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鬼闘神楽  作者: 武神
第3章 闇からの挑戦
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拾漆ノ舞 ナイトメア~回帰~

今回は、本編では初の過去編です。

唐突に始まる、その過去とは。

 濡烏のごとき、麗しく美しい髪の長い女性が、その自慢の髪をすいている。

 一哉はそんな光景をただ漫然と眺めていた。



「澪様、今日も出られるので?」


「うん、まぁ仕方ないじゃん。相変わらず、(はじめ)の襲撃がいつあるかわかんないんだし。」



 話しているのはその女性――――――母である南条澪と、屋敷の使用人。

 西薗家の殲滅命令が対策院上層部より発令され、西薗一の抵抗が激化してから約2週間程。

 父・聖と母・澪が屋敷を不在にする状態はもはや常態化し、日常に変わりつつあると言って良い。



「お言葉でございますが澪様。まだ一哉様と佐奈様は幼い――――――母という存在が必要な時期でございます。この西薗家殲滅戦、完全終息までどれ程かかるかわからぬ状況で、身も心も磨り減らす貴女様のお姿に、お二人が日々、どれだけ心を痛めていらっしゃるか…………。今一度ご再考を。」


「だから、無理だってば。いつもみたいに、部下の皆に任せておけるような件なら良いけどさ。だけど、今回はそうじゃないじゃん?」



 澪は心底うんざりといった顔で使用人を見る。

 使用人の言うことももっともだが、やむを得ない事情があるのはわかっている筈だ、と言うように。



「もう、一級以下の鬼闘師が何人も死んでる。それも一人とか二人の話じゃない。何十人よ。あたしだって、一応は上級鬼闘師。部下の子らを無駄死にさせるわけにはいかないのよ。」


「それは私も理解しております。しかし――――――!」



 その後も使用人は澪にせめて一日でも屋敷に留まるよう、何度も何度も粘り強く嘆願するが、澪は頑として首を縦に振ることはなかった。



「だから、文句なら(はじめ)に言ってってば。アイツの隠し持ってる人造怪魔、どんどん強くなってきてるんだし、あたしが出なきゃ仕方ないじゃん。じゃああたし、もう出るね。」



 そう、使用人を突き放すと、側に立て掛けてあった薙刀の袋をたすき掛けにし、席を立つ。



「まあ、■■■も居るんだし、もうしばらくはね…………。って、アレ、一哉、どうしたのよ?」



 澪は今更ながら一哉の存在に気づいたらしく、どこか面食らった様な顔をしている。

 傍から見ても動揺を隠しているのがバレバレだが、一哉は敢えてスルーした。

 ここでツッコミを入れるというのも野暮というものだ。



「母さん、今日も任務なのか?」


「まあね。あたしも一応は上級鬼闘師だし? 意外とやる事多いんだよねぇ。」



 自分の息子に対しても、まるで自分の友達の様な口調で話す。

 それが地味に目立つ、南条澪の特徴だった。

 一哉は結局気が付く事はないが、その後、法具は佐奈が、口調の一部は咲良が引き継ぐ事となる。

 そうして周りに少しずつ影響を与えていく人物でもあったのだ。



「じゃあ、一哉。佐奈の事、宜しくね。」


「いってらっしゃい、母さん。気を付けろよ?」


「はははっ! アンタは誰に向かって口利いてんのさ。んじゃ一哉、行ってくるね。」



 佐奈の事を一哉に任せて家を出る澪。

 思うところが無い訳ではないが、そんな母の様子を黙って見送る一哉。

 そんな光景が、ここ最近では当たり前になっていた。

 それは7月下旬のある日の昼下がりの出来事――――――



 南条家では、基本的には食事は使用人が作る。

 実は母である南条澪は料理が大の苦手。

 たまに気晴らしに父・聖が台所に立つことがあっても、澪が立つことは決して無い。

 聞くところによれば、自分が下手なのは重々承知しているし、昔、風邪を引いた一哉の為にお粥を作ったら、この世のものではない何かを食べたかのような絶望的な表情をしながら「おいしいよ、お母さん」と言われ、逆に作れなくなったらしい。

