落していく。

 絶対的な闇が目の前に迫ってくる。


 ブラックホールの縁まで俺様が突っ込んでいく。


 うおおおおっ!!


 漆黒の闇が迫る。その闇とハイパースペースの境界線ギリギリを超高速で掠めるように飛んでいく。


 俺様の背中ギリギリに闇が迫っている。


 もうほんの少しでブラックホールに接触してしまいそうだ。

 俺様の体が徐々にブラックホールに近づいていく。


 最接近点までもう少し!!


 ここを耐えられれば!! 抜けられる!


 しかし、無情にも最接近点で俺様の背中が接触する予測進路が見えた。


 くそぉっ!! 体が動かせねぇえ!!


 最接近点が迫り、ブラックホールに俺様の背中が接触しそうに・・・。


 その時、俺様の背中の前羽の片方が独りでに脱落した。


 硬い前羽の先端がブラックホールに接触。端を超重力に引っ張られたため棹立ちのように反対側が跳ね上がる。

 跳ね上がった前羽が俺様の体を支え、持ち上げる。


 それは俺様の体を押し上げる仲間たちの手のようだった。


 俺様は最接近点を通過し、ブラックホールから遠ざかる進路に乗ることに成功した。

 これはすなわち、ブラックホールの重力を利用したスイングバイ加速に成功したことを意味するぜ!!


 スイングバイで得た加速によってブラックホールの超重力から逃れることが出来た。

 徐々に遠ざかる闇を背に、俺様は羽を羽ばたかせ、ハイパースペースすら切り裂くほどのスピードで飛翔するぜ。


 ありがとよ、みんな。俺様はやってやるぜ。


 ブラックホールスイングバイでさらに加速した俺様は、敵に向かって真っ直ぐ一直線に突き進んでいくぜぇ!




 ◆◆◆




 その後、ハイパースペースを超々高速で巡航した俺様はもうすぐ目標の敵を捕捉できるところまでアプローチングファーストだぜ。


 よーし。敵が見えてきたぜぇ。

 目標の悪神がよぉ。

 グロくてくせぇ姿がよぉ。


 通常空間の中に大きな亀裂が入っている。それはこの世界にこじ開けられた大きな穴だ。その穴から、悪神が入ってこようとしていた。


 ひび割れ、引き裂かれたかのようなその穴から汚く腐ったような白い肉が溢れ出している。その肉はところどころ爛れたようなピンク色が混じっているが、こんなきしょいコントラストは初めて見るぜ。

 その肉に無数の目玉がくっついてる。真ん中付近にはひときわデカイ目玉がギョロリと見開いて、俺様を見ているようだった。


 悪神の肉には手のような形状の部分があり、亀裂を押し広げるかのように、世界の穴の縁にかけていた。手で穴を広げつつ、こちらに身を乗り出しているようだ。


 だいぶ、こちら側に顕現してるみてーだな。


 通常空間にいるヤツには、俺様のデンジャラスバディを見ることは出来ないはずだ。しかし、真ん中の目玉を俺様に向けると、自分の周囲に次元装甲を張ったようだ。


 へっ。やるじゃねぇの。

 お供も連れず、ボッ立ちしてるだけのことはあるぜ。防御力に自信があるってわけだ。


 だが、俺様はデンジャラスだぜぇ。その鼻っ柱叩き折ってやるよ。

 俺様は悪神に軸線を合わせる。


 さーて、ヘッドオン状態に入ったぜ。あとは一直線に突っ込むのみ。

 悪神を補足してから、ドンドンと距離が縮まっていく。

 こちとら光速の数万倍の速度を出してるからな。敵を目の前にして最終加速に入るぜ!


 おりゃああああ!!


 ハイパースペースの距離感でも一気に距離が縮まっていく。

 両前足を展開し、時空を切り裂く爪を伸ばす。


 もう目の前に悪神の姿が迫っていた。

 衝突まで、もう少し。


 俺様の視界が不快な肉塊で埋まる。衝突までのカウントダウン。


 3、2、1。


 ここだ!!


