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鬼闘神楽  作者: 武神
第3章 闇からの挑戦
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拾弐ノ舞 乗り越えた先に

第3章前半戦終了話です

「どういうこと…………? この人、明らかに人間の姿してるのに、気配は怪魔そのもの……………………っ!」



 結衣の視線の先に立つ佐奈は、庭先に立つ不審人物の姿を見て呆然と呟く。

 以前一哉から教えてもらった事によれば、怪魔の気配は少々特種らしい。世の中には様々な気配が満ちているが、怪魔が戦闘態勢に入った時に垂れ流す陰の気の気配だけは、あまりにも異質なため、すぐに区別がつく。だからこそ、東雲家に突然【鵺】が現れた時は本気で驚いたとも。

 つまり佐奈の言葉を信じるならば、庭に立つ人物は人間であり、怪魔である。しかし、怪魔が生物の死体と融合した理性無き化け物とした時、結衣自身が見ている光景と怪魔の定義はあまりにも乖離している。



「どういう理屈か知らないけど、怪魔の力を手に入れた人間って訳かしら~? もしかして、キミが今噂になってる通り魔?」



 美麻が冗談とも本気ともつかない、平常スタイルでその人物に問う。南条家を襲い、美麻を標的とする。確かに条件は合致する。



「正解とも言えるし、不正解とも言える。」


「あら~、どういうことかしら~? お姉さんにもわかるように説明してちょうだい?」


「残念だが、これから死ぬお前達に語ることは何も無い。座して死の刻を待て。」


「ふ~ん、そう…………」



 美麻の声のトーンが一気に下がる。

 その表情は今は伺えない。ただ、全身から怒気を放っていることだけは離れていてもヒシヒシと感じられた。

 美麻は怒っている。激怒している。結衣は美麻の事を全くと言って良いほど知らないが、その怒りには深い哀しみが含まれていることも感じ取れた。



「さあ、戯れの時間も終了だ。【三頭餓鬼狼(ケルベロス)】達よ、まずはその女を喰え。肉の一片たりとも遺さず喰らい尽くすがいい。」


『『『グルアアアァァッ!』』』



 低い男の声が怪魔――――――【三頭餓鬼狼(ケルベロス)】へと指示を下す。それまでは前の指示に従っておとなしくしていた【三頭餓鬼狼(ケルベロス)】達は、その言葉を待ち構えていたかのように一斉に遠吠えする。3頭の、都合計9頭分の頭が一斉に聞くに堪えない悍ましい叫びをあげる。

 その様は、まるで地獄に迷い込んだかの様である。

 3頭の【三頭餓鬼狼(ケルベロス)】は喧しい遠吠えを好きなだけあげると、一斉に美麻に向かって襲い掛かる。その爪を、その牙を美麻の肉体へと突き立てようと涎をまき散らして三方向から飛び掛かる。



「美麻さんっ!」


「まったく私も舐められたものね。」



 美麻は手に持つ大鎌をただ一閃。襲い掛かる【三頭餓鬼狼(ケルベロス)】へと薙ぐ。

 まるで伝統芸能の様に洗練された動きは最早芸術の域に達していると言えた。美しい一閃は3頭の怪魔を一瞬空中に縫い付け、そして分断する。それ即ち、全ての首を一瞬で刈り取るということ。振るった大鎌には血糊すら残さず、ただ美しき銀の閃光を煌めかせるのみ。

