なんでそんな目で見つめられるのか、それがわからない。
「く、黒田くん……」
うるうるした瞳で見つめてくるその女子生徒は。
――大山里穂。
いわゆる《陽キャ》に属する女子生徒で、校内でも知らぬ者は少ない。
特筆すべきは、まずその美貌。
透き通るように白い肌、やや勝ち気そうな瞳、桜色に濡れる唇。入学式でいきなり告白されたという噂も飛び交うほどの美しさだ。
身長はやや低めだが、それに反して胸部は反則級に大きい。そういったところも、彼女を人気たらしめている要因のひとつだと思う。
そんな大山の様子が……明らかにおかしい。
いつも強気で、男子さえぶっ飛ばしてしまうほど気丈な人なのに、下を向いてもじもじしちゃってる。
「ど……どうしたのかな。大山さん」
とりあえず僕は彼女に訊ねてみる。
――僕は、本気であなたが好きだった――
さっき、ちょっと恥ずかしいセリフを口走っちゃったからな。あれに不快感を与えてしまったのだろうか。
『……ちょっと雅之様、この人って……』
隣のユリィが敵対心丸出しで呟く。
ちなみに現在は隠蔽魔法が発動されているので、彼女の姿・声は大山に届いていない。
『さっき雅之様に嘘告してきたポンコツ女じゃないですか!! とっとと始末を――』
『おい、やめろ』
始末って。
いったいなにをするつもりだ。
日本でいきなり魔法をブッパしたら色々と騒ぎになるぞ。
『余計なことするな。面倒事には巻き込まれたくない』
『うぅ……雅之様がそう仰るなら』
ちなみにだが、このやり取りも大山には聞かれていない。
僕の声は、念話魔法で直接ユリィに届けている。大山には一切聞こえていないはずだ。
「さっきの……本当なの? 私のことが好きだったって……」
「ああ。それは本心さ。心からの気持ちだよ」
『ちょっと雅之様!?』
隣のユリィがギャーギャーやかましいが、とりあえず放っておく。
「だから、夢を見せてくれてありがとう……ってことさ。あれがたとえ嘘の告白であっても、それでも……あの一瞬だけは嬉しかった」
「嬉しかった……」
僕の言葉を反芻する大山。
『なに恥ずかしいことを平然と言ってるんですか!?』
『恥ずかしいって。本音を言ってるだけなんだが』
『…………雅之様、そう言うところ、本当に変わりませんね……』
変わらない?
意味がわからないので、僕はやはり彼女を放っておく。
「……正直、びっくりした。私、黒田くんに嘘告したんだよ? なのに、あんなこと言ってくるなんて……」
「はは……そんなことか」
たしかに心に刺さるものはあったが、しょせんは嘘の告白だ。
前世で血塗られた戦いを散々見てきた僕にとって、あれしきで取り乱すことはない。
むしろ。
感謝の気持ちを伝えきれぬまま、敵に殺されていった仲間たちを何人も見てきた。後悔してもしきれないほどに。何度も涙を流してきたほどに。
だから。
「別にいいさ。そういうところも含めて好きだったんだ。それくらいは別にいいだろ?」
「く、黒田くん……」
『わ、私はいったいなにを見せられているんでしょうか……』
目を見開く大山に、ため息を吐くユリィ。
「そうだ、黒田くん」
ふいに大山がスマホを取り出す。
「よかったら……連絡先交換しよ? 黒田くんが嫌じゃなければ……」
「は……?」
なんでだろうか。
「別にいいけど……僕のこと嫌いっていってなかった?」
「嫌いよ! 大嫌い! だけど……だけどッ!!!」
それ以上はなにも言わず、顔を真っ赤にしてスマホを差し出してくる。
「わかんない! 私でもなに言ってるかわかんないけど……連絡先交換しようよ! ほら!」
「お、おう……」
謎の圧力を感じ、僕もスマホを取り出す。
周囲の気配を探るも、亮太たちが潜んでいる様子はない。
つまりこれは嘘告の類じゃない。
なんでだろうか。ますます意味がわからない。
『むぅ……』
隣では、悔しそうに唇を尖らせるユリィ。
『連絡先交換……よくわからないですけど、なんだか先を越された気分です……。私も急がなきゃ……』
わけのわからないことを呟いている聖女様だった。
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