変わらない日常
高校に入学してもうすぐ4ヶ月、すでに夏休み間近になってしまっていた。
夏休みとは、友達と海で泳いだり、想いを寄せる子と夏祭りで浴衣デートをするのが俺の周りのやつらの定番である。
しかし、俺は違う。
俺の夏はそいつらとは違って、誰かに縛られる事なく自由に好きな事を好きなだけして楽しむのである。と強がってみたが、つまりは夏休みまで友達が出来なかったのである。
「友達が出来なかったのは、通がクラスの人達と仲良くしようとしないからだと思うけどなぁ…」
「そんな事ない…けど、確かに緊張してあんまり話せてないよな…」
幼馴染みの石田 由紀。
俺、士門 通と同じ高校1年生だが、クラスは違って、俺が2組で由紀が1組
彼女の事は、家が隣で小学校と中学校も一緒の学校だったのでよく知っている。
面倒みがよくて頭も良い、そして、めちゃくちゃかわいい!本当にかわいい!
夜、寝る前に彼女の家の彼女の部屋の窓を眺める習慣があるくらい好きだ。
「そんな調子じゃ、夏休みも1人なんでしょ」
「うるせぇなぁ、ほっとけよ」
「私が一緒に遊んであげようか?」
「え、由紀も予定無いの?」
夏休みに由紀と過ごせるなんて、正直思ってもみなかった。
由紀はコミュ力も高いので積極的に周りに話しかけて、高校生生活1週間目でクラスのほぼ全員と打ち解けてしまっていたのだ。
まさに、コミュ力の怪物である。
「まぁ、無いことは無いんだけど、そこまで忙しいってわけでも無いしね。通にかまってあげる暇くらいはあるよ」
これは絶好のチャンスである。
「そっか、なら一緒に、その、夏祭り、とか…」
そう、夏祭り。
先程の説明にあった通り、想いを寄せる女の子と夏祭りと言うのは夏の醍醐味である。
それがなくて何が夏だ!!
「夏祭り、か…うん、いいね!一緒に行こ」
「え!?いいの!?っっしゃ!!」
「そんなに嬉しいの?」
心臓が口から飛び出そうなほど嬉しかった。
恐らくこの瞬間は今後の人生で忘れることは無いだろう。
「じゃあね、しっかり戸締りするんだよ!最近はこの辺も物騒だからね!」
「いや、親かっ!わかってるよ、じゃあね」
夏祭りの約束をした後は、嬉しすぎるあまり他の約束も出来ずに帰宅してしまった。
せめてあと一つ、いや、二つくらいはデートの約束をしたけばよかった…けど、調子に乗って痛い目を見るのもごめんだ。
よって、少なくとも7月いっぱいはボッチライフを嫌でもエンジョイしなくてはならず、毎日毎日、夏祭りの事を考えてソワソワしながら過ごす羽目になったのだった。