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鬼闘神楽  作者: 武神
第1章 その名は鬼闘師
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extra episode 02【平行線の気持ち】

extra episode 2話目です!

今回は妹の佐奈視点!


妹の妹による妹の為の讃歌(?)

 私―――南条佐奈は昨日、正式に鬼闘師になったばかりの新米鬼闘師。

 まあ、任官式がまだだから正式っていうのは間違ってるんだけど…………。

 一応能力的な話をするのであれば、土と金の属性元素扱う術式を得意とする地形とか周りにある物とかを使って戦うのが得意な鬼闘師ってとこかな。



 昨日はお兄ちゃんに付き添ってもらって、鬼闘師の任官試験。最初っからターゲットを予定位置から大きく逃がしちゃうなんて凄くでかいミスをしちゃってちょっと焦ったけど、重度B+の【餓鬼狼(がきろう)】が重度A+位まで変異強化してたんだから仕方がない。

 ―――――――なんて、お兄ちゃんはフォローしてくれるけど、正直私が油断してたから逃げちゃったんだよね。絶対お兄ちゃんには言えないけど。

 自惚れじゃないけど、私はこの歳にしては鬼闘師としてかなり強い方だと思う。それはお父さんやお兄ちゃんみたいな超一流の鬼闘師が家族に居るってのもそうだし、私だって小さい頃から凄く頑張ってきた。


 なんでそんな頑張れたのかって?

 それは多分お兄ちゃんが居たから、かな。

 小さい頃から私は凄く泣き虫だった。中学2年生の頃までは引っ込み思案な性格だったし、小さい頃は怪魔や悪霊が怖くて仕方なかったもん。でも、私が怖くて不安で仕方がないとき、いつもお兄ちゃんがそばに居てくれた。「佐奈、何か辛い大変な事があっても俺が絶対守ってやる」っていつも私の事を励ましてくれた。

 その安心感が私の今を形作っている。何年も経った今でも私の事を支えてくれる。

 だからなのかな。兄という存在に特別な気持ちを、恋心を抱いちゃうのも。



 もっとも、そんなお兄ちゃんにも大変な時期はあったんだけどね。

 特に8年前のあの日なんかは―――――――。


 ううん。今日はこんな暗い話はおしまい!

 暗い話は人を不幸にしちゃうもんね!明るい笑顔で、ハッピーに行こうっ!!


 で、今はと言うとお昼。

 …………………。

 完全に寝過ごしちゃった!


 昨日の夜は試験に合格した事が嬉しくて、それ以上にお兄ちゃんに褒められた事が嬉しくてついつい徹夜。

 いつもお兄ちゃんとはお話してるけど、やっぱり嬉しいことがあった日はもっとずっとお兄ちゃんの側にいたい。昨日はお兄ちゃんも嫌々ながら、私の話に付き合ってくれた。

 本当に優しい。

 そんなお兄ちゃんは、お兄ちゃんの中のお兄ちゃん、すなわちキング・オブ・お兄ちゃんだと思う。


 とりあえずお兄ちゃんに連絡してみよう。


 ――――――プルルルルル……



『もしもし?』


「あ、お兄ちゃん!今ちょっとお話してもいい?」


『どうした佐奈?こんな時間にかけてくるなんて珍しいな。』


「えっとね~…………、お兄ちゃん怒らないでね??」


『…………。何だよ?何かやらかしたのか…………。』



 怒らないでって言ったけど、絶対お兄ちゃん怒ってる気がするよ……

 ここは思いっきり甘えた感じでとぼけてみよう!



