Tap2-4
「え……と、次って、もう一度リセットして、次で当てようと」
「次で必ず当たるってわかっちゃう感じですか?」
何を言っているのだろう。
ガチャは確率なのだから、当たるかどうかなんて僕にわかるわけがないじゃないか。
「ううん。当たるかはわからないけど、当たるかもしれないから」
僕が正直にそう答えると、ガチャ子お姉さんは大きく頷き、
「ですよね~。その気持ち、すごくすごくわかるんですよ。当たるかもしれないから、やり直せるならやり直したほうがお得ですよね」
と、心の底からわかるといったふうに僕の目を見つめてきた。
その目はとてもきれいで、大きな黒目に吸い込まれそうな気分になる。
これまでなんとなく、大人っていうのは叱るタイミングを探して子どもをじっと観察しているような気がしていたんだけど、たぶん、このお姉さんは僕のことを叱らない。なんだか急にそう思った。
――じゃあ、そんな人が、僕に何を言おうとしているのだろう?
興味が出てきた僕は、ひとまずリセマラの手を止めて尋ねる。
「お姉さんもリセマラいっぱい頑張るんですか?」
「うーん、頑張るってほどではないですね。☆4も☆5も全然いないとかだったらさすがに仕切り直しって感じになりますけど、そうでもなければ、まいっかと思ってさっさと始めちゃいます」
だってねえ、とケイオスのほうを向き、
「さっさと始めないと、期間限定のイベントに参加できませんからね」
「よくわかってんじゃん」
ケイオスが親指を立てて応える。
「ふふ。ケイオスさんもずいぶんじれったい思いをされているみたいですね。一緒に遊びたくて待っててくださってるんですから、おふたりは良いお友だちです。もうずっと同じクラスなんですか?」
話が急に変わった。
横を見るとケイオスも不思議そうな顔をしていたが、すぐに
「違うよ。俺とサハラはこないだのクラス替えで同じになったばっか」
「うん、毎年クラス替えがあるけど、ケイオスと同じクラスになったのは6年が初めてです」
うちの親は最初驚いていたから昔は違ったのかもしれないけど、クラス替えは毎年あって、担任の先生も変わることがほとんどだ。ケイオスとは体育が2クラス合同になるときに見かけたことがあるくらいで、話したこともなかったと思う。
「クラス替えの発表のときってどんなでした? わくわくですか?」
「俺はそれなりに」
ケイオスはそうだったのか。
「僕は5年のときのクラスにやっと馴染んできたところだったから、変わらなきゃいいのになって思いながら学校に来たのを覚えてます」
結局、仲の良かった男子とはほとんど別のクラスになってしまい、がっかりした記憶がある。
「あ~。私もサハラさんと同じで、クラス替えは苦手だったほうです。先生たちの中では振り分ける基準みたいなのがちゃんとあるとは思うんですけど、振り分けられる側の生徒のほうではそのルールがまるで見えないから、運を天に任せるしかない気分でした。今思えば、まるで――」
「ガチャみたいな感じですね♪」
あれ? 話戻った?