始まりは絶望と共に
昨夜、通が寝ついた後の話である。
近頃、通や由紀が住む街で空き巣が多発していた。
この夜、そのターゲットとなったのが由紀の家だった。
実際にその現場を目にしたわけでは無いので、これからの話は現場の状況を見て判断した予想らしい。
夜中、家に忍び込んだ犯人は金目の物を探している最中に起きていた由紀に見つかってしまう。
対処に困った犯人は所持していたナイフで由紀を殺害。
由紀の親が起きる前に家を放火し証拠を隠滅しようと試みた。
その途中で、今度は炎の明かりで目を覚ました通の両親に見つかってしまう。
今、通報されては自分が逃げる時間を稼ぐ事が出来ない。と、通報される前に2人を殺害し逃亡。
通の母親の悲鳴で目を覚ました近隣の住民が警察に通報し現在に至る。
それが、警察から聞いた事件の全貌であった。
つまりは自分しか生き残らなかったのである。
警察の事情聴取が終わり、誰もいない家にたった1人で途方に暮れていた。
唯一の友達であり大好きだった幼馴染みと、家族を一度に失った悔しさ、悲しみ、苦しみは計り知れないものだった。
昨日までの日常が全て崩れ去り、残されたのは自分とこの家だけ。
「…なんで、なんで、俺だけ生き残った…なんで、由紀が、母さんが、父さんが…」
行き場のない怒りと悲しみ、そして一切の光を遮断する絶望の闇に囚われた。
まるで、あの時みたいだ…
俺達が本当の両親を失い、心が絶望に蹂躙された…あの日。
あの時は、父さんと母さんが助けてくれたんだ…でも、今回は…
「……俺は…どうすれば…もう、生きてる意味なんて…」
生きる意味すら見失った
その時だった。
眩しいほどの光が通を包み込んだ。
「…ぁ?」
ーー私が助けて差し上げよう。