「寝坊してちゃった☆」


『…………。何だと…………?』



 お兄ちゃんの声が一オクターブ下がる。

 うん。いつもはカッコいいとか思っちゃってるけど、普通に怖い。



「いや~、もう今から行っても最後の2つしか授業受けられないし、意味無いよねお兄ちゃん!」


『…………。』



 う…………。

 これは何かマズい気がする……。



「とまぁ、そんなわけで――――――」



 ――――――ブツッ……。ツー、ツー、ツー……



 お兄ちゃん、マジギレでした。



● ○ ● ○ ● ○ ●



 自分の部屋で音楽を聴いていたら、お兄ちゃんが帰って来た。私の部屋は――――――と言うか、うち全体がそうなんだけど、和室。私は部屋のベッドに転がりながらジャズを聴くのが好き。特に誰のって訳じゃないけど、レンタルショップで適当に借りてきてうちで流してる。


 成人したら、ジャズバーに行って飲みたいなぁ。

 お洒落な雰囲気の中で飲むお酒は絶対おいしいと思う。お兄ちゃんがたまにウイスキーをロックで美味しそうに飲んでるのを見て、お酒に密かに憧れてるんだ。

 初めてのジャズバーはお兄ちゃんと一緒にウイスキーで乾杯!が今のところの私の目標。

 鬼闘師の活動は基本的に夜がメインだけど、出撃する日は予め決まってる。怪魔もゲームのエンカウントみたいに、草むらから飛び出してくる訳じゃないしね。それ以外の日は重要な案件じゃなければ依頼は断っても構わないから、ゆっくりお兄ちゃんと飲むんだ。そして限界まで甘える。別に食べられちゃっても良いかな……なんてね。



 お兄ちゃんを迎えに行くと、お兄ちゃんが見知らぬ雌豚を連れてきていた。

 名前は東雲結衣って言うらしい。

 見た目清楚系お嬢様という感じで、確かにお兄ちゃんの好みっぽい。お兄ちゃんに聞いても否定するけど、お兄ちゃんの好みは清楚系だ。清楚系の女の子を見てる時間が他の人より気持ち長いもん。まあお兄ちゃんにトラウマを植え付けたあの色ボケクソ女とは正反対だし、仕方ないんだけどね……。


 お兄ちゃんは鬼闘師としての自分を見られたから、説明と口外厳禁の説得をするために連れてきたって言ってたけど、私から見たら、あの雌豚どう考えても喜んでた。恋する乙女オーラが凄いんだもん。私は一生仲良くできないと思う。



 とにかくお兄ちゃんから引き剥がそうと、始末しようと相談したけどあっさり拒否された。まあ、超法規的措置で機密保持の為の殺人が認可されてるとはいえ、人の命は奪わないというのがお兄ちゃんの基本方針だしそこは仕方がないか……。


 とにかく、お兄ちゃんと不必要に仲良くならないように、監視を徹底しよう!!



● ○ ● ○ ● ○ ●



 お兄ちゃんに怒られて、とりあえず雌豚呼ばわりはやめることにした。今はお兄ちゃんと雌…………もとい、東雲さんと一緒に夕食の準備中。でも開始15分で飽きてきた。というか、お兄ちゃんと同じ台所に立ちたくない。私の女子の部分が血涙を流すから。

 お兄ちゃんはいい意味でも悪い意味でもちょっとおかしいと思う。だって学業成績は優秀、鬼闘師としては超一流、身体能力も高いし、ついでに料理まで上手い。何か苦手な事あるの?って感じ。

 だから、私はもう台所に立つのをやめた。2年前までは私の方が料理出来てたのに、そこも取られちゃったら妹は立つ瀬がない。お兄ちゃんは私に負担をかけないようにって頑張ったんだろうけど、お兄ちゃんは女心をわかってないと思う。

