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鬼闘神楽  作者: 武神
第1章 その名は鬼闘師
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extra episode 01【お嬢様系女子はお近づきになりたい】

extra episodeは第3者視点のショートストーリーです。

閑話の形でたまに挟みます。


takacity様掲載版には無い、新規加筆となります。

 私の名前は東雲結衣。

 東都大学理学部の3回生です。


 サークルは天文部。小さい頃から星を眺めるのが好きで、今でもちょっとした天体観測をするのがお気に入り。

え、天文部なのにちょっとした天体観測しかしないのかって?そこはツッコまないでください……。私のお家、そんなにお金無いんです……。知ってますか?!天文部って凄くお金かかるんですよ!機材費とか移動費とか宿泊費とか、…………すみません、取り乱しました。

 それに、星を見てると、小さい頃に死んじゃったお母さんとお姉ちゃんの事を思い出すんです。


 アルバイトは塾の講師をしています。別に人に何かを教える事が好きってわけじゃないんですけど……。私、子供が好きなんです。だから、自然と小学生が対象の塾を選んでました。

 塾に来る子供たちはやんちゃな子が多いけど、そういったところも可愛くて、今ではちょっとした癒しです。



 そんな私は今、大学の同期生の南条一哉君のお家にお呼ばれしています。

 …………お呼ばれと言うにはちょっと強引でしたけど。寧ろちょっとした拉致?

 でも、好きな男の子からだったら全然OKですよね。一哉君は見た目は無表情で冷たい雰囲気ですけど、とても優しい人。でも、そんな人がちょっと強引に迫ってくるっていうのも、ギャップがあってときめいちゃいます。無理矢理されてみたい、とか……。

 ……………あれ、何言ってるんだろう、私。私ってMっ気有りましたっけ???



 一哉君との最初の出会いは10年前。結構昔です。

 今日の反応を見る限り、一哉君は全く覚えてないみたいですけど……。

 あ、転校した幼馴染みとかそういうベタな関係じゃないですよ。会ったのは10年前に一度きり。お母さんとお姉ちゃんが死んじゃった日です。当時の事を詳しく話すと陽が暮れちゃうので、はしょっちゃいます。もう陽暮れちゃってますけど。

 とにかく、その時の私は悲しくて、怖くて、不安で…………。でも、そんな私を慰めてくれたのがまだ小さかった一哉君でした。蹲って泣きわめく私の事を「大丈夫、もう怖くないよ」「僕がついててあげるから泣かないで」って必死に慰めてくれました。今考えると「そんな小さな子供に何ができるの?」とは思いますが、その時の私には一哉君が救世主だったんです♪

 一哉君は中々泣き止まない私にずっと付き添ってくれて……。結局最後は一哉君にお家に送ってもらってお別れしました。私の中からお母さんとお姉ちゃんを亡くした悲しみは無くなりませんでしたけども、少なくとも恐怖と不安はいつの間にか無くなってました。一哉君にとても感謝した事は今でもよく覚えています。

 お別れしてから一哉君の名前を聞かなかった事に気付いたときは、本当に後悔しました。



 それから一哉君とは一度も会えず月日はどんどん過ぎていきました。正直、あの出会いは私の中で美談として仕舞われていき、一哉君を探すことも無くなってしまいました。


 そんな私に転機があったのは、2年前の大学の入学式。入学式の席でたまたま一哉君を見かけた時です。あれから8年も経っていたんですから、久しぶりに見た一哉君は随分大人っぽくなっていましたけれど、私には一目でわかりました。

 その時、私の中で大切な思い出として仕舞われていた記憶が一気に頭の中を駆け巡りました。それと同時に、胸が激しく高鳴っているのに気づいたんです。

 思えば、それが私の初恋。

 それを自覚してからの私は、気が付けば一哉君を目で追うようになっていました。

 でも18歳にもなってからの初恋だった私にとって、一哉君を遠くから見る事は出来ても、話しかける事なんてとてもできません。一哉君の顔を見ると、目を見ると、舞い上がってしまうんです。

 何とか一哉君にお近づきになりたくて色々試してみたんですけど……。全然ダメでした。


 前に一度だけ、鈴木君の企画した合コンに参加してみた事があります。一哉君と仲の良い鈴木君にお願いして何とか話せないかと思ったんですけど、ダメでした。

 鈴木君は「絶対来るっ!」って自信満々でしたけど―――――――――一哉君は来てくれなかったんです。

 それからちょっぴり鈴木君にあたる様になっちゃってます……。

 自分でも思うんですけど、こんな事で冷たくあたるなんて、私、嫌な女の子ですね…………。



 そして迎えた今日。

 今まで恥ずかしくて全然話しかけられなかったのに、今日は何だか誰かが後押ししてくれたみたいに自然に一哉君に話しかける事ができました。もちろん、今家で起こっている不気味な出来事が不安で仕方が無いというのもありますし、この事は一哉君に相談しなきゃダメだって半ば強迫観念みたいなものもあったんですよね。

 途中一哉君を怒らせちゃいましたけど、お家にお呼ばれもされて、一哉君の秘密も知ることができました。今の私は秘密を知ってしまった代わりに、一哉君に監視される人間という立ち位置。今まであまりにも接点が無かった事を考えると、むしろ結果オーライ、でしょうか?


 でも、同時に強力なライバル(?)が居ることもわかりました。

 それは、一哉君の妹の佐奈ちゃん。今日話してみてわかりましたけど、間違いなく佐奈ちゃんも一哉君の事が好きです。それも、兄としてではなく一人の男性として。

 流石に一哉君が妹に手を出すとは思えませんが、一哉君と仲良くなる上で間違いなく最大の障害になるでしょう。

 でも、私は負けません!そしていつか一哉君と本当に恋人に……。

 きゃあっ!

 妄想とはいえ、照れちゃいます……。



 とにかく!

 今、私は大好きな男の子と一緒にご飯を食べています。それだけでこんなにも嬉しいだなんて、ちょっとはしゃぎすぎでしょうか?

 まだ私の家の事は何も解決してませんけど、何とかなりそうな気がしてきました。


 自分でも、凄く楽観的な見方をしているという自覚があります。

 でも今は。今だけは。

 明日からも一哉君と仲良くできたらいいな、なんて思いに浸っていたいのです。

結衣は年下以外には基本的に敬語で話します。

一哉に対して最初からタメ口なのは、それだけ心を許してるってことです。


次もextra episodeを投稿します

妹の佐奈視点です。

よろしくお願いいたします。

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