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鬼闘神楽  作者: 武神
第4章 滅亡の氷姫
87/133

拾弐ノ舞 ツンデレ少女とアイドルと

お久しぶりの咲良さん登場

「まったく。こんな時間まで何してたのよ一哉兄ぃ。」



 内閣府庁舎内にある内閣情報調査室のオフィスで須藤にこっぴどくやられた一哉は、流石に気落ちした状態で自宅である南条の屋敷に戻った。

 だが、玄関の引き戸を開けてその先で一哉の事を待ち受けていたのは、妹の佐奈では無く、ましてや居候の結衣ですらなかった。

 帰宅した一哉の視界に入ったのは、出かける訳でもないのに、珍しく私服――――それも咲良には珍しい薄ピンクのノースリーブブラウスに、いつか見た白のフレアロングスカートという清楚系の服だ――――を着ている咲良。しかも、フリルの付いたエプロンまでもちゃっかり装備している。

 元々最近、咲良は南条家に入り浸っているので、咲良がこの家の中に居ること自体はそう不思議な話ではない。では何が不思議なのかというと、それは咲良がエプロンを装備しており、さらに一人で一哉の帰りを出迎えているという状況であった。



「というか咲良…………お前何してるんだ?」


「はぁ? 見てわからないのかしら? どこからどう見ても料理する為に決まってるじゃない。」



 そんな事は咲良を見ればすぐにわかる。

 その右手に持つお玉を見ても何をしているのかわからないのであれば、それはもう鈍感等ではなく、理解力の欠如である。

 知りたいのはあくまでも理由なのであるが――――だからと言ってそれを聞き出す程の気力は今の一哉には残っていない。

 だから、あっさりと話題を変えてしまう。



「いや、そういうことじゃなくてだな…………。今日の当番佐奈だったろ? そもそもお前はうちの食事当番なんか入ってないわけだし。アイツ、どこ行ったんだ?」


「佐奈なら、部屋にいるわよ? あの子、全く何の準備もしないで部屋に引きこもってるわ。私は代理よ、代理。」


「は? じゃあ、食事当番お前に押し付けてアイツは何してるんだよ――――って、まさか、もう…………?」



 そこまで言って一哉は佐奈が部屋に引きこもっている理由に思い当たる。



(そうか。早くもアイツのところにも特級鬼闘師への飛び級昇進の話が来たんだな。)



 いくら今、多少関係がギクシャクしているとはいえ、大切な妹なのだ。いきなり意味不明な人事通告を受けて佐奈もショックを受けているのだろう。佐奈の負担を少しでも減らしてやりたい。

 そう思った一哉は佐奈の元を訪れようとした。

 そんな一哉の顔を見た咲良はどこか不満げな表情で屋敷の奥を見やる。



「なんか訳知り、って感じの顔ね。なんか私が来ても一歩も部屋から出ようとしないし。部屋の外から話しかけてもなんにも答えてくれないし。私もさすがにあのうるさいのに黙ってられると気味が悪いんだけど。」


「お前、随分言うなぁ…………。まあ、わかった。佐奈のところには俺が行く。」


「そ。じゃ、そっちは貴方に任せるわ。」



 一哉がそう言って、屋敷の奥の方へ行こうとすると、咲良はふんと鼻を鳴らして台所へと戻ろうとする。だが、すぐに振り返ると少し頬を赤らめて一哉の元に戻ってくる。

 そして上目遣いでチラチラと一哉の表情を伺い――――



「あぁ、そうそう。一哉兄ぃ、オムライスとハンバーグならどっちがいい?」



 そう、少し恥ずかしそうに一哉に聞いてきた。その表情や目線からは、大切な人に好きなものを作ってあげたいという、健気な少女の気持ちが隠されているのが簡単に読み取れる。