 それなのに、いつもは何も言わないくせに、今日に限って手伝えって言うお兄ちゃん。あなたは鬼ですか。むしろ鬼ぃちゃんですか。

 『You are not worthy as my opponents!』――――――

 なんちって。



 半分不貞腐れてテレビを見ていると、めすぶ…………じゃなかった、東雲さんが隣にやって来た。どうもお兄ちゃんの腕に恐れ慄いて逃げ出してきたらしい。

 私は思いきって、ドストレートに聞いてみる事にした。



「東雲さん、聞いていいですか?」


「な、何かな……?」


「東雲さん、お兄ちゃんの事が好きでしょ。」


「え?!えっとえと……それはその~……。」



 何だろう。ちょっとイラッとした。

 見てればわかるんだよ? 目を泳がせまくって、顔を赤くして取り繕う様な東雲さんに苛立ちを覚える。



「……うん。私は一哉君の事が好き。」


「そうですか。いつ頃から?」


「えっと、10年前かな。今は唯の大学の同期だけど、昔一哉君に会ったことがあるの。この気持ちを自覚したのは2年前だけど、きっとあの時からずっと……好き……」



 それには少し驚いた。

 私の知る限り、お兄ちゃんの幼馴染みに「結衣」って人は居なかったはず。いつ知り合ったんだろう?

 そして、片想いの長さにも驚く。私と咲良ちゃん以外にもそんな人居たんだ……。

 でも、そんな事で私の最初で最後の恋は譲れない。

 いや、いずれ譲らなきゃいけないんだけど、譲る人は決めてるんだもん。



「そうですか。でも、あなたにお兄ちゃんは釣り合いません。だから、私はあなたがお兄ちゃんの事をどんなに想っていたとしても、絶対に認めないです。」



 私にできる、最大限にオブラートに包んだ脅し。別に私としてはこの場で首をはねてやってもいい位の気持ち。

 でも――――――



「やっぱり佐奈ちゃんもそうなんだね…………? でも私は諦めない。絶対に一哉君に振り向いて貰うんだから――――――!」



 そう、決意に満ちた澄んだ目で告げられた。さっきまであんなに動揺してたくせに。

 ふんだ!やっぱりこの雌豚とは一生仲良くできないよっ!



● ○ ● ○ ● ○ ●



 久々の3人での食事の後、食器を片付けていてふと思う。

 気に食わないけど。全く!認めたくないけどっ。3人の食卓は楽しかった。


 咲良ちゃんがこの家に殆ど来なくなって5年、お父さんがうちから出ていって2年。食卓があんなに賑やかだったことは一度も無かった。

 段々と活気の無くなっていく南条家の食卓に呼応するように、お兄ちゃんは傷ついていく。本人は何の自覚も無いみたいだけど、8年前のあの日から、家族を守るって気持ちが強くなりすぎて、自分を削りながら日々を過ごしてる。


 だから、私は弱気な自分に仮面を着けた。

 髪を気持ち短くして、少しだけ明るめの茶色に髪を染めて、元気で快活な少女の仮面を着けた。

 お兄ちゃんを少しでも助けるために。


 私は正直、この世界が好きじゃない。

 昔は何でお兄ちゃんが私のお兄ちゃんなんだろうって真剣に悩んだ。実は義理の兄妹じゃないかって、裏でこっそりDNA鑑定してみたことだってある。科学的にも血の繋がった兄妹だってわかった時は本当に悲しかった。


 それでも私がこの世界で生きていけるのは。お兄ちゃんと咲良ちゃんのおかげ。私だって仲の良い友達はいるけど、この二人は別格――――――本当に大事な人。この二人の為に生きている。そう言っても過言じゃないと思う。

 自分でも異常じゃないかって思ってる。

 だから、お兄ちゃんへの恋心がバレたとしても、この事だけは絶対に秘密にし通す。咲良ちゃんにすら秘密になんだ。



 この世界では血の繋がった兄妹の結婚は絶対にできない。

 お兄ちゃんは決して私のモノにはならない。

 きっとこの気持ち自体がお兄ちゃんを更に追い込んじゃう。

 だから私は心に決めている。

 

 私の大好きなお兄ちゃんは、咲良ちゃんに託します――――――。

途中出てくる「咲良ちゃん」というのは3人目のヒロインで、次話で登場します。先取りで名前だけ登場します(本当はこっち書いた方が後)。



最後に一つコメントするなら、私はDevil may cry 3が大好きです。


次回から本編に戻ります

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