 悪神との衝突の寸前、両前足を振り抜き、爪で時空を切り裂いて、ハイパースペースに穴を開け、無理やり通常空間に突入した。


 そして、通常空間の悪神と激突。


 光速の数万倍の速度で通常空間に復帰したせいで、光速以上の速度が総て余剰エネルギーとなる。しかも、世界の真理から外れたことで発生した原初のエネルギーだぜ。

 その途方も無い衝撃波は悪神の次元装甲を吹き飛ばすには十分だった。


 そして、俺様は悪神の生の肉体にこの角を突き立てたのだが……。


 くそ……皮膚が固くて破れねぇ……。


 まだだ!! まだ押し込むぜぇっ!!


 胸部のエアインテークを開放し、内部のファンを回転させ、ジェットエンジンを吹かす。周囲の激突のときのエネルギーと次元装甲が吹っ飛んだときのエネルギー、そして悪神の放つ神気を総て吸気し、コンプレッサーで圧縮して、ケツのノズルから噴射する。


 神気を利用したジェットエンジンで俺様の体を悪神に押し込んでいく。


 しかし、びくともしねぇ!! 皮膚が破れねぇ!!


 神気が混じった膨大なエネルギーは俺様のエンジンの耐久を遥かに上回る。

 エアインテークは焼け焦げ、ターボファン、コンプレッサー、タービン全てのブレードが溶けていく。コンプレッサーはいつ爆発してもおかしくねぇ。噴射ノズルは焼け付いて調節することが出来なくなってるぜ。


 それでも、ジェットエンジンを吹かし続ける。溶ける端から再生させながら、無理やりエンジンを回転させ、更に出力を上げる。


 もうひと押し! もうひと押しの何かが欲しいっ!!


 だが、激突の衝撃で羽は全部弾き飛んじまってるし、足も前足は両方とも吹き飛んでる。中足の感覚もなくなっていて動かせねぇ。


 エンジン内部のエネルギーがとっくに俺様の耐久値を越えてる。いつ俺様ごと爆発するかわかったもんじゃねぇ。

 だが、知ったことじゃねぇぜ。限界超えても突っ走るしかねぇんだよ、俺様はよぉ!!


 悪神の白い肉体はもうそこにあるというのに。

 俺様は角の先端を睨みつける。角は皮膚を押し込んでいるというのに、あと一歩のところで破れねぇ。


 そのとき、俺様の複眼に、俺様の足が映った。


 右の中足がプランプランと揺れながら、俺様の目の前を漂っている。


 関節は全部はずれ、かろうじて数本の腱で繋がっている。神経は断裂し、俺様に動かすことは出来ない。


 だが、俺様に動かせなくとも、俺様の中にいる仲間たちならば……。


 足はプランと一際大きく揺れたのち、その反動で、俺様の角の先端を引っ掻いた。


 角の先端の時空が、ほんの少しだけ、裂ける。


 ここだあああああぁぁぁぁぁっ!!!


 エンジンの出力を一気に上げ、角を時空の裂け目に突っ込む。


 一瞬だけ角が光速を越え、再び衝撃波を発生させた。

 そして、悪神の皮膚に傷を付け、内部に先端が潜り込む。


 先端が砕け散った。しかし、砕けた衝撃がまた悪神の傷を広げていく。その傷口に短くなった角を突き込む。すると、また角が砕ける。それが更に悪神の傷口を広げるのだ。

 エンジンを吹かして、傷目がけて、体当たりだぜっ!


 次々に角が砕けていき、ドンドン短くなっていく。悪神の傷口が文字通り目の前に来てる。


 角が全て砕け、そして俺様の頭が傷口に衝突する。

 頭部が砕けて行くのを感じ、最後にエンジンを大きく吹しながら、勝鬨を上げるぜっ!!


 見たか!! 腰抜けの神共っ!! 俺たちはやったったぜっ!!!




 エクストリィィィィィィイイイイイムッ!!!!