 一哉はそんな事、全く覚えていないのだが。



「お兄ちゃん、今日もお母さんいないの?」



 食卓を囲む一哉に、既に涙目になりつつ聞いてくるのは妹の佐奈。

 まだ小学校に入学したばかりと、非常に幼いのは間違いないが、それにしても、同世代の女の子と比べて泣き虫過ぎるのでは無いかと一哉は思っている。

 そんな佐奈だが、兄に心配をかけまいと思っているのかどうかは定かではないが、珍しく寂しいとは言わない。ただ、両親の不在を一哉に確認するだけである。

 しかし、その態度から寂しいと思っているのはバレバレであり、一哉も少し可哀想だと思っている。友達の咲良が屋敷に来ているときは気も紛れるのか楽しそうにしているが、生憎、この日は咲良は屋敷に来る予定が無い。



「あぁ、そうだぞ。今日も母さんは仕事だ。」


「そうなんだ……」



 佐奈は休日の午前中は鬼闘師になるための訓練を受けているので、朝早くに帰宅し、昼前まで寝て、その後出ていく澪に会うことはまず無い。

 ここ2週間一度も帰宅していない聖よりはマシだが、所詮はマシというレベルだ。

 明らかに気落ちする佐奈を見て、幼心に傷つく一哉。

 できれば、可愛い妹の落ち込む姿など見たくない。

 だが、鬼闘師としての任務を全うしなければならない母の邪魔をする事も出来ない。

 何ともしがたいジレンマである。



 それ以降特に会話も無く淡々と食事を取る二人だが、食事も終わりかけの段階になって、そこに一人の人物が加わる。



「■■■■ー。あ、一哉、佐奈、■■■■■■■■■。」


「あっ! お帰り■■■■■■っ!」


「お帰り■■■…………」



 そこで意識が暗転する。



 ふと気が付くと、もう夕暮れ時だった。

 場所は南条の屋敷からは少し離れた場所。

 目の前には泣きじゃくる、メガネをかけた小柄な少女。

 その少女は身長こそ一哉よりかなり低いが、一哉とほぼ同学年らしい。

 そして後ろに誰かいるが、それが誰かはわからない。

 何故か、後ろを向いて確認しようとしないからだ。



「おねえちゃんが…………おかあさんがぁ…………っ! うわあぁーん…………っ!」



 とにかく目の前の少女を慰める事が先決だ。

 一哉の頭の中から、後ろにいる人物への疑問が独りでに消えていく。



「怖かったね。悲しかったよね。お母さんとお姉さんの事は何も言えないけど………………でも大丈夫、もう怖くないよ。また来ても、そんな化け物は僕達がやっつけるからっ!」


「でも………………、でもぉ…………っ。わたし、食べられたくないよぉ…………! おかあさんとおねえちゃんがに会いたいよぉ…………っ!」



 目の前の少女は、母と姉と三人で出掛けようと歩いていたところ、突然現れた「トラックみたいなカマキリの化け物」に襲われたらしい。母と姉は少女を庇い、命を落とした。しかも、その遺体は化け物に喰われ、服に着いた血の染み以外に何も残っていないという。

 恐らくは怪魔だ。

 こんな早い時間帯から怪魔が動いている事に疑問を感じなくもないが、事実として被害者がいる以上、疑う余地はない。

 少女は迷子でもあるらしい。

 怪魔から逃げるとき、出鱈目に走り続けた結果、どこかわからなくなってしまったそうだ。


 一哉の必死の慰めなど何の意味も為さぬと言わんばかりに、少女は激しく泣くが、それも致し方ないことだろう。

 こんな幼い少女が、目の前で家族を喰われるというトラウマものの衝撃を受けて、泣かない方がおかしい。むしろ、心を壊していなくて良かったという次元の話だ。



「大丈夫。僕がついててあげるから、泣かないで!」



 一哉はそれでも必死に少女に声をかけ続ける。

 目の前で家族を失ったその悲しさや、怪魔に襲われた恐怖感は分かち合ってあげられなくとも、目の前の少女がもしまた怪魔に襲われるような事があれば、必ず自分が護るという気持ちを込めて。