 断末魔すら許されず崩れ落ちる【三頭餓鬼狼(ケルベロス)】には目もくれず、美麻は大鎌を襲撃者へと突きつけた。



「犬が幾つ頭を付けて束になってかかって来たところで、犬は犬。特急鬼闘師の力を見誤らないことね。」


「成程。面白い。」



 美麻は襲撃者へ得物を突きつけたまま、結衣の方へと振り返った。



「咲良ちゃん、結衣ちゃん。悪いけど、一哉君に連絡してくれる? そっちが片付いたらすぐに戻ってきてほしいって。」


「は……はいっ!」


「そうはさせん…………――――――っ?!」



 美麻の言葉を聞いて結衣はすぐに立ち上がる。

 流石に一哉に連絡されるのは不味いと思ったのか、襲撃者は慌てて結衣へ攻撃を加えようとするが、それを美麻がいとも簡単に阻む。



「は~い、どこ行くのかなキミ。まだ私の話は始まってもいないわ。」


「離せ神坂美麻……っ!」


「キミには聞きたいことがあるのよ。…………陽菜の事とかね。」


「…………そうか、貴様、あの上級鬼闘師の知り合いか。あんな弱い奴の事など何が聞きたい。」



 美麻と襲撃者の間には、思わず気絶しそうな程の殺気が満ちる。



「……………………。十分よ。さっきの答えでキミが陽菜の事件を知ってるのはわかった。なら、無様に地面を舐め尽くした後に、さっさと汚い液体撒き散らして死に絶えなさい。」


「ふむ。そうはならないから安心し給え。寧ろ死ぬのは貴様だ。と言うより、この場の誰も生きて明日の朝を迎えられると思わないことだな。」



 襲撃者はどこからともなく、サバイバルナイフにも似た歪な形のナイフを手に持つと、美馬に斬りかかる。



「行きなさい、結衣ちゃん!!」



 結衣は自分の部屋まで戻る。

 急いで連絡を取った一哉が電話に出たのは、丁度一哉も戦いを終えたタイミングだった。



● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇



 結衣からの電話を受けた一哉は、自宅の屋敷に向けて、首都高速を道路交通法に真正面から喧嘩を売るようなスピードで走り、中央道を快走中であった。

 結衣からの連絡によれば、屋敷を襲撃してきたのは5体の犬型怪魔と黒ずくめの男が一人。全身を黒に包み、声を変え、そして能面を付けているため、どこの誰かはわからないが、今は美麻が戦っているとの事だった。


 一哉は車を運転しながら不思議に思う。

 全く同じ特徴の人物とついさっきまで戦っていたのだ。タイミングが合わない。

 ならば組織的な襲撃かとも考えたが、それにしては妙な具合である。少なくとも一哉が戦った相手――――――「竜の遣い・アイナの子」を名乗る人物は何らかの組織に所属しているようには思えなかった。ただ南条一族への恨みだけで動いている様に思えた。

 事実、今回の襲撃で倒された鬼闘師の中に重症を負った者、ましてや命を落としたものは一人も居なかった。多少打撲などはしている者も居たが、一哉相手以外には気絶させる程度に済ませていた様子すら伺える。今、怪魔を引き連れて屋敷を襲撃しているという人物とは性質そのものが違う気がするのだ。



「ま、ただの個人の違いと言えばそれまでだがな…………。」



 そもそもの問題として、人間の制御下に怪魔を置けるということ事態が驚きであるが、かつて西薗一は自ら怪魔を創り出して対策院に反旗を翻したという。だから、術は有るのだろう。

 だが、何故一哉が不在の屋敷を狙ったのか、理由にまるで検討がつかない。狙いが美麻だったとして、襲撃者の正体が例の通り魔にしても、手口を聞く限りは、こんな堂々と正面から襲撃をかけてくる様な人物ではなかった筈だ。

 とはいえ、実のところ一哉はそこまで心配していない。何しろ特級鬼闘師である美麻が居るのだ。余程の事が無ければ、敵に遅れを取るとは思えないのだ。


 そんな事を考えつつ、もう車も屋敷に程近くなってきたところで、電話が入る。発信元は「梶尾光太郎」。



「どうした、梶尾さん?」


『カズ坊、さっき話してた件………………少し調べてみた………………』


「それは、西薗一の娘の話か?」


『あぁ………………』



 一哉は結衣から電話がかかってくる直前に光太郎と話していた事を思い出す。あの時光太郎は、今回の件に西薗の娘は関係無いと言っていた筈だ。西薗一の二人の娘は既に死んでいるからだと。そうであれば、今更西薗の娘が何だというのか。



