水曜 12:30
翌日の昼休み、僕は猫柳さんと一緒に二年校舎の屋上前階段を訪れた。
「オッ来たな、新人!」
冷子先輩が明るく声を上げる。猫柳さんは昨日のように、枕を置いて丸まった。
「どうした? 浮かない顔だな」
楔先輩が言う。誰のせいですか。
「目を覚ましたら、ブレスレットがありました。それで、夢じゃなかったんだなあ、と思いまして」
「ンで変身の方法を聞きに来た、っつーワケだな」
「ちがいます。もらう意味が分からないんです」
「それは二指以上の指紋認証と声紋認証、それにキーワードが加わって変身する」
「つまり渡されたヤツが、触りながら登録してあるキーワードを言えばいいンだよ」
「あの……話を聞いてましたか?」
変身する方法を聞きに来たんじゃないんですってば。
「そもそも、いつ僕の登録を済ませたんですか?」
「この情報化社会じゃ、プライバシーなんて有って無いようなものだ」
「また盗んだんですか」
「盗むだなんて人聞きの悪い……」
否定してください。
「オメーはオレのもの!」
「なんか言葉足りてないんですけど!?」
「いいじゃねえか、オレみたいな美人にかまってもらえてよ」
今さらだけど、なんかアレだな。この人。
イラッとするな。
「さて本題だ」
楔先輩は声色を変え、急に深刻なトーンで話し始めた。
「行方不明事件だが」
最近、街で話題になっている事件だ。三人も捜索願が出ている。
「昨日は委員会をやっつけたみたいですから、被害者はいなかったんじゃないですか?」
「いや、昨日も一人消えている」
まさかニュースになっていないだけで、実は結構な人数が行方不明になっているのか?
「察しがいいな、その通りだ」
楔先輩が僕の顔色を見て答える。
「昨日は下っ端を倒しただけ、おそらく実行犯は別にいる」
「街のウワサといえば、幽霊が出る話もありますよね。何か関連性があるんでしょうか?」
僕が提案すると、周りの二人が吹き出した。
「なんです? 僕、何かおかしいこと言いました?」
「そりゃネネだ」
「猫柳さん?」
「彼女は自宅の屋上で変身していた」
「猫柳さんもメンバーなんですか?」
僕は変わらず丸まっている彼女を見た。
「でなきゃココにいねえし、こんな話するかよ」
「人目につく行動だから、以前から辞めるよう注意はしていた」
「屋上で変身。ンで飛び降りて出動、と」
「あの高さから飛び降りて、無事で済む人間はいない。そして翌日の事件にも上がらない」
「ンで見たヤツが、『幽霊だ!』ってなっちまったンだろ」
やれやれ。真一ともども、僕らは勝手に踊ってただけか。
「ウワサのせいで、彼女は見張られていると考えるのが妥当だ。一般人すら目に触れやすい。よって、しばらく動かない方がいい」
「事件の方はどうすンよ?」
「新人の顔合わせと作戦会議が必要だな、夜に『工房』まで来てくれ」
「リク、オメーもだ」
「え……」
「イヤそうな顔すンじゃねえよ」
イヤなんですよ。
カンベンして下さい。