 だが、南条一哉という男は、そんな咲良の気持ちを汲み取ってやれない。

 一哉は早く佐奈の元に行こうと気が急いていた事もあり、奥の佐奈の部屋の方に視線を固定したままで、咲良への対応をおざなりにしてしまう。



「お前、本当にオムライス好きだなぁ。別にそんなもんどっちでも構わん。好きな方作れよ。」


「………………カ…………。」



 ここでようやく咲良の方を向く一哉。

 一哉から邪険に扱われた咲良は一転、少し俯き気味になって何かを呟いた。だが、声が小さすぎて何を言っているのか聞こえない。



「カ? なんだ? なんか言ったか、咲良?」



 一哉としては普通に聞き直しただけのつもりだったが、目の前の少女にとっては、一哉の行動は火に油を注ぐ行為にしかなり得なかった。

 肩をフルフルと小刻みに震わせると、突如ガバッと顔を上げて、叫ぶ。



「――――アンタなんか飯抜きよ…………! このバカっ! 佐奈と好きなだけイチャイチャしてれば?! この、シスコン男!」



 そしてトドメに、一哉の脛を蹴り上げて台所の方へと、ドスドスと戻っていく。

 非力な咲良に蹴られたところで、然して痛くはない。

 だが、咲良の意外な行動に一哉も呆気に取られる。



「あ、アイツ…………何をあんなに怒ってんだ?」



 もっとも、あまりの一哉の察しの悪さに、もしこの場に結衣が居たならば、結衣が呆気に取られただろうが。





 結局、考えても咲良が何に腹を立てているのか理解出来なかった一哉は佐奈の部屋へと向かうことにした。

 「さなのへや」と書いてある張り紙をされた障子を前に一哉は深呼吸をする。


 一哉が佐奈に対して、ここ最近引け目を感じているのは、丁度数週間前に見た悪夢のせい。

 母・澪が亡くなったのが、佐奈から母を取り上げてしまったのが、自分の軽率な行動が原因じゃないかと自問自答しているのが原因だ。そして今もその葛藤と罪悪感は何一つ変わってはいない。

 だが、今はそんな事を脇に置いておかなければならない。

 佐奈が特級鬼闘師に引き上げられてしまったという事実は、最早一哉が騒ぎ立てたところでどうやっても覆らない。何しろそんな暴挙を押し通してきたのは、あの内閣情報調査室の須藤。そして一哉は謹慎処分を喰らって、そもそも鬼闘師としての権限を停止されているのだ。

 この状況で、この決定を覆せる可能性など万に一つも無い。


 それでも。

 いや、だからこそこれからの事を佐奈と話し合わなければならない。新たに特級鬼闘師になる佐奈に、短い期間とは言え色々と託さなければならない。

 そしてそれ以上に、佐奈のケアも――――――。



「…………佐奈、入るぞ?」



 一哉が部屋の外から佐奈に声をかける。



「…………佐奈? 佐奈ー? いないのか?」



 だが、佐奈の部屋からは何の応答も無い。

 屋敷内に響くのは一哉自身の声のみ。物音一つしない。

 それどころか、人の気配すら感じ取れない。



「佐奈? 入るぞ?」



 しばらく待ってみても何の応答も無いのは変わらず。

 しかしいつまでも部屋の前に突っ立っている訳にもいかず、意を決して一哉は襖を開ける。



「佐奈…………? 佐奈?」



 だが部屋はもぬけの殻だった。

 ベッドシーツや掛け布団の乱れ方から、確かに直前までこの部屋に居たのは間違いないだろうが、事実今、部屋の中に佐奈の気配は無い。

 さらにもう少し待ってみても佐奈は戻ってこない。

 一哉は佐奈の部屋へと足を踏み入れた。


 久しぶりに入る佐奈の部屋は、相変わらず整理整頓が行き届いていた。

 綺麗に本棚に並べられた参考書と少女マンガ。

 やたらと兄妹ものが多いという事は華麗にスルーして、他の方に目をやると、佐奈の趣味である音楽観賞用のサラウンドシステム。鬼闘師としての初めての報酬が入った時に、佐奈が購入したものだ。嬉々として家電量販店に買いに連れて行かされた日の事を思い出す。