 かれこれ2時間以上少女に付き合った。

 一応は少女も落ち着き、ようやく一哉も胸を撫で下ろすに至る。佐奈がよく泣くので、泣いている女子の相手は慣れたモノだと勝手に勘違いしていたが、そもそも相手も歳も違うのだ。

 この間に一哉はすっかり疲れきってしまった。

 とはいえ、このまま少女をほったらかしにして帰るわけにもいかない。



「そういえばキミ、名前は?」


「■■■■…………結衣……………………。」


「そっか、結衣ちゃんっていうんだ。うーん、うちの近所じゃないなぁ……。ねえ、■■■■。■■■■■■の家って知ってたりする?」



 一哉は後ろの誰かに問いかける。

 おかしな話だが、名前も知らない、顔も知らない相手なのに、不思議と信頼できる相手だと確信している。



「■■■■■■…………。■■■■■■■ないんじゃないかな。」


「やっぱ、そうだよなぁ。ねぇ、結衣ちゃん。君のお家教えてくれる?」


「…………でも、お母さんが知らない人に教えちゃいけないって。」


「――――――」



 結衣のかなり今更な発言にガックリする一哉。

 確かに初対面ゆえに知らない人と言えばそうなのだが、これまで2時間みっちりと付き合ったにしては、あまりにもその甲斐がない。

 なので、一哉は自分なりの切り札を切る事にする。

 それは、後の一哉であれば絶対にしないこと。

 ある意味、対策院に真っ向から喧嘩を売る行為。



「君のお母さんとお姉さんを殺した化け物は『怪魔』っていうんだ。」


「かい…………ま……………………?」



 南条一哉、11歳。

 対策院の掟を堂々破り、一般人に怪魔の存在を教えていた。



「そう、『怪魔』。そして、『怪魔』は夜の方が強い。それに、怪魔じゃなくても、一人は危ないよ? だから、君の事を家まで送っていってあげたいんだ。」


「で、でもぉ…………」


「大丈夫! 怪魔だろうと、不審者だろうと、君の事は僕が護ってあげるよ。だって僕は鬼闘師なんだから!!」



 南条一哉、11歳。怪魔の事だけでなく、鬼闘師の事までもペラペラと話してしまう。

 後の一哉が聞けば卒倒してしまうような自爆案件であるが、それだけ一哉も必死だったのである。

 一哉はまだ任官されていない。つまり、まだ正式には鬼闘師ではなく、怪魔という脅威に晒される人と出会うこともない。

 つまり、一哉は一丁前に目の前の少女――――――結衣の事を、怪魔から護りたいとそう思ったわけである。

 何とも甘酸っぱい話であった。


 何はともあれ、結衣は一哉の言うことを信じたのか、信じていないのかはわからないが、一哉に漸く住所を教えてくれた。

 聞いた住所は今いる場所から見て、家とは真逆の方向。歩いて30~40分位かかる場所だ。時間も遅く、家とは逆方向に向かう事に若干の不満は有ったが、自分から言い出した事だ。それを撤回したりはしない。



「あの…………。」


「どうかした?」


「………………やっぱりまだちょっと怖いから…………手、繋いでもらっても…………いい…………?」



 さっきまで警戒されていたにしては少し意外な申し出に、一哉は苦笑と共に手を差し出す。



「うん、いいよ。」



 一哉には男の子の友達は多いが、妹の佐奈と、幼馴染みの咲良を除いた女の子とはそうでもないタイプであったので、実はこの申し出が嬉しかったなどという、少し意外でませた現金な気持ちもあったのはここだけの話だ。


