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 ここは日本。利用可能な国土の割に人口は1億2千万を超え、経済力は常に世界上位で比較的安定している。現在では戦争とは無縁の比較的平和なことが当たり前になっている国だ。

『現在では』という言葉の通り、この平和な日常を手に入れる以前は戦争を経験した国の一つだ。その戦争に敗北したことにより侵略のための武力は奪われ、強制的に戦争ができない国にされたという歴史がある。戦争が終結してから産まれた世代の子供、その一人がこの俺、留本三太ルモトサンタ。人生なるようになると思ってる、比較的楽観的な方だと思う。趣味はゲームに読書、読書とは言っても頭が良くなる本や良くなってから読む本は眠くなるから読めない、あとは犬と一緒に昼寝したり連休にできた時は宛てもなくドライブに行ったり、そんな感じのもうすぐおじさんなお兄さんだ。・・・・・・お兄さんのはずだ。いいね?

 

 それはそうと、今日も朝から晩まで予定が埋まっていて忙しい。最近ではだんだんと慣れてきたのもあってあまり苦ではなくなってきたと思ってはいるのだが、周囲の人間から見ると、そうでもないらしい。どうやら真っ白に燃え尽きた某格闘漫画の主人公のような空気を纏っていることがあるとか。自分としてはさすがにそこまでではないつもりだ。なぜなら今日も飯がうまい。あんなに真っ白に燃え尽きてたら味なんてわからないはずだろう?僕にはわかるぞ。だから何も問題ない。でも最近、塩味に敏感になってきたし甘いものを食べると甘さをあまり感じなくなってきたような気はしている。まぁ、人は年齢を重ねると身体に変化が出てくると言いますし?そういうことじゃないですかね。まだお兄さんではあるんだけどな。


さて、ひと段落ついたしスマートフォンを修理しに電気街へ行こう。寝る前にゲームしていて、目がさめると電源が入らなくなってしまって困ってるんだよね。夢うつつの意識の中でディスプレイが真っ暗になる直前、一瞬何かが画面に映ったような気がしたのはたぶん気のせいだろう。いつものように寝転がってうとうとし、スマートフォンを持った手が何度か顔面に落ちてきたので痛かったのは覚えてる。きっと夢でも見てたんだろう。

 そんなことを思い出しながら歩いていると、修理の予約を入れておいた店に着いた。店員に事情を説明してスマートフォンを渡し、併設されている喫茶店で修理が終わるのを待とうとして、可愛い系美人の喫茶店の店員さんにコーヒーを注文しようとしたのだが、そこで修理店の店員がやってくる。


「お客様ー!お客様ーー!」


この中にお医者様はいらっしゃいませんかと続きそうな勢いで修理店の店員が俺を呼んでいる。あーあ、せっかくこれから「コーヒー、ブラックで!」とがんばって低めの声で注文して、それに対して少し楽しげな笑顔で答えてくれる店員さんを見ることができると楽しみにしていたのに、まったく。なぜ楽しみにしていたかというと、この喫茶店にはちょくちょく顔を出しているから、いわば顔なじみでいつものやりとりなのだ。そんな淡い恋心的な何かを連想させるこの純情な感情を台無しにしてくれた修理屋の店員が言う。

「お客様!少々問題がございまして・・・店舗の方へお願いします!」仕方ない、行くか。


 店のカウンターで待っていると先ほどの店員がスマートフォンを持ってきた。なぜかゴム手袋をしている。不思議に思って聞いてみると、機材に繋いだ途端に放電し始めたらしく素手で触るとびりびりくるそうだ。そんなものを素手の僕に返却しないでほしいんですけど。とは思ったが、好奇心に勝てずにスマートフォンをツンツンしてみた。ピリッっと来るのを期待していたのだが、全く来ない。店員もゴム手袋を外して触ってみるが、どうやら収まったようだ。とりあえずもう一度機材に繋いでもらうことにした。またおかしなことになるようならもしかしたら修理不可能なくらい壊れてしまっているのだろうと諦めるつもりで。


「あ!今度は大丈夫みたいです!」

そんな店員の声を受け、僕は隣の喫茶店に癒しを求めに行くのだった。

そして可愛い系美人の店員さんに「コーヒー、ブラックで!」といつもの調子で言う。いつもの対応を期待していたのだが、そんな俺にその店員さんは言う。

「今日はこちらがおすすめですよ?どうです?試してみませんか?」

「はい!よろこんで!」間髪入れずにそう答えてしまった。脊髄反射とはおそろしい。

それからすぐにおすすめが出てきた。細長いグラスの中の下部には青い液体、中央には透明な液体、上部には赤い液体が層になって・・・・ってこれカクテル?


「あの、これってカクテルですか?さすがにアルコールにはまだ時間が早いんですけど・・・」

そう言うと、「大丈夫ですよ、いつも来てくださっているお礼です。」と返された。

酒かどうかを聞いたんだけどな・・・まぁいいか。今日は仕事ではないし、飲んでみよう。


「いかがです?おいしいでしょう?」と、覗き込むように天使の笑顔で話しかけてくる。そんな笑顔で聞かれたらまずいなんて言えないじゃんズルい!

「はい、とても・・・おいしいですね。」正直微妙だった。なんだこの味・・・どこかで。

最初から混ぜてもいいけど混ぜない方が味の変化を楽しめると言われたので薦められたまま上の層から飲んでいく。

やがて青の層も飲み干したところで急な脱力感に襲われ、意識が途切れた。

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