 そして壁には佐奈が小学生の頃に書いた絵が何枚か貼ってある。家族の絵だろうか、どの絵も何人かの人物と佐奈自信が描かれている。

 そして洋服箪笥の上には、佐奈と一哉、そして何枚かには咲良も写った写真が数多く写真立てに入れて飾られていた。


 写真を見れば、懐かしい気持ちが蘇ってくる。

 一哉と佐奈が幼い頃の何年も前の物から、つい最近の佐奈の任官式での記念写真まで。

 どの写真も佐奈は輝くような笑顔で写っていて、とても可愛らしい。

 対して、一哉は幼い頃こそ笑顔絶えない写真であったが、何時の頃からか無表情に、何を考えているのかわからない表情へと変遷している。一哉自身、少し気味が悪くなるような表情の変わらなさに驚くが、同時に最後の佐奈の任官式の時の記念写真は多少なりとも表情が柔らかくなっている事に、安堵する。

 自分が笑えるようになったのだと、感情を表情として表す事ができるようになったのだとすれば、きっとそれは結衣と再会できたから。

 …………そして、咲良と昔の関係を取り戻せたから。


 そして当の咲良はというと、一哉達兄妹と出会った直後と咲良の任官式の際の写真の数枚。幼い頃の咲良は今とは印象が全く異なり、気弱で物静かな少女という言い回しが一番しっくりくるだろう。

 元々咲良は近所の子供たちに手酷くいじめられていた過去もあり、決して今の様な性格では無かったのだ。それが一哉と疎遠になっている間に、いつのまにか今の強気な態度で、ちょっぴり毒舌な少女へと成長していたのだが一哉にはその理由が全く分からなかった。

 3カ月前に経緯は本人の口から明らかにされたが――――結局のところ一哉は咲良が説明した表面的な理由で納得してしまい、咲良が今の様になった本質的な理由については一切理解していなかった。


 ともかく、咲良の任官式時の記念写真では左から咲良、佐奈、一哉と写っているが、当時の二人の関係性を表すがごとく、咲良はぶっきらぼうな表情をした上で顔を態々一哉から背けていたのだ。

 そんな写真を見た一哉は思わず吹き出す。



「ははは……っ。こんな時もあったな……。」



 3年前の写真。

 この時は咲良はマトモに会話しようともせず。

 約5年間断絶していた交流が今になって復活しようなど、この時には思ってもいなかった。

 もっとも一哉が気付かないだけで、良く写真を見れば咲良の顔は一哉からそっぽを向いているが、その視線は明らかに一哉の方を向いている。これだけで彼女の気持ちがどこを向いているかなど簡単に察する事ができるのだが、そこはそういった事に疎い事で有名な南条一哉。まったく気づく事は無い。