 その後、一哉は元気の無い結衣を――――――当然、彼女の事情を考えれば元気である筈がないが――――――何とか元気付けようと色々と話した。

 自分自身の事。

 自分の通う学校の事。

 最近面白かった事。

 北神神社から見える景色が実はとても綺麗な事。

 自分を含めて、関わりの深い家の苗字に東西南北の四方位の漢字が使われている事。

 なぜかその内「東」だけ無くて、不思議に思っている事。


 端から見れば全く楽しくなさそうな話題。

 だが、一哉は必死に話した。

 手を繋ぐこの少女が、少しでも、ほんの少しでもいいから笑えるように。

 結局、その少女――――――結衣が笑うことは無かったが、それでも、繋いだ手がいつしか指と指を絡め合う、所謂恋人繋ぎになっていたのだから、満更でもなかったのだと一哉は思った。


 最終的に結衣を家に送り届けると、彼女の父親が家から飛び出してきて、二人して号泣する場面に立ち会うこととなる。彼女の父親からは激しく感謝され、「後日お礼を」などと言われるが、丁重に断りを入れてその場を去るのだった。



 そして再び意識は暗転する。



 ふと気が付くと、いつの間にか屋敷に戻っていた。

 記憶が途切れ途切れだ。

 あの親子と別れてからどうやって帰ってきたのか。

 あの後何があったのかさっぱり思い出せない。

 だが、不思議な事にそんな事は不思議に思わなかった。



「お兄ちゃん、遅いよぉ! どこ行ってたの?」


「うんー? ちょっとなー。」



 結衣との出会いは間違いなく人助けで、別に隠すことはない。

 だが、佐奈にその事を話すのは、何となく気恥ずかしかったのだ。ゆえに、曖昧な返事で誤魔化した。



「えー、ちょっとって何ー? お兄ちゃん、教えてよぉ!」



 当然、そんな曖昧な答えに佐奈が納得する訳もなく、むくれるようにポコポコと一哉を叩き出すが、一哉には勿論答える気は無かった。気恥ずかしい気持ちとはまた別に、何故だか、結衣との話は佐奈には言いたくなかったのだ。



「ダメだよ、佐奈? 一哉もそういうお年頃なんだから、そっとしておいてあげて。ところで一哉、■■■■■■、■■■■結衣って子と付き合うのは反対なんだけどな。」



 誰かが一哉と佐奈に話しかけてきた。

 その誰かは影だった。

 ひたすらに昏い影だった。

 体格も、容姿も、表情も何もかもが読めない、ただただ不気味な影だった。

 それでも、一哉は不思議と何とも思わなかった。

 むしろ、その影に親愛の情すら抱いていた。


一哉は何かを影に話そうとする。

 その瞬間だった――――――



「一哉、佐奈、■■■――――――っ?!」



 母――――――澪が悲鳴の様な金切り声で一哉達を呼びながら、部屋に転がり込んできた。

 見れば、土足の上に全身汗だくで、綺麗な長い髪はボサボサに乱れきっており、どれだけ慌てて帰ってきたのか問うまでもない。

 そんなただならぬ様子の澪に気付かないのは、精々久々に母に会えた嬉しさに無邪気に抱きつきにいった佐奈ぐらいのものである。

 澪は抱きつく娘を愛しげに撫でながらも、一哉達に指示を出し始める。



「一哉、■■■、いい? よく聞きなさい。今すぐ佐奈を連れて逃げる準備をして。」



 澪の言うことが理解できず、首を傾げる一哉達。



「どういう事ですか、澪さん……?」


「ちょっと意味がわからんぞ、母さん。」


「おかあ、さん…………?」



 だが、澪の異変を感じ取りながらもどこか緊張感の足りない返答をする一哉達に、澪が一気に沸騰した。



「いいからさっさと準備しろ、このグズ共――――――っ!!!!」



 その様、まさに火山の如く。

 あまり「母」という型にハマる澪ではなく、怒ることも少なかった筈の澪が今や、烈火の様だ。



「とにかく、すぐに佐奈を連れて逃げて! あんの、根暗マッドサイエンティストめ………………っ!! ホント、とんでもないもの創ってくれたわね!! まさか、あたしの力でも全く――――――」



 ――――――ズドオオォォォォォォォンッ!!



