プロローグ
前に書いていたのをファンタジーに書き直しました。
少しでも楽しんでいただけたらさいわいです。
この国では能力を表立って使うことはある程度しか許されていない。私達の能力は人を簡単に殺めることもできるし、人を癒すこともできる。
正しい能力の使い方を学ぶため、学校の授業で使ってはいい法律がある。それを生かした職種も多く存在する。
奇跡の能力、これは様々な歴史がある。
奇跡の能力の原典、今はチートで例外的に扱われる「術使い」だと言われる。道教などの「術」を扱う宗教が基とされている。
これから派生したものは「魔法使い」、「魔術師」である。
魔法使いと魔術師は能力の相性があまり良くない。
例えをあげよう。
魔法使いからの攻撃を魔術師は防御するのが苦手だ。逆も然り。
そのため昔は多々戦争が起こったらしい。人というのは誰かの上に立たなければ気が済まないものだ。
では「術使い」はどのような相性があるのか。
彼らは魔法使い、魔術師からの攻撃を難なく防御し、こちらからの攻撃は相手を軽く倒す。
これが彼らを「チート」呼ばわりの原因になった。
よくよく考えれば全ての始まりは術使いなのだから当たり前なのではある。
これにより戦争時代に行われたのは「術使い狩り」だった。
術使いを盾に鉾に。
戦争時代には宗教に深く関わっていた血縁者にも術使いの能力が出ていた。彼らは自分が術使いだと知らずに戦場に駆り出されることも多々あったという。
この状況に各宗教の頭首は「奇跡」を使った。
「魔法使い、魔術師に不運あれ」と。
彼らを呪ったのだ。
たちまち戦争は終わり平和な時代がやってきたのだ。それが何百年も続いたのが今の世だ。
ーーキーンコーンカーンコーン
授業が終わる合図が聞こえる。教室内には統一性のない服を着た少年少女が何十人といる。
たわいない会話が聞こえてくる。どうやら昼休みらしい。
バタバタと食堂へ売店へと向かう者もいれば、教室でお弁当を開く者もいる。
のどかな学内風景。
私立菜野花学園、高等学部。
田舎に余っている広大な土地を使った学園。
半強制で全寮制であり、親元を離れ彼らは一人暮らしをしている。
生徒の特色はお嬢様や御曹司が多々集まる。
一方、一般家庭の子も少なからずいるというなんとも不思議な学校だ。
校則は「法律を守ること」。それ以外は特に何も決めてはないため「10代の自由」に心ゆくままに染まれる。今後、自由の効かなくなる彼らにとってはうってつけな学校であろう。
そんな不思議な学校だからこその行事もある。
お食事会
立食パーティーのようなものであるが、食事でのマナーを学ぶために作られた行事。これは月に一回、必ずある。
ダンス界
1年に一度だけ行われる。社交界デビューをする生徒もいるので始まったと言われる行事だ。食事会の時とは違い、伝統的なドレスを着ることが多い。
あぁ、もちろん体育祭や文化祭などの普通の高校にもみられる行事もある。
クラスは主に学力、運動力で分けられている。AがトップクラスでHが最下位となりかなりの人数がいることがわかる。
そして入学方法も変わっている。
1つは通常入学。
お嬢様、御曹司はこの入学方法が多く、学費も高く設定されている。
2つ目は推薦入学。
スポーツ、勉学ともに優秀な生徒のみが使用できる。一般家庭の子はこの入学方法が普通だ。
3つ目は特別入学。
「学園長の推薦」という名のもとで使用されている。この方法を使うのは極めて稀であり、
この入学方法を使用した場合、学園長の呼び出しを多々受けることなる。通称、
「学園長の飼い犬」
どの入学方法なのかは全生徒に提示されている。
そんな酷いあだ名をつけられる生徒がこの学園に2人いた。
1人は2年生の教室にいた女の子だった。
ショートボブで平均身長より少し高め。光が当たると紺色になる髪の毛。喉元にある濃い紫色の痣。眠たそうにした目は髪の毛同様、紺色の瞳をしている。
もう1人も2年生の男の子、しかも同じ教室にいた。
さっぱりとし短髪で細身ではあるが、その体格から運動をやってるのがわかる。女の子と同様の髪の毛と瞳の色。そして痣の位置と色。溌剌とした目だけは違く見える。
容姿が似ていることから分かるように双子だ。
女の子は「楠木亜麻」、男の子は「楠木柚守」という。
何気なく教室に溶け込んでいる彼らこそ特別入学者であり、そして。
この学園唯一の術使いなのである。
「亜麻、また授業中寝てたでしょ」
「寝てないよ。ウトウトしてただけ」
「それを寝てたというんです。ほら、昼休みだよ」
どちらも中性的な声をしている。若干彼女の方が高いだろうか。身長以外はあまり変わりない。恐ろしいほどに似ている。
話が飛んでしまうが、学校といえば「七不思議」が有名だろう。もちろん、この学園にも存在しておるし誰しもが知っている。
こんなふうに自由な学校だ。それでも暇を持て余した噂好きな御曹司たちが勝手に作っているのだろう。
例えば
「管理棟の屋上には花が捧げられている」
「図書棟には昔使っていた隠し通路がある」
「学園長は管理棟ではない場所に部屋がある」
などなど。
その中にこんな不思議がある。
「学校の秘密のサイトは情報委員会、通称情報屋という謎の組織が運営している」
秘密のサイトには学校中に散りばめられている様々な情報が新聞形式で書かれている。
しかも毎日だ。
そして、それは謎の組織である情報委員会が運営している。そう解釈されている。
情報委員会。
所属人数、不明。所属人物、不明。誰もその正体を知らないが、存在していることは分かっている。そのことを把握しているのは所属している人物と、
学園長のみとされている。
「早く行かないとパンなくなるよ」
「私、パンより米派なんだけどね」
「おにぎりも無くなります」
パタパタと走る双子。首元に光るネックレスがキラリとしてる。
もちろん、彼らこそ「情報委員会」のメンバーであることに違わない。だってこの物語の主人公なんだから。
そして生徒から疑われているのも確か。それをはねのけるかのように彼らは行動していく。
しかし、この2人がいくら有能だといっても毎日新聞を作るのは難しい。他に構成員が何人かいると考えるのが妥当だろう。
そう、これは
彼ら情報委員会もとい情報屋の他愛ないお話。