「それにしても佐奈、どこ行ったんだ……。」



 しかし本来の目的である佐奈は、待てど暮らせど戻ってくる気配が全く無い。

 咲良曰く部屋に引きこもっているとの事だったし、少なくとも一哉は玄関から一直線にこの部屋へと来た筈で、佐奈が外に出たとは考えられない。

 そうなると――――



「咲良の所か?」



 そう思って咲良の居る台所へと一哉は足を運ぶ。

 台所を覗き込むと、咲良が明らかに慣れない手つきで玉ねぎを刻んでいる。

 一哉は咲良が丁度包丁を置いたタイミングで声をかける。



「咲良? 佐奈、見なかったか?」


「ふん…………っ! 何よこのシスコン男。今さら来たってご飯作ってあげない…………って、何言ってるのよ。佐奈なら部屋に居るって言ったじゃない。」


「だから、その部屋に居ないんだよ。こっち来てないか? あと飯は自分で作れるから無理すんな。」



 咲良の反応から、咲良も佐奈を見ていないらしい。

 だとすればどこへ行ったのか。

 思案する一哉だったが、そんな思考はものの一瞬で遮られた。

 一哉の言い草に咲良が完全にご立腹だったのである。



「はあぁ――――っ!? もういい加減あったま来た! 一哉兄ぃちょっと良い……かしら…………?」



 ――――ピーンポーン



 一言文句を言ってやらないと気が済まない。

 そんな様子の咲良だったが、咲良も咲良で突如鳴ったインターホンの音で勢いを削がれてしまう。

 基本的に住人である一哉、佐奈、結衣はインターホンを鳴らす事は無いし、咲良自身も合鍵を持っており――――一哉に半ば強引に作らせたのだが――――インターホンを使用する機会は無い。

 そして南条家には滅多に宅急便などが届かないので、インターホンが鳴る機会そのものが乏しい。

 加えて、対策院関連の人間は勝手に上がってくる人間の方が圧倒的に多い。

 早い話が、夕方18時を過ぎたこの時間帯に南条家に用事がある人物がどこの誰なのか全く見当がつかないのである。

 その認識は、南条家に入り浸っている咲良にもあった。

 だからこそ。



「俺、来客対応してくるわ。」


「あ…………っ! ちょっと待ちなさいよ! 一哉兄ぃ?!」



 何を怒っているかわからない少女の元を離脱する理由として、一哉がこれを使わない理由が無いのであった。




 後ろで怒っている咲良はとりあえず無視し、一哉は来訪者の応対へと目的を切り替えた。

 なぜか家の中で行方不明になった佐奈の捜索と、ご立腹な咲良を宥めるのは後でもできる。

 一哉が玄関へと赴き、突然の来訪者の正体を確認しようと門に手をかけた時だった。

 急に門が開き、門の取っ手へと手を伸ばしていた一哉は勢いよく向かってきた門に激しく頭をぶつける。



「いてっ!」


「は、はわっ! ご、ごめんなさ…………って、かず……じゃなくて、おにいさん?! あわわわわわ、どうしよ、どうしよ?!」



 門を開けて中に入ってこようとしていた人物。

 それは久しく会っていなかった佐奈の親友。



「…………もしかして、瑠璃ちゃんか?」


「あうぅ…………か、一哉さんが私の事覚えてくれて……う、嬉しいよぅ……。じゃ、じゃなくて…………っ! あ、あの、お兄さん……。お久しぶりです……。」



 顔を真っ赤にして、蚊の鳴くような恐ろしく小さな声で挨拶をしてきた小柄な少女。

 その少女こそ、一カ月程前に佐奈と佐奈の友人の関川友里と一緒に、テレビに映っているのを見ていたアイドル、桃瀬瑠璃。

 美星女学園高等部の制服に身を包み、濃い目の長い茶髪をツーサイドアップにした、幼い、だが可愛らしい印象を受ける少女。



「ああ、久しぶり、瑠璃ちゃん。佐奈に会いに来たのか?」



 実際、テレビの向こう側の瑠璃を見た事をカウントに入れなければ、瑠璃と顔を合わせるのは最早1年以上前になる。

 佐奈や彼女達がまだ学園の中等部に居た時の話だ。



「え、えと……。そうです! 佐奈……帰ってますか?」



 瑠璃は明らかにいっぱいいっぱいといった表情で一哉に答える。

 一哉の中では、全然一哉とは喋らないという印象――――というよりむしろ嫌われていると思っていた少女であったので、多少なりと意外ではある。

 実際、1年前に最後に会った時は、声をかけたら半分気絶された。

 


 それにしても瑠璃の訪問の理由がタイムリーである。

 一哉自身も絶賛佐奈を捜索中で、居ると言っても案内する事が出来ない。

 かと言って、靴も玄関にあったので、佐奈がまだ家に居る事は間違いないのだが。



(さて、何と言ったものか…………。)