 突如、玄関方向から轟音が響く。

 ついさっきまで、いつも通りの日常が繰り返されていた筈の南条の屋敷に突然現れた謎の雑音。

 そして、目の前の異様なまでに必死な母の姿。

 一哉達はこの異常事態に、身を竦める事しか出来ない。



「一哉、■■■――――――っ! 今すぐ裏門から逃げなさいっ!!」



 玄関方向へと走っていく澪。

 その様子を見た一哉も、流石に冗談ではないと感じとり、裏門方向へと急ぐ。



「お、お兄ちゃんっ! 腕、痛いよっ!」


「いいから走れ、佐奈!! なんか、流石にヤバい予感がするっ!」



 佐奈を連れ、裏門へと急ぐ一哉。

 後に、昏い影も続く。

 一哉は事情が飲み込めないなりに、今の状況を分析し、的確に動いている。

 一哉達は裏門から外へ出て逃げ、頃合いを見て戻る。

 それが最適解。

 それが間違いの無い道――――――その筈だった。



「オまエか…………聖ノむスこは…………!」



 裏門へと続く、裏庭の道の途中。

 そこには巨大なカマキリが居た。

 正確にはカマキリの形をした、得体の知れない化け物が鎮座していた。

 その化け物は、ひたすらに嫌悪感を煽る破滅的な外見をしていた。

 まるで人類と昆虫類を無理矢理荒廃したような、吐き気を催す冒涜的な存在。神を汚し、貶める。そんな言葉が似合いそうな、破滅の権化が目の前に居た。



「オマエヲ殺せバ…………喰えバ…………聖モ………………!」



 その時、一哉の胸を支配していたのは、嫌悪感や、恐怖や絶望といった感情ではない。

 ひたすらに勇気が満ちていた。

 しっかりと確認したわけではないが、特徴は合っている。蟷螂型の怪魔。

 つまり、結衣の母と姉の敵。

 去来するのは、コイツだけは倒さなければならないという義務感。


 どちらにしろ、逃げるのは不可能だった。

 既に自分と佐奈は、目の前の冒涜的な蟷螂の殺傷範囲(キリングレンジ)内だ。

 だったら、ここで倒すしかない。

 一哉の胸の中には無限の勇気が湧いていた。

 それはきっと尊い事なのだろう。護ると誓った女の子の家族の敵を取る。涙ぐましい迄の正義感だ。


 ――――――ただし、それを周囲が蛮勇と呼ばなければの話だが。



「ダメっ、下がりなさい一哉!!」



 ――――――ドンッッ!!

 一哉はその場から激しく突き飛ばされる。

 予想外の方向から加えられた力に、一哉は為す術もなく地面へ転がり――――――



「か、母さん…………?」


「いや…………っ! 澪さん……お義母様ぁ――――っ!」



 その瞬間、世界は深紅に染まる。

 生暖かさと、鉄臭さを感じる紅の液体が一哉の世界を紅く染め上げ、粉々に打ち砕く。

 深紅の世界に開かれた、僅かな視界に入るのは物言わぬ、2つの肉塊のみ。



「うそ…………嘘だよね…………っ?!」



 その光景は、弱冠11歳という幼い少年の世界を粉々に砕くには十分すぎる代物であった。



「あ…………あ、あ………………うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――ッ!!!!」



 世界は暗転した。

いつも読んで頂きましてありがとうございます。

もうしわけありませんが、次回掲載後またしばらく掲載をお休みさせていただきます。

GW中には再開いたしますので、何卒よろしくお願いいたします。

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