 *******************




 虫の頭部が砕け散った。

 それでもなお虫のジェットエンジンは止まらない。


 頭部が砕け散ると、次は胸部が悪神の傷口を広げていく。

 ジェットエンジンのエアインテークが弾け飛んでも、エンジンを回し続ける。高速回転するファンはさながらミキサーのように悪神の肉を削った。


 そして、胸部が全て砕けると、腹部が悪神の肉体に到達する。


 その腹部の中から、反神物質が露出した。

 虫の腹部は甲殻以外、反神物質で構成されているのだ。


 反神物質が悪神の傷口に触れる。


 虫の体はほぼ砕け散った。最後に残った臀部の噴射ノズルが反神物質を押す。

 反神物質は悪神の肉体に潜り込んでいった。


 やがて、反神物質全てが悪神の肉体に入り込むと最後の噴射ノズルも砕ける。


 こうして、虫は死んだ。




 悪神の体内に潜り込んだ反神物質が対消滅反応を起こし、さらには連鎖反応を励起させた。それらの反応が悪神の体を崩壊させていく。


 悪神の肉体の表面が沸騰した水のように泡立ち、ボコボコと爆ぜる。爆発は波紋のように悪神の体中に広がっていった。爆発が起こるたび、その衝撃により、悪神は向こう側の世界へと押し戻されていく。

 対消滅反応と連鎖反応が発生させたエネルギーは、さきほど虫が衝突したとき以上の大きさであった。


 悪神は苦しげに身を捩るが、爆発を止める手立てはない。


 神の体を崩壊させて発生した神気を帯びたエネルギーは、悪神が開けた世界の穴をより大きく吹き飛ばすこととなる。

 穴の縁に手をかけていた悪神は、手掛かりを外されたのだ。さらにエネルギーにより向こう側の世界へ吹き飛ばされる。


 世界の穴が大きくなったとはいえ、崩壊する体を抑えることに力を割かれた悪神は、もはやこちら側に戻ってくることなどかなわない。


 大きな爆発を最後に悪神は穴の向こう側に飲み込まれていった。


 悪神が滅んだか否か、この世界から観測することは不可能であった。




 つっかえるものがなくなった世界の穴は急速に元に戻り始める。

 世界の穴といえど水面と同じである。世界の穴が閉じると、今度は閉じたときの衝突と急激な修復の反動で、また爆発が発生した。そして、世界の波紋が拡散していく。

 爆発により、何度も量子と放射線バーストが瞬く。

 この宙域一帯に大規模な宇宙嵐が巻き起こった。


 今後、数百万年以上もの間、この宙域は何者も無事では済まないほどの荒れ狂ったものとなったのだが。


 悪神に世界を蝕まれることに比べれば、広大な宇宙の中ではよくある、ごくごく普通の事象であった。




 *******************




(エクストリィィィィィィイイイイイムッ!!!!)


 空から声が聞こえたような気がして、中島和美は顔を上げた。

 部活のため遅くなった帰宅時間、和美の頭上には真冬の星空が広がっている。


 その星空の中、断続的に何度も強く瞬く星を見つけた。

 パッパッパッと光を発する星に和美は見惚れる。

 やがて、光る頻度が緩やかになると、最後に大きく輝いたのち、その星は消えた。


(あの星、何だったんだろう?)


 不思議な現象に和美は首を捻った。


「どしたん?」


 同じ部活の友達、遠藤政子が怪訝そうに和美に問いかける。


「今、凄い光る星があってん」

「どこ?」

「あそこら辺やったんやけど。もう消えてしもたん」


 和美が星空を指差す。政子も釣られて星空を見上げた。


「凄いキレイやってん」

「うちも見たかったわ」


 二人は星空を見上げる。


 今夜の星空はいつもより澄んでいるような気がした。




 *******************




 悪神の侵略により、世界は崩壊の危機にあった。

 この世界の神々は悪神に勝てず、この世界から逃げ出した。

 最後に、一発だけ、神殺しの弾丸を残して。





 悪神に立ち向かい、神々に見捨てられ滅ゆく世界を救った、一匹の虫たちがいたことを。


 誰も知らない。





BGMは以下の通り。異論は認めます。

・地球を飛び立つ場面

飛翔 (ゼノギアス)


・ハイパーレーン~パイパースペース突入の場面

Good Bye My Earth (ダライアスバースト)


・敵艦隊と遭遇、敵中突破の場面

輝く針の小人族~ Little Princess (東方輝針城)


・超弦ブラックホールの場面

Genuine Devil (空の軌跡 the 3rd)


・悪神撃退の場面

FALLING DOWN (Persona 4 The Animation)


・エピローグ

タイトル (Ys SEVEN)



評価のほど、よろしくおねがいします。

星0:ゴミクソカス。こんなの書く作者の品性を疑う。

星1:Bad!

星2:Poor!

星3:Good!

星4:Nice!

星5:エクストリィィィィィィイイイイイムッ!!!!

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