 家のどこかに居る佐奈に対し、瑠璃が来たと言って出てこさせるという手もある。

 多少強引ではあるが、佐奈自身が瑠璃を相当気に入っている様だし、かなり確実な手だろう。

 だが同時に、今日の佐奈はあまり刺激したくないというのもある。

 特級鬼闘師の一件もあるし、引継ぎなどは可能であれば今日中には始めたいのだ。

 瑠璃がしばらく居座る事になれば、その時間は大幅に削られる事となる。

 だからこそ一哉が下した判断はこうならざるを得ない。



「悪いな瑠璃ちゃん。佐奈はまだ帰ってきてないよ。」


「え…………。」



 一哉の返答に、何か思いつめたような表情を見せる瑠璃。

 佐奈と何か喧嘩でもしたのだろうか。

 だが、一哉にはそれを聞く権利も趣味も無い。だから、瑠璃の反応はスルーする。



「用事があるなら、LINEでも何でも連絡すればいいんじゃないか?」


「それは…………そうなんですけど…………。」


「んじゃまあ、時間も遅いし、瑠璃ちゃんも気を付けて帰りな?」



 そう言って一哉は踵を返す。

 戻ったら、本格的に佐奈を探さなければならない。

 家の中で行方不明というのは流石に意味不明だが、大方珍しく一哉と会いたくなくて、どこかの部屋に隠れているというのが真相だろう。

 南条の屋敷は無駄に広いので捜索範囲が広いが、霊力探知と組み合わせて虱潰しに探していけばいずれ見つかるだろう。


 ――――そんな事を考えていた一哉の背中に軽い衝撃が走る。

 そして微かに香る、桃の香りと女子特有の甘い香り。



「え…………? 瑠璃ちゃん?」



 一哉の背中側から、瑠璃が抱き着いてきていたのだ。

 突然の展開に、一哉もフリーズして固まるしかない。



「え……えっと! 本当は佐奈と直接会って話そうかと思ってたんですけど!! 佐奈がいないんだったら、代わりに…………お兄さんに相談したい事があるんです!」



 そう言って大きな声で叫ぶ瑠璃。

 基本的に一哉の前では瑠璃はもの凄く小さな声でしか話さないので、またしても驚きなのだが。

 それ以上に、背中側から抱き着かれているので表情は確認できないが、抱き着いて回した手が小刻みに震えている事を鑑みれば、瑠璃の相談事というのはかなり真剣なものなのだろう。

 小さな少女の、だが真剣な想いを。

 それを無下に扱う程、一哉も朴念仁でも鬼畜でも無かった。

 瑠璃に絆された訳ではないが、一哉は予定を変更して、瑠璃の相談事とやらを一度聞いてみる事にした。その内容は全く想像もつかないが。


 だが、問題はその抱き着いている瑠璃で。

 佐奈の様な血を分けた家族ではないものの、瑠璃の事はほとんど妹の様な感覚だったので、トラウマ的には全く引っかからないのだが、嫌な予感がヒシヒシと止まらないのだ。

 具体的には、現在ご立腹のSさんとか。超絶ブラコンの妹Sさんとか。

 霊力の気配的に近づいてきている気がする咲良さんとか。

 家の中なのに行方不明になってしまった佐奈さんとか。

 この二人にこの光景を見られると、面倒な事になるのが容易に想像できた。



「わ、わかったから。わかったから瑠璃ちゃん。一回離れて!」



 だから何とか瑠璃を一回平常運転に戻して、一哉との距離を取らせようとしたのだが。

 タイミングというものは常に悪いらしい。

 相変わらずエプロン装備の咲良がひょっこりと玄関から顔を出して。



「一哉兄ぃ? 貴方いつまで……………………って、何よその子?!」



 絶叫した。

 そのあまりにも予想通りな展開に、溜息と共に頭を抱えるしかない一哉。



「うらやま……じゃなくて! さっさと離しなさいよ、このシスコンロリコン男!!」



 恐ろしく不名誉な罵声が一哉を襲った。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました

宜しければ、感想・評価などお願いいたします。

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