『カズ坊が去ってから、俺なりに調べてみたんだが………………ちょっと気になる点が…………あってな…………。』


「気になる点? 何だよ、死体でも生き返ったのか?」


『いや、死亡は間違いない………………。対策院のデータベース上も…………そうなっていた――――――西薗一のデータ上ではな。』



 一哉もその言葉に引っ掛かりを覚える。

 「西薗一のデータ上は」と光太郎は言った。つまり、他の何かのデータはその限りでは無いという事。

 一哉は無言で光太郎に続きを促す。



『その二人の娘のデータだが…………なぜか対策院のデータベースから…………消されてるんだ…………。名前も、生年月日も……………何もかも…………。』


「元々登録されていなかったんじゃないのか?」


『それは…………無い。少なくとも…………義理の娘の方は…………………………鬼闘師だったんだぞ。』



 現特級鬼闘師の西薗彩乃以外で、西薗本家没落後に鬼闘師として対策院に所属していた人間というのが初耳だ。

 光太郎が妙に言い淀んでいた事を含めて気にはなるが、確かに鬼闘師として在籍した人間のデータが全て抹消されているというのは妙な話だ。



「梶尾さん、その義理の娘の名前は?」


『悪いが…………、データが消去されていて…………わからない。』


「おいおい…………。その義理の娘っていうのが鬼闘師だったって知ってるなら、名前ぐらい聞いた事あるんじゃないのか?」


『カズ坊…………対策院はただでさえ…………人員の入れ替わりが…………激しいんだ。部下でも上司でもない…………それに8年も前に死んだ人間の名など……………………。』


「じゃあ、誰の部下だったかとかは覚えてないか? それだけでも手がかりにはなりそうだが。」



 一哉は何とか情報を手に入れられないか、光太郎に食い下がる。今回の相手は、対策院をたった一人で襲撃してきた傑物だ。しかも、その目的が南条家への復讐なのだ。

 なんとしてもその正体は突き止めなければならない。



「―――――――」



 だが光太郎の反応は相変わらず鈍い。本当は何か知っていて、でも話せないといったところだろうか。もっとも、西薗一の義理の娘の情報をひた隠しにする意味がわからないが。


 なおも無言を貫く一哉と光太郎だったが、先に折れたのは光太郎だった。明らかに渋々といった声色で一哉に答える。



『彼女の事を知りたければ………………聖さんに聞いてみろ…………。ただし、それ相応の覚悟はしておくんだ……………………。彼女の話は………………まだカズ坊にはキツい…………と思うしな…………。』



 光太郎はそう一方的に告げると、またしても通話を切ってしまった。この梶尾光太郎という男、電話を切るタイミングがいつも突然である。

 だが、今のやり取りを通して、光太郎が一哉に何かを隠していることは確実となった。そして、一応は上司である一哉に話そうとしないとなると、父・聖が口止めしている可能性が非常に高い。そうであれば、光太郎へ問い詰めたところで意味は無い。

 そして、どういう事かまるでわからないが、一哉自身にも深く関わる事らしい。本当であればすぐに確認を取りたいのだが、しかし、一哉はここに来て躊躇していた。



(ここでまた親父か…………)



 一哉は苦々しげに唇を噛む。

 南条聖は間違いなく一哉の父親である。それは100%間違いが無いし、育て、導き、息子として愛して貰ったことには感謝している。一哉にとっての目標であり、憧れでもあったのだ。

 だが、一哉は父へ聞くことを躊躇っていた。

 早い話、突如聖が家を飛び出した3年前から、何となくギクシャクしているのである。正直な話、3年前の父が家を出た日から一度も会っていない。電話で話すこともたまにはあるが、それも佐奈に無理矢理電話を押し付けられての話である。この3年、一度たりとも自分から連絡したことは無かった。


 そんな風に、電話すべきかどうかなどという、あまりにもくだらない理由で一哉が悩んでいるところに、再び電話が入る。

 今度の発信者は咲良だ。

 一哉は再び車載のBluetoothで電話に応答する。



「どうした咲――――――」


『一哉兄ぃ、今どこ?!』



 前の結衣の電話からもはや40分以上が経過しているのだ。流石に襲撃者への対処は終わっているだろうと考えていた一哉だったが、電話に出るなり聞こえてきたのは、車載のスピーカーの音が割れる程の音量の、焦った声。

 さすがの一哉も、思わず飛び上がってしまった。



「お、おい、咲良…………お前なぁ、ビックリするだろっ! どうした?」


『兎に角いいから、どこに居るのよ…………っ?!』



 一哉の抗議の声も無視して咲良は続ける。

 その声の焦り具合から、何か良からぬ事が起こっているのだろう事は予想できるのだが――――――



「――――――もう屋敷の近くだ。5、6分で着く。」


『1分で来てっ! ――――――ブツッ…………ツー、ツー、ツー…………』



 なんとも無茶苦茶な要求をして、咲良は電話を切ってしまった。光太郎にしろ、咲良にしろ電話マナーの酷さはどうにかならないのか。そう内心で文句を言いつつも、一哉の顔は引き締まる。あの咲良の焦り声を聞けば、何かが起きているのは間違いが無い。


 結局、閑静な住宅街と言っても、高速道路と違ってスピードが出せるわけでもなく、たっぷり5分かけて一哉は自宅へと舞い戻ると、適当に家の前に駐車して屋敷へと飛び込む。

 屋敷の敷地内へと踏み込んだ瞬間、嫌な空気が一哉に纏わりつく。

 濃密で昏い、人を地獄へと叩き落そうとする空気だ。あまりにも濃い陰の気が満ちている。一哉はこの空気に覚えがある。

 3か月前の結衣の家の状態だ。あの忌土地化した東雲家の敷地内と、今の南条家の屋敷の空気はあまりにも似通っていた。

 一哉は念のために【神裂】を抜刀し、右手に持ったまま庭の方へと急ぐ。

 戦っているような音はしない。だが、人の動く気配がある。

 思わず歩調を速める一哉に、その声は聞こえてきた。



「終わりだな、神坂美麻。まさか『陰霊剣』を使っても、ここまで粘られるとは思っていなかったぞ。」


「何なのよ、キミのその能力…………。完全に霊術の扱える範囲を超えてるじゃない…………!」


「なに、貴様が知る必要はない。」



 つい1時間ほど前に聞いたばかりの、機械処理された低い男の声。口調こそ違うものの、全く同じ音声がそこから聞こえる。

 同一人物のわけが無い。だが、特徴はあまりにも一致している。

 そして感じる気配にも違和感。すぐ近くに人間の気配が5、怪魔のものが2。一哉の思っている人数と数が合わないのだ。

 募る危機感が最大に達した時、一哉の足は最大速度で動くようになっていた。


 ――――――あと5m

 ――――――4m

 ――――――3m

 ――――――2m

 ――――――1m

 ――――――0


 一哉が屋敷の角を曲がった先で見たもの。

 それは、黒ずくめの格好に白い能面を付けた不審人物が異様に刃渡りの長いナイフを、地面から生える鎖で雁字搦めにされた美麻に突き付けている光景だった。

 そしてさらに――――――



「佐奈――――――っ!」


「お兄ちゃんっ! こっちはいいから、美麻さんを――――――っ!」



 佐奈と、美麻の補佐である嶋寛二が、3か月前に東雲家に襲撃してきたのと全く同じ見た目をした変異【鵺】と戦っている光景。その奥には、結衣と咲良が座り込んでいて、どうやら欠員無く乗り切ってはいたらしい。

 だが、あの日倒した筈の【鵺】が今再び目の前に現れ、そして佐奈と戦っている。そんな事実に、一哉は一瞬躊躇してしまった。この場では、明らかに殺されそうになっている美麻の救出に向かうべきである。佐奈も美麻を優先するように言っている。しかし、佐奈があの【鵺】と戦っているという事実に、そちらに駆けつけたいと思ってしまったのだ。

 そして、そんな一瞬の躊躇いは、奇襲をかけられた筈の敵に次の一手を打たせるには充分だった。



「――――――っ!! 来い、【鵺改(キメラ)】!」



 襲撃者の合図と共に【鵺】は羽ばたき、その場を離脱。同時に襲撃者は、人間ではあり得ない跳躍力で羽ばたき浮く【鵺】へと飛び乗る。それは明らかな撤退の合図だった。



「――――――ま、待てっ…………っ!」


「南条一哉、もう戻ってきたのか。それにしても、まさか奴程の存在が時間稼ぎにも使えんとは…………。大きな誤算だったな。」


「その何か知ったような口振り…………。アイツは貴様の差し金か…………?!」



 一哉は悠然と怪魔――――――【鵺改(キメラ)】に乗って自分を見下ろす不審者に向かって叫ぶ。霊術で撃ち落とす事もできるが、下手に手を出して鴉の羽を上空から飛ばされれば、いかに一哉と言えど、この場の全員を護りきれるものではない。故に先の戦いで霊刀を失った一哉は、広範囲の防御の為の霊術の構築に全力を尽くさねばならず、全く手が出せない。



「さすがの俺も、特級鬼闘師2人相手では分が悪い。ここは退かせてもらうぞ。」


「お、おいっ!」


「南条一哉、覚えておくが良い。我々は『魔人』。闇に堕ち、新たな魂の階層を手に入れた者也。」



 能面の襲撃者は一哉の言葉には耳も貸さず、加えて意味不明な事を言い残すと、そのまま【鵺改(キメラ)】に乗って、夜の闇へと飛び去っていった。

 同時に、南条家を覆っていた気分が悪くなる程の陰の気も何事も無かったかの様に霧散していく。まるで今目の前で起きていた出来事が全て幻であったかのように。そして再び平穏を取り戻した南条の屋敷には、ただ戦いの痕跡だけが残されていた。







「いや~、ごめんね~一哉君。幾らなんでも面目無いわ。」



 とりあえず無茶苦茶になった庭と食堂を片付けていた一哉に、美麻が話しかけてきた。謝るその言葉とは裏腹に、顔はいつもの笑顔モードだったので、実際どう思っているのかはわからないが。


 とはいえ、一哉の方にも美麻に聞きたい事は山程有るのだ。



「美麻さん、応接間で話聞かせて貰えますか?」



 一哉達は場所を応接間に変える。

 食堂が半壊している今、いかに南条家が広いと言えど、話を聞くならここしか無いのだ。

 応接間には再び6人が集まった。改めて見れば、全員疲労の色は濃いものの、殆ど怪我もなく健在である。一番ピンチであった筈の美麻に至ってはなんと無傷であった。


 全員を集めたのには一応理由はある。一哉の方の話もしたかったし、今回の南条家への襲撃に関しては、一哉は全く事情がわからない。加えて、対策院への襲撃とほぼ同時に起こった南条家への襲撃の関連性も未だ不明確だ。そして何より、今回の襲撃を乗り切ったとはいえ、いつまた襲撃を受けるかわからない。綿密な情報共有は必要だった。



「それで、美麻さん。一体何があったんですか。」



 一哉は単刀直入に問う。

 特級鬼闘師が負ける程の存在。それが一哉も手傷を負わされた程の【鵺】を従えて現れたのだ。間違いなく尋常なことではない。

 そんな感じで気を張って臨んだ一哉だったが、返答する美麻の調子は異常に軽かった。



「まあ簡単に言うとね~、最初は余裕でボコってたんだけど、途中から意味わかんない能力遣われて負けちゃった♪」



 「テヘッ」と擬音が付きそうな美麻の言い草に、その場の全員があんぐりと口を開けてしまったのだった。

次回、次々回はextra episodeとなります。

その後、後半戦へと突入です。


後半戦投稿は2週間後となります。

よろしくお